第2章
「気持ちよかった顔をしているね」
「あははっ、あとでミノさんに礼を言うわ」
少女が浴室をモップで拭きました。
「じゃ、私はこれでね、また店の面倒を見ないといけないから、自分でカギを戻してね」
「いってらっしゃい、シンメイさん」
少女は石造建物の入り口でシンメイさんと別れました。
少女がしばらく街を歩いたら、見かけのないスーツ姿の人が近づいてきました。
「そっちのお嬢さん、連邦観光促進機構 ルプレイヌ=ド=メ区出張所はどの方向ですか」
「観光促進機構か、あの「ル・セジュール・リキード」の看板のあるビルがお見えですか?あの角で右に入って数百メートルですわ」
「ありがとうな、お嬢さん」
「観光か…父ならどう考えているの?」
少女が考えごとをしながら「ル・セジュール・リキード」の看板のあるビルに向かいます。
ル・セジュール・リキードとは、この地域最大の熱供給会社だそうです。
「いらっしゃいませ、お客様」
「来月の光熱費を払いにきました」
「かしこまりました、では、身分証明書をご提示お願いします」
少女が自機免許を見せました。
「やっぱこれ、あったほうが便利だわ」
「しばらくおかけになってお待ちください。」
「ド・ルプレイヌ=ド=メ様、お手続きが以上となります」
「ありがとうございます。」
「ちなみにお客様、供給番号と銀行口座を紐づけば毎月は更に5%お得ですよ、いかがでしょうか?」
「悪いですが、私は銀行口座を持っていません」
少女が熱供給会社のビルを出ました。
「40リンジー50セン…シアボーネさんに前借りしたくないな…来週までどうやって過ごせるのか…」
「あ、ユージェ!」
テンダム自転車を押して、歪んだ姿で歩いている男の子が歩いている少女を呼び止めました。
「あら、アドリーゼさんじゃないか、また違う色のテンダム自転車だわ、レイトさん、こんなにテンダム自転車を持っているの?」
「あの時はごめんって、俺が悪かった」
「謝るならベルトードさんにやるべきじゃないの?」
「あいつに謝ったら俺のプライドが崩壊するぞ」
「あ、ちょうどよかった、アドリーゼさん、この鍵を憲兵のミノさんの席に届いてくれる?ちょっとだけの寄り道だわ」
「えぇー、やだよー」
「でないと、アドリーゼさんが大回りしたことをレイトさんに言うよ、ウルフ・ユニ・ヴェロってこっちじゃないだろう」
「それだけはやめて、わかったってば」
少女がアドリーゼさんに鍵を渡しました。




