第4章
「奇遇だね」
「奇遇だわ」
「今日を奇遇記念日にしよう」
自転車に乗っている少女が自転車に乗っているシンメイさんとシアナさんに向き合って止まっています。
「私にとって毎日もシアナにうんざりされる記念日だわ」
「うちはティボービル西高校10年魔導学クラス記念日協会の会長だぞ、メンバーは今の段階で1名しかないけど」
「何だそのくそ長い名前の会?」
「今日の授業でマッコグラン先生の背影を見て作りたくなってきたから」
「どうして今日は早く帰ってきたの?」
「的を射ているわ。そのマッコグラン先生がこの1カ月間で教えていたのは、シラバスとぜんぜん違って、彼自身の研究だったわ。私たちをそろばん代わりに使いやがって、ただの停職処分じゃ済まないよ。おかけ様で、また1から新しい授業だわ」
「話は大体分かってきたが…そろばん?」
「そろばんというのは、昔から東部大陸で…まあ一言で言えば計算器械だわ」
「そんなー。楽しかったじゃない?魔導士の根拠もなく適当に試してきた呪文の歴史よりも。このまま先生の研究に突っ込んだら、いつかグネルの定理が教科書に載るかも」
「教科書に載ったとしても、カク・グネルの定理だわ。1部の計算は私だったし、それに何回もシアナのおねしょの跡を消したから。もう怒ったわ。帰ったら私のスペアの布ナプキンを返してもらうわ」
「やだ。普通の下着より着心地抜群だ」
「次の配達に急いでいるから。またね」
「ほら、翼っちもメイっちにうんざりされたよ」




