第1章 (6月29日)
6月29日の午後。雨が降っていなくて、街中で歩いたらちょっと汗をかいて暑く感じる天気です。この平和な街の一角の東部大陸料理屋――「Tchi Hau」に。肉の細切れ作業をしているエプロンのかけている女の子が、突然開けられた外のドアに気を取られました。
胸をあてているほど、たくさんの独楽を片手で抱いているエルフ耳の女の子が、足を一歩前に出して、ドアを止めて入りました。
「(東部大陸語で)おかえり、シンメイ、学校生活に慣れてきているのかしら?」
「(東部大陸語で)我人頭博芋頭、唔駛煩啦。姉上は心配性だなぁ」
エルフ耳の女の子が独楽を適当にゆかに捨てて、テーブルにある冷やされたスミミザクラを1つ取って、すぐにも自分の口に入れました。
「(東部大陸語で)ところで、そのたくさんの独楽は?」
「(東部大陸語で)賭けに勝つものだ」
「(東部大陸語で)悪習に慣れていることは望んでいないわ…勉強関連はどうなっているのかしら?」
「大丈夫、大丈夫」
「(東部大陸語で)じゃ、今日は何を勉強してきたのかを口で復誦してくれる?ちなみに私は中間テストにある変分原理の問題を全て飛ばしてきたわよ」
「(東部大陸語で)それ、誇るのか?」
「(東部大陸語で)だってしょうがないじゃない?基底状態のときの波動関数はどうしても思い出せない…もういいわ、着替えて手伝いなさい。ワンタン200個作らないと食べさせないからな」
「ただいまーウォヴァァァ」
両腕にバッグがかけられて、タンチョウの動きを真似して入るシアナさんが、ちょうど一つの独楽を踏んで、転んできました。
「このネギの剣、うちこそ選ばれし勇者!」
シアナさんがバッグから落ちたネギを拾って立ち上がります。
「選ばれし天才とバカの二重性だわ」
「やった!チェリーだ!」
ドンドン!
シンメイさんがナイフのハンドルを強く料理台に叩きます。
「分かったらさっさと着替えて手伝いなさい」




