第15章
「またあとでベルトードさん」
少女はベンチに座り続きます。
「あ、雨が降ってきたわ」
少女は立ち上がって、巨大段ボールのような小屋に向かって、一面開けた小屋の中のベンチに座りました。
「やばっ、雨なんてやだー」
段ボールを背中に貼る女の子が少女に近づいてきました。よく見ると、彼女の背中の段ボールは少女の翼を真似しようとしている形にハサミの切り跡がはっきり見えます。
「…」
少女はベンチのすみっこに移ります。すると女の子もまた近づいて来ます。
「あの…何の用?」
「サリンジャー様があなた様によく話してくるのですか?僕、すごく気になります」
「ああ、こういう人だったわ」
「気になります!」
「1000リンジーくれるなら教えてあげるわ」
「1000リンジーですか?承知しました。」
女の子が使われた跡なんかも一切ない10枚100リンジー札を少女に渡しました。
「あっ、先の話は嘘だわ、リンジーを持って帰って」
大人しい語気の反対に、少女の顔に驚きが少し残されています。
「気になります!」
少女はその女の子に弱いようです。
「こんな時は自己紹介を先にするもんじゃない」
「はい!魔王城先生!僕はエグランティーヌ・トロワヴィルといいます!趣味はサリンジャー様です!将来の夢はサリンジャー様の嫁になることです!」
「私は魔王城じゃないわ。ド・ルプレイヌ=ド=メっていうわ」
「はい!ド・ルプレイヌ=ド=メ先生!どうやってサリンジャー様に会えるのか教えていただけますでしょうか?」
「ベルトードさんがテンダム自転車を押して歩いていたら、そのテンダム自転車を引き取ってあげたらいいわ」
「承知しました、ド・ルプレイヌ=ド=メ先生!僕、このプランを実行してみます!」
女の子は足どりが軽やかな走りで雨の中に消えました。
「雨っていつやむかな、バカが風邪を引かないけど、私は引くわ」




