第11章
「悪いな、ミローくん、非番なのに、ボランティア状態で民兵検査を付き合わせてくれた、感謝するよ」
「とんでもありません。中佐の役に立て何よりです。それに、寮に居たら、突然、呼び出されたあと3日連続に帰られないことも嫌です。」
「嫌でも我慢して、市民を守るのは憲兵の義務だから。ところで、ミローくん、クーヴァン=レ=タンプリエ地方出身だったっけ?あそこは魔女の里と言われているじゃない?もしも魔女の経歴があったまま憲兵隊に入ったら、厳しい刑罰が当たるぞ」
「魔女ではありません。それに、地名なのでお気づきいただけなかったかもしれませんが、レ=タンプリエの意味は騎士団ですから…」
「そっか…疑ったごめん、魔女を下目に見るつもりはないけど、ルールはルールだから…あ、ここで待機にして」
「承知しました。」
ミローさんは仰いで空を見ます。
「あの日も晴れた日だった。」
「何百年ぶりにまたブルティーノに戻って来たわよ。魔王陛下が生きているのなら、きっと“なんで今更”って思っているでしょ。」
「魔王陛下は死ぬまでにも魅力的な方だった。必死に生きてきた人の行きつく先が無であっていいはずがないじゃない…」
「…魔王陛下を見捨てるつもりはないよ。」
「想いって言葉でもう伝わらないんだけど、翼の生えた子を見守ってあげるよ」
少女が魔王城に向かって歩いています。いつの間にか、市立大学のキャンパス内に
「考える勇気を持て! 言い出す勇気を持て! 行動する勇気を持て!」の横断幕やペンキの落書きがあちこちに現れました。市立大学の学生に見える男の人がペンキを壁に塗っています。
「その姿…まさか附属高校の生徒?今の時期のキャンパスは危ないじゃん。あなたはここに居るはずがないよ、分かったら、早くうちに帰りなさい。」
「ああ…ごめんなさい…」
少女が市立大学の学生にしかられました。
「…たく、魔王の末裔なのに、ゆるいな…」




