第2章 (6月15日)
「おはよう!早く起きないと水差しが乾くぞ!」
少女がラム酒のビンを叩くシアナさんに起こされました。
6月15日。目覚めた少女の前に立つシアナさんが、白い髭のようなものをあごにぐっつけています。
「水差しよりラム酒のビンじゃない!それにその格好、大賢者の仮装かしら?」
「逃げろ、愚か者ども!」
「その白いってのは何?」
「これ?これは海峡の国によく使われた法廷用かつらだ」
「モップじゃないわよね?汚いから外しなさい!」
少女が白い床に捨てました。
「法律を踏みつけるやつ!」
「真の魔王のシアナさんを倒せるのなら、法律なんて後回りだ」
「あ、言い忘れたが、そもそも出発しないと…」
「ぐぇっ!」
少女はいい加減に着替えて、乱れた髪のまま、開脚でぐっすり眠っているダメイドの部屋に入ります。口を歪めて、ダメイドのお腹に軽くアッパーカットします。そして、ダメイドの部屋から輪ゴムを取って、自分に付けて、シアナさんと出かけました。
列車に席についた瞬間、少女が背もたれにはいつくばりました。何時間経ったのがわからないが、やっと起きました。進む列車に、少女がシアナと窓のそとの景色を眺めます。
「なんとか無事に乗れたってよかったね」
「シアナのせいで貧しい生活を送り続くわ。中等列車は学生価格が使えないわよ」
「でも、下等列車でデ=グレ中央まで乗っていく気?お尻は石造建物レベルか?」
車掌が手持ちタンバランを叩きながら、車内を歩き回ります。
「アテンション!デ=グレ中央市ヴァル=ド=ラピエール記念館に用事のあるお客さんはモンセニョール・リュテス 駅で降りてください。デ=グレ中央市ラピエール学園に用事のあるお客さんはリュテス=レ=ゴトゥロー駅で降りてください。リュテス地区に用事のあるお客さんはヴァル=ド=ラピエール駅で降りてください。」
「わかるか!」
「デ=グレ中央市の選択肢は2つだから、ここに消去法を」
「ああ、デ=グレ中央高校か?あそこはほぼリュテス地区との境界線だから、お嬢さんたちはもともとヴァル=ド=ラピエールで降りるべきだ」
「はずれだね。プィッ」
リュテス=レ=ゴトゥロー駅の駅員の前におならしてしまいました。
「次の列車が来るまでに何かローカルフードを探そうか?」
「もう時間がない、シアナさん、私につかまって、飛ぶわよ!」




