第16章
雨がやみました。
「あ、ひとまず必修科目の教科書を買っておくべきじゃないか」
少女は立ち上がって、魔王城とピザ屋の反対方向に向かって歩き出します。
10分くらい歩いていたら、少女の目の前に華麗な広い建物で大きい看板で「連邦国鉄 ブルティノー=ダンボワーズ駅」と書かれているものが見えました。国営鉄道の駅舎です。
本屋が駅舎のすみっこに位置していて、扉が開いたまま外に向いています。
「基礎法学…10年生の数学…10年生の作文…どうしよう、一冊が35リンジーもするのか…その時トロワヴィルさんのお金を借りたらよかった…」
少女は本棚の前にぐずぐずしています。
「あら、ジェニーちゃんじゃないか、駅で出会うのは珍しいことね」
「あ、キャロルさんこんにちは」
「ジェニーちゃんに合わなかったから、あたし今日寂しいよ」
「あははっ、今日は疲れたから直帰したわ」
「ジェニーちゃん忘れただろう、今日は給料日だよ、見て…あたし今週370リンジーも稼いだよ」
キャロルさんが封筒から札を出して少女に見せます。
「そういえば、ジェニーちゃん、何を買いに来た?ちなみにあたしは古本探しだよ!」
「教科書だわ」
「教科書ならこれらかな…優しい魔導書(後編)…工作1…極東語上級…」
「あのね、キャロルさん…私たち、同じ高校じゃないわ」
「あ、確かにそうだった!ジェニーちゃん、ティボービル西高を受けたっけ?魔王城に住んでいれば魔王城南高が近かったのに」
「近すぎだったことだから行きたくないもん!」
少女は反応が大きかったようです。この時、少女の翼が後ろの本棚に一冊の本を落としました。
「傷ついたら商品にならないじゃない!あなたたちが買ってきなよ!」
会計カンターの奥から声が届いてきました。
「これは…魔導学略史…ごめん、キャロルさん、お金を貸してくれるの?」
「いいよ、ジェニーちゃんって先週も130リンジーくらい稼いだし、あたしがティツィアーノ兄ちゃんにジェニーちゃんの給料を除けばいいのことだ」
「ありがどうキャロルさん」
少女が何冊の本を持って会計カンターに向かいました。




