第7章 (6月30日)
6月30日。
「宿題は?」
「できてる」
「自転車は?」
「昨日乗って行かなかったから。お城にあったのじゃない?」
「待って
、忘れているのでは?今日は何の日だったかしら?」
少女は誰かと会話しているのではなく、ひとりごとをしながら鏡に向いて翼を櫛ですいていました。
使われていない数部屋と通り過ぎて、半開きのドアの中に、ダメイドと千面相の魔女は寝顔がそっくりで、一緒に寝ぼけてベッドから落ちかけています。まるで親子のようにも見えます。子オオカミを見る母親オオカミっぽい少女は、その部屋に立ち止まらず、すぐにも魔王城を出ました。
魔王城の入り口からジュール・ラヴォー街道のT字路に自転車を押して歩いてきた少女は、前に突風が吹き出してしまいました。よく見たらペイジさんの乗っている自転車の後ろから黒い煙も出て、結構スピードを出しているようです。
「早いのだろう?下手したらジェニーさんの翼よりも早くかもしれない」
いつの間にか、後ろから自転車に乗って来たアドリーゼさんが少女の肩に手をかけます。
「手をしっかりと洗ってほしいわ」
少女の着たばっかりな服はアドリーゼさんに汚されてしまいました。
「ごめん」
アドリーゼさんがはにかんで笑って、汚れた手で顔の汗を拭きます。
「手伝ってもってあげようっか?」
「けっこうだわ…」
少女の目線が自分の自転車の前のかごに離さないことを気づいたアドリーゼさんが、無言で自転車のシート下からレンチを取り出して、カゴについているボルトを捻ります。
「いいの?」
「もうちょっとで付け終わるのね、待ってって」
それから早くも10分、魔王城南高校の制服を着る生徒も徐々に増えてきて、折り屈めるアドリーゼさんと電柱のように立つ少女をささやいていました。
「もういいってば」
少女はアドリーゼさんの体を揺らめき始めました。




