第1章 (7月1日)
7月1日。
「最近はさ、茶葉を焼けて食べたら、なぜかエルフとシノワの小娘にすごい目つきで睨まれた」
「茶葉ってお湯を沸かすしてスープを飲むのだろう?」
「茶葉って捨てるもの?もったいないじゃない?」
3時限目の授業が終わって、教室の中に会話する声、ノートに書き込む音や快い足音が交じり合っています。
「L'humiliation publique(公衆的さらし)は恥辱刑として、当事者を民事的死亡させる古代の刑罰だった」
少女は黒板と見ながら読み上げます。
「もうちょっとゆっくりと話してくれる?」
「残っておくから、あとで自分で黒板を消しな」
「それはお断り。当直じゃないから」
「ローテーションを組もうとしたら必ずサボる奴がいた。国民性と言ってもなんだが…」
「ストライキがしなくなる日くらい…待って、それ、インアクトロシー…なんちゃらを消さないで」
「In atrocissimis leviores conieturae sufficiunt, et licet judici jura transgredi(残虐な犯罪は極刑に処すべし)?授業、全然聞いていなかったわね。これは教育を受けず中世の市民の素朴な考えで、法律関係者は極力避けるべき考え方だわ」
「参った。さすが魔王姫のド・ルプレイヌ=ド=メさんだ。」
「そういえばガリポーさんのフィアンセは?」
「フィアンセって言うなよ。でも、最近、遠ざけられる気がした」
「いつ生まれだった?」
「ああ、そういうことか。でも事前に知ったら、また寂しく感じるんだ」
「まさにモニックさんと陰陽二元でお互いに相補するバカだわ」
「インヨウ?」
「ちゃんと消してね。サリュ」
少女は半分チョークの粉に白く染められた翼をぴんとして教室を出ました。




