第1章
異変というのはなんなんだ?少なくとも、7月3日の早朝、少女が相変わらず使う蛇口に面したときに、わかるはずもありませんでした。
「お湯が出ないんだ!家主さん、何とかしてよ」
客としての魔女が事実上の家主に文句を言っています。
「まだ7月だし…私ならいつも川の流れたすっきりした温度の冷たい水にしていたわ。ぬるま湯でいいじゃないかしら」
「だめよ。こっちもそっちも妥協するといい魔女にはなれないぞ」
「魔女ではあるまいし…いい魔女と評価されてあるまいし…それにいそうろうの人は生意気な態度をしないでください」
「こんなデカい屋敷に住んでいるくせに、なんて…」
「魔法に頼れば?」
「..」
魔女は言葉が出なくなりました。
「内部処分でも食らったのかしら?」
デ・レルマさんを招入れて以来、少女が蛇口をひねるとぬるま湯が出ることが多くなりました。
ダメイドはおそらく朝トレで外出中と、少女が嘆きます。
「ところで、ド・ルプレイヌ=ド=メのお嬢さんよ、昨日私が辞令をこの辺りに適当に置いていたけど、見てない?」
「知るわけないんじゃない?」
「困ったのう。5万行の始末書から逃げるために仮の大学講師って閑職を受けたのに」
「あっ、あれかなぁ?」
少女が窓外に指さして、しわしわな紙がタオルと並んで干されています。
「あのメイドのしわざかっ!」
「これはきっと神様の然りだわ…いい魔女になりますように…」




