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第½章
「運命に抗う物語が昔から好きで、無駄な作業の繰り返しにもかかわらず、そのために闘う精神はかけがえのないものだと思う。」
「やだ。読み上げないで」
「岩を押して坂を登り続ける。終点に達したら、岩はすぐにも坂の下まで転がり落ち、その岩をふたたび頂上まで押し上げなければならなかった。」
「まあいい、読んでいいわ。」
「明るい春の日の夕暮れ近く、バラ色の小さな雲が澄み切った空に高く垂れこめ、出征する父親に別れを告げていた。」
「読んでくれてありがとう…気が整ったわ」
「本家にこの魔王城へ手を出させる気持ちはちっともないわよ。お引き取りしなさい。」
「この学校を受けた理由は学費…いえ、貴校の建学理念に…」
「プップー」
いつの間にか少女が道の真ん中に自転車を漕ぎています。後ろに行動機械があって、少女にクラクションが鳴らされました。
昼過ぎに、駅舎が見えてきました。
「本屋って世の中で最も景色の悪い場所だわ」




