第7章
少女とトルステンジャックさんが行動機械に乗ってデ=グレ中央高校の庭に通ります。この行動機械、日よけ幌があるものの、窓がなく、2人の髪が風でそそけます。
「どいて!どいて!」
前ガラスに吊り糸を何回も引っ張って、ホーンを鳴らして通行人を払います。
「同い年の高校生で運転免許を持っているのかしら?」
「免許?何で?こんなおもちゃみたいな乗り物に?ところで、どれがブレーキ?交互に踏む?踏むリズムで作動しているのか?」
「幸いハンドルを回せるのね。時計回りか逆時計回りをキープして、ぐるぐる回って、どんどん遅くなって停めるはず」
「あら、円盤が取れた」
「トルステンジャックさんを運転席に座らせる私もバカだったわ」
「今さらおいらを責める気?ド・ルプレイヌ=ド=メさんも合意した。この2,30年の掘り出し物行動機械に乗って、車体前の網袋で、ガキをカツアゲしたやつに物見せて分からせる計画だったは」
「心からそう思っていないわよ。先は展示用の道具と思って乗ったわけだわ。まさかいきなり発動するなんて…当て逃げ?憲兵さんに連れて行かれるわ」
コントロールの失った行動機械が通行人の群れに突き入れます。
「大丈夫だ。この古いタイプは最高時速26キロだ」
通行人の群れから少女に話しかける声がありました。
「誰かしら?」
「オー、ごめん。モブの解説が必要かなと」
「避けて!」
「全員集合して踊ればどんな事件でも解決するんだ」
「カット!」
「これは映画の撮影現場じゃない!」
「何考えているの?」
2人が、アーデンさんに太いももをかき抱かれたドラゴンに、しかられます。
「これはイベントだから、盛り上げるべきだもの」
トルステンジャックさんが口をとがらします。
「あのね、あんたのことを気の毒に思い始めたよ」
「ウイ、ビャン、メルシーボクー」
「むむむむっ…いい加減に離せよ」
かりかりな顔をするドラゴンがトルステンジャックさんに背を向けたら、トルステンジャックさんが少女に耳打ちします。
「友達として、彼女がせっかちだったのは、よくクローゼットで逆さまになって寝ているのが原因かも」
「ズ!何でクローゼット?」
「デ=グレあるある、窓のすぐ近くにベッドを置いてはいけない。特に春や秋に、寝ていたら突然降ったひょうでたたかれることもしばしばあるのだ。でも彼女なら、頭も傷づいたように見えるけど」




