第6章
ひっくり返された世界では、真実は偽りの一瞬にすぎない。
「旧サン=エティエンヌ=ブルティノー自治領の慣習法では、貴族を撃ったことは重罪だよ…この数日に黙ったまま、衛兵隊が何とかしてくれるとも思った?あいつらはもうラ・シテに戻ったよ」
ゴードロー=レ・オーブレ署の取調室に、ミノさんが女の人を取り調べています。
「生まれたときに捨てられて、15歳の誕生日まで孤児院で育ち、学校にも行かなかった。名前も孤児院の院長から付けられた。」
「16歳のとき初めて働きに出て、最初の仕事はスラム街にある工場で牛乳瓶の洗浄をやるだった。旦那さんは私をいじめしやすい子だと思って給料をくれなかったが、食事と宿をくれた彼に感謝していた。」
「最初に軍に入りたいと思ったのは、18歳のときにポスターを見たときだった。それ以来、人が捨てた新聞紙を拾って、文字を習いた。捨てたら惜しいからたくさん取っておいた。万年筆を買う余裕がなかったから、炭の燃えかすを使った。」
「オイルランプを灯す余裕がないから、晴れた夜には公園の一角を見つけて月と星をあかりとして、雨の日には劇場のライトを借りて下水道の隣にこもる。」
「衛兵隊の筆記試験に合格した日、私は身だしなみを整え、なかなか入ろうとしないカフェでレタスと卵のサンドイッチを食べた。健康診断の日で、私と同年代の人たちや彼らの家族も周りにいて、彼らのことを心配してくれていたのに、私は急に涙が出た。私を心配してくれた人はかいないから。一回でも欲しい、一回でも…」
「順番が回ってきたとき、すぐに涙を拭った。心の弱い人は衛兵隊にいられないから。」
「その日、私は公職者であり、町の平和を守らないといけないから。隊長に重大な使命が与えられたから…」




