第3章
「当該犯罪が重大な性質のものであると憲兵に思われる場合、または憲兵がその者を拘留すべきであると合理的に考える場合を除き、憲兵は、保証人の有無にかかわらず、その者のために相当額の保証人を立てる…結局お金が役に立つものだわ」
「ユージェちゃん、初めての書類作りとしては、立派なもんだ。」
「9年生の作文で基礎を築いたわ」
「刑事訴訟法を読んでいるのか」
少女が厚い本をつくえに置いて、浮かない顔でミノさんを見ます。
「ねぇ、ミノさん、お金さえ払えば、罪のある人間も解放できることって、現代の奴隷制度と思わない?」
「世の中に2人でも奴隷制度のような関係が続いているのなら、奴隷制度が存在すると思う」
「私が7年生の歴史の授業で学んだように、サン=エティエンヌ=ブルティノー王国時代では、もう奴隷制度が廃止されたじゃなくない?」
「奴隷制度の合理性を考慮するのは、平和に戻って暇すぎて余計なことばかりしている人だ。戦場に行ったら、1日の配給は1人当たり粗塩漬けのコンビーフ1缶だった。3日に1度、温かい食事が出るけと、そのとき、缶詰は半分しかくれなかった。信じてくれ、毎日何万人が亡くなっているのなら、奴隷とされても文句を言う人はいないんだ。」
「パン・オ・レザンを食べたくなってきたわ」
「少なくとも紙の女神像が人を騙しやしない…人を食いやしない…」
「ラコストさん?サインしていただけます?ミノさんが幻覚でも出ましたわ」
「ミノ?除隊年金を紙の女神像にぶっ投げるやつには自業自得だ。」