第9章
「危険じゃないかオヨ?安全 オヨ。オヨオヨ…」
少女が変な語尾をいいながら、駅舎の裏にある古びたドアを蹴った。ドアを開けたら、中に狐のようなもふもふなしっぽと狐のようなミミを持っているイラガワさんがムーテ副市長にしっぽまくらをしています。
「…ココリコ?」
気まずさを取り去りたい少女がニワトリの鳴き声を真似します。
「違う、これは…そう…医療行為だ、伝承が絶えかけている東洋療法だ」
イラガワさんが少女に視線を合わせることを極力避けています。
「ド・ルプレイヌ=ド=メ嬢よ、ほら、俺も漢としてニーズがあって…カグラちゃんのしっぽに体を横にしているだけ…シアナに言わないほしいな…」
ムーテ副市長は作り笑いの痕跡がはっきりしています。
「ああ、そうだな、イラガワさんが自分の店を開きたいから貯金に必死しているのが分かっているの…」
「やれやれ!犬も歩けば棒に当たる。そう、そういうことだ、タイプライターも持ってきたら両立できる、あはははっ」
少女がイラガワさんに気をつけてよく見たら、確かにイラガワさんが何かを打っている途中です。
「そう、お金がない貴族が街灯に吊られるせ…なんか違う」
イラガワさんの発言を聞いて、少女が一瞬眉間にしわが寄りました。
「ところでイラガワさんのファーストネームはレアじゃなくて、カグラだった?しかも狐のような魔族だったの?」
「カグラというのはミドルネームだ。ミミとしっぽがオフィススーツに合わないから必死に魔力を使ってなんとか隠してきた。これって満足した?同じ東洋由来の妖怪のカラステングの魔王さん?」
「い、いえ…修飾語が長いわ!…危ない、任務を忘れるところだった…失礼、奥のドアに要件があるから…」
「他の人に言わないのよね?ジェロームもそうだよね?」
少女がしつこく言いかけてくるイラガワさんを無視して奥に進みました。




