第10章
「アンジェルカ、明日までの分もお願い。あとさっきに話した例の冊子、記入し終わったら棚の1番上に置いておいて、届かないのなら下の階の事務室に脚立を借りてきて」
「ウイ…今日は風が騒がしいな」
女の人が閉じた冊子をデスクに置いたまま、窓に近づきます。
「もうこんな日も沈んだ時間になったのか?」
真っ暗な窓がしばしば震えます。
「どうやら風が街に良くないものを運んできちまったみたいだ」
「風はともかく…」
「黙って、電話で声を出すだけの奴。」
はっきりと聞こえる声でデスクに置かれる受話器に喚きます。
「難題をふっかける、一見悪役ではあるけど、アンジェルカは、同僚たちへの助ける上のふれ合いが業務への支障を設けないことが、大事だと知っていても、協力しないの?」
「失礼なことをしてしまった、出勤しないセンパイ」
「アンジェルカは何もわからないのね。これはテレワークだ」
「これは…いたずらじゃない。何の生き物だ」
窓が女の人に開けられた瞬間、黒い生き物が風に吹かれて、室内に着陸しました。湿りを帯びる翼を持つ例の少女です。
「リスとかとりとかはともかく早く、早く次の作業に進んで」
電話の受話器が女の人に戻されました。
「生き返ったわ」
「いらっしゃいませ。お客様ですか?にしても、マニュアルにない窓から訪問しに来るのは、すごく斬新だね」
「これは…そう、意見を述べるために来ましたわ!電話交換局がはまともに仕事をしていないのですから!」
少女は服についた埃を払って、翼を振って、腰に手を当て、ぷっとふくれっ面をして怒ったふりをします。
「そうですか。メモ帳を取ってきますので、適当にお座りください。」
「あのう、魔女さん…本当にこれでいいですか?釘付けられることはないのですね?」
部屋の中の陳列は少女にとって不気味であります。
「魔女じゃないのです。マカロンを1カゴ食べても太らないのは自分の魔法の効果だと履歴書に書いたら、採用されただけです。そういえばお客さんも翼が生えていて、ブルティノーの魔王と似ているのですね。」
「違います!通りかかったドラゴン族です!ドラゴン族の成人式がつまらなかったから逃げ出したのです!」
「ドラゴン族っと」
女の人がメモ帳に乱筆で書きます。
「…でも、どうして翼が生えたら魔王だと思うのです?」
「この地域圏で最初に電話を設置する家だと、電話交換局の発展の道筋として、新人研修のとき資料に書かれていますから。ちなみに研修最終日の穴埋め問題にも出たからちょっとうざいですけど…あ、終業時間だ。ごめんなさい、帰りますから、適当に歩き回ってみてください。…ところで、窓閉めもお願いします」
女の人が己れと自分の物を片付けに始めました。
「父は魔王城の天井が水漏れしても、電話を優先にお金を使ったのかしら?」
少女は小さい頃で、ある大雨の日で、魔王城の廊下で滑ったことを思い出しました。




