第11章 (C)
「頭は小さくでありながら、中に思想が隠されている」
シアナが緑のチェーンカフェの前にうろついている。店が定休日か、閉まっている。いえ、この店の建物以外、光ですら届かない。
「うちのキャラの出番を増やしてほしい」
誰からの返事もない。
周りが何もない。道の舗装も店の前以外、途切れている。
シアナが走り出すと、虚無に沈んだ。
「手がしびれている…」
シアナがうつぶせの状態で起きた。よだれを拭いていたら、白い粉が少々ある。どうやら先生のチョークに当てられた。
最近になって、翼っちとの自転車での並走も少なくなった。父を下手な真似をするムーテおじさんの気持ち悪さが増えた。魔導学の宿題に誤りも多くなった。
「親になるのも、魔王になるのも、資格がいらないのね…」
もしこれが白昼夢の中なら、周りが虚無のはずなのに、なぜか流れ星が一瞬現れた。
目の前の翼の生えた少女が文字がいっぱいある紙に丸を付けたり、線を引いたりしている。
「彼女の翼でジュ・ド・ヴォランのヴォランを作れるのかな?」
シアナが少女の翼を触ることをやめたら、自由行動ができるようになった。
まるで透明人間のように、いたずらしても誰も気付かれない。
「お借りしまーす!」
シアナがブルーグ市場に行って、華やかな洋服を試着してきた。
ミノさんの寮に侵入して、女神像を転倒させた。
白大聖堂の着替え室に入って、靴墨でヴァン・デ・ヴェルヴェ神父のひげを塗った。
けど、誰もシアナを相手にしなかった。
Continue?
「もう物語が進んでいい!閉めゴマ!」
シアナが大声で叫んだ。
「急にどうしたの?シアナさん?」
シアナが少女の目線を引いた。
「彼女の翼でジュ・ド・ヴォランのヴォランを作れるのかな?」
「わざと繰り返しなくてもいいわ!ジュ・ド・ヴォランくらい知っているの!お断り!」
「翼っち!」
シアナが涙を流しながら少女に飛びかかる。




