第1章 (5月31日)
人は未来を予測することはできないから、過去に手がかりを探すしかない。たとえ暗い時代であっても、私たちには光を望む権利がある。暗闇に慣れた目には、これからやってくる光が薄いロウソクの炎なのか、それとも燃え盛る太陽なのかを見分けるのは難しい。
「閣下、私がお送りした長文の手紙にあるように、私はサン=エティエンヌ=ブルティノーが理性的な自由の精神によって活気づくことを心から願っている」
深夜、なかなか眠れない少女が、魔王城の書斎に足を止めています。ここはどんなに強いパワーでも及ばない、先祖が残した価値のはかれない巨大なお宝箱と少女が幼い頃からずっと思ってきました。
「私のとっては、この地域の紳士と淑女なら誰であろうと愛している。」
「私にも愛される資格が持っているのかしら?」
思わず声を出してしまった少女に、願った返事がもちろんくるはずがありませんでした。
もし人々が純粋なる完璧さを求めることに執着したままであれば、その結果は自分を迷わせる欺瞞的にしかならないだろう。
「『極東語で』菜の花畠に、入日薄れ…」
少女が突然、ブルティノーで誰も聞いたことのない歌を歌い始めました。歌って徐々に眠くなりました。
5月31日。
目を覚めると、少女が書斎のつくえにうつ伏せたままです。頭がぼんやりします。
普段寝ていた部屋からアラーム音が届いてきます。
「うるさいー」
下の階から怒鳴りの声がきました。
「人っちに泊まった自覚があるのかしら?借金メイド!いいから先に体をきれいにしなさいよ」
少女が大声で返しました。




