第17章
少女は何冊の本を捧げて歩いています。
その時、キャリーバッグやスーツケースを引く何人が歩いて向かってきました。
「惜しかったな。他の所も回してきたのに、魔王城が見学出来ないって」
「あそこ私有地だよ」
「あと半年で公開される予定って噂を聞いたぞ、今度の年次休暇、またルプレイヌ=ド=メに来よう」
「…」
少女は無言のままキャリーバッグを引く人とすれ違いました。
「愚か者は、まじめさを盾にする…」
少女はベッドで横になっています。
「法学とは、正義に従って生きる人間の学問である…」
少女はベッドでうつ伏せになっています。
「全ての市民は、法の下の平等にある…」
少女は窓から外を眺めています。雨がやんだ後のすっきりした空気を浴びています。
「このきれいな青空も個々の市民の総体に所有しているのか…」
遠方から列車の汽笛が聞こえて、黒い煙が見えています。
「魔王城に住んでいるのに税金が納めないくせに…邪魔な翼だけだとそんなデカい鉄ハコも引っ張れないくせに、何が魔王の末裔かよ、何が姫様かよ…」
少女の顔からいつの間に涙が一滴こぼれました。
とんとん。「姫様!いただろう!窓からみえたよー」
少女が上の階から降りて、木製ドアを開けたら、目の前にシンメイさんが自転車を押して立っています。
「シアナが自転車を戻してくれているから、また出前に出てきたよ。そういえばシアナから聞いたよ、姫様は川沿いにボーとしていたことを、何か悩み事があったら、私たちにも相談できるじゃない?友達ってこういうもんじゃないかしら?」
少女が顔を手で拭いて、翼を全展開します。
「ならば、シンメイさんに一つのお願いがあるの」
「何でも承りますー」
「シンメイさん、私に姫様と呼ぶのをやめてほしいの、ユージェと呼んでくれる?」
「魔王の末裔も貴族扱いだよ、こうだったら礼儀正くなくなるかしら」
「私、自分が貴族だと最初から認識していないの」
「ユージェ姫、これは折衷案だ、これ以上は譲らないわ」
「ありがどうシンメイさん」
少女は笑顔をシンメイさんに見せました。
「私、この魔王城を法的な手段で守りたいわ」




