第7章
少女は校舎から出て、レベスクさんの家を向かっています。顔見知りよりいいくらいの関係とはいえ、校舎を出た出て来たあとに初めて、少女が、レベスクさんの家はどこかを全く覚えていないことを気付いてしまいました。ですが、約束を破るのは少女のふるまいではなかったので、アドリーゼさんに訪ねてようと少女が決まりました。
「お見舞いに来たと思ったら、まったく違うんだった」
ウルフ・ユニ・ヴェロの裏に、操り人形にされたように、木の板で足が固定されたアドリーゼさんが少女に向かって苦笑します。
「試乗して坂から降りたら転んでしまうことはお気の毒だが、ブレーキがない自転車の改造が頼まれたら断っていいのに…学校、行けなくなったのじゃない?」
「学校なんて大したもんじゃなかった。どうぜオヤジの自転車屋を引き続くことだから。真っ黒なことはやらないとちゃんとしているから…それに今回だったのはラ・メラサーカス団からオヤジへの依頼だから、うちが信頼されているあかしってことだったので…」
「ラ・メラ《la mela》サーカス団って?」
「あれ、魔王城のお嬢様方は落ちぶれても庶民の娯楽を全く触れないのか…ごめん、冗談だった。あ、そういえば、これ、憲兵のミノさんまで届いてくれる?ミノさんが見つかって助けてくれた時に落としたものだ」
「いいわよ。でも代わりにレベスクさんの家はどこか教えてくれる?」
「新聞社の卸売り屋さんに聞いてみ?あとミノさんもよくアイツに関わるから。アイツ、ピエトリーノ市から出稼ぎにきたと聞いたけど、下ブルティーノ市では住所不定だったらしい…」
「わかったわ。お大事に」
少女にとってはてかがりはまた遠くなります。
ウルフ・ユニ・ヴェロを出たすぐ、歴っとしたスーツ姿のおじさんらはベルトードさんを止めて何かを聞いているようです。ここで避けて行動すると少女はまわり道しました。




