第10章
3人は夜の街を歩いています。
「いつか音楽を黒板ふきに入れられると信じていた?」
ラヴィル=スールさん横目でシアナさんを見ます。
「うん。そして人々がネクタイを耳の周りに巻いてだけで、オーケストラが隣のように感じるのだぞ」
「周りがうるさいと頭が痛くなる人だったら地獄的だね」
少女が不自然な笑い方で会話に乗っかります。
「ユージェちゃんは何でサル女に甘やかししている?」
「彼女の直感を信じているわ。帝国に暮らしていた人たちも煙が出る馬車を想像できないのじゃない?」
「あ、メイっちに安否確認をしたい。あそこの公衆電話に行ってくる」
デ=グレ県市外電話交換局。一人の女の子がコーヒーをひと口をちょっぴり飲んで、クロスワードパズルを解けています。女の子が面している壁の機械が赤く点灯しました。
「デ=グレ県魔女コンパニ連絡会。555か…デ=グレ県市外電話交換局」
「なんだかハムスターの鳴き声を聞いているぞ?」
「気のせいです。雑音と思います。さて、ご用件は?」
女の子が振り返ってみると、キャベツを噛んでいるハムスターが変な挙動でもしていませんでした。
「下ブルティノー市に繋げてください」
「悪いですが、あそこへの回線が故障していて…」
「もう何週間前に直ったけど?」
「あら、そう?…キキ、食べ終わったら回し車に動かしてあげるよ」
「ハムスターじゃない?回線が嚙まれたら、えらいことになる気がする」
「待って、そこじゃない、コーヒーコップは君の遊び場じゃない!」
「一方的に切られた…」
シアナさんが公衆電話の受話器を戻しました。
「へぇ、あのサルを屈服させた東部大陸からのシノワ娘がいるのね。それほど強いのなら、何も心配されることもないのだろうか…それに東部大陸の言葉しか話せないエルフもいるって?」
「そうだわ。シアナさん、私のコインを使ったら、小切手を一枚頂戴?宿屋で使われるのかも」




