第11章
夕日が空の半分だけでなく、少女の手に握ったしっぽの長いドラゴンの折り紙まで赤く染めてきました。今日の折り紙教室も円満で終わりました。ある器用な男子児童がル・プティ・ヴィラージュワの社章の一部を3Dで再現していて、このドラゴンの折り紙を少女に贈りました。家族も及ばないほど「素敵」と多く言われたの恩返しだそうです。名無しの小径からジャン・ジョレ広場と合流するところに立ち止まった少女は、郵便の行動機械にクラクションを鳴らされました。
「退け!」
乗っていたのは、ボネさんです。
「がおー」
少女はドラゴンの折り紙を行動機械に向いて、ドラゴンを演じて凶暴なふりをします。
「あらら、ユージェちゃん?2か月前よりは大部自慢らしい顔になったよね?」
「ボネさんったら。私は高校生で、魔王城を継ぐ者だから」
「頼もしいね。おじさんはユージェちゃんくらいの年で、まだ人の花畑に人工噴水を発射していたから」
「人工噴水…」
「ユージェちゃんのお父さんと試合もしていたな」
人工噴水は少女の脳内で美化された言葉です。ボネさんの話はもっとストレートだったそうです。
「私の知っているボネさんはこんなだったわ」
少女はこの時、ボネさんはただのよその郵便配達員ってのことを気づきました。いつもそうです。以前ボネさんの空飛ぶじゅうたんにルビーはめ込む前職とか他愛のない話よりもボネさんの声を聞きたくない気持ちが強くなりました。
いいえ、聞きたくないのは、この数か月間、言及されなくなった「両親」の話しでした。
この後ボネさんとどうやりとりしたのが、少女は記憶が朦朧としていました。
郵便の行動機械が立ち去って、黒い煙だけ少女を現実に引き返します。
「あ、水車だわ」
少女は独り言して、広場中央で赤く見える騎兵の銅像に向けてゆっくり歩きだします。
ブルティーノ地区の川の上流なら水車がありますが、ジャン・ジョレ広場に水車なんてありません。




