第2章
「他人は地獄だわ」
「人間にとって他者は存在しなければならず、そうでなければ自己の存在を確認することはできないじゃない?この破れた自転車のタイヤも同じだ。現認されて初めて、破れたこととなる。」
「聞いてくれてありがとう、レイトさん。自転車を修理に出しているのに、まるで哲学の授業でも受けた気分がするわ」
「アドリーゼにも内緒な話だけど…若い時、サン=エティエンヌの中学校で自然の授業でも教えていたんだ。あの総督がこなければ、未だにサン=エティエンヌで暮らしているのかも」
「そういえば、私も…サン=エティエンヌって、一回行ったことがある。妙な雰囲気がする街だったわ」
「ラ・シテも元老院がない時代になったのね…どうしてテンダム自転車を大量に仕入れたのを知りたい?有刺鉄線のない拒馬としても使えるから…帝国の最後の処刑人と呼ばれるあの総督は、憤りの抑えられない市民らに、やりと銃を向けたんだよ。今の若い子は戦争を経験したのに、あの事件って知らないのだろう…」
「そんな事件があったの?」
「人が若く、心を開いてにしていた頃、生かされて、生かされてとよく言ったものだ。…」
レイトさんは少女の質問に答えずに、自分勝手で歌い始めて、タイヤの修理に没頭してきました。
「これぞ丈夫になった。5000キロ漕ぎっても大丈夫なはず」
「世界の果てまで自転車を漕ぎるきがないわよ」
「お代はいいけど、アドリーゼの動き、もっと伝えてきてほしい」
「違う学校のに…」
「ユージェちゃん、ときどきは学校に行かないでしょ?街の中で授业をサボったアドリーゼを見たら、報告してくれる?学校での学ぶことは大切だ」
「それならよろこんで協力いたすわ」




