第8章
「ブルティノーからサン=エティエンヌまで、シェロンからブエニまで」
「ここに暮らしている何十万人もいて、その周辺には私以外、翼を持った人は一人もいない」
「渡り鳥ではない、遠くへ飛べない、魔王城から離れない、ブルティノーから離れない…」
少女が図書室に時間を費やします。目当てを設けずに、ひとり言を言いながら、いくつかの本を乱雑で開いています。数時間経ったら、彼女の目にはもはや涙の跡形もなくなりました。
カラステングという単語は、少女が言葉を理解できた年から、数回しか他人の口から聞いていませんでした。
遠い記憶に父も母も翼を持っていませんでした。
レグヴァンさんは図書室に入りました。
「魔王の末裔って名乗ってる者は、所詮高校生ってわけね。」
「レグヴァンさん?聞いてました?恥ずかしいよ」
「なぜ山が目立つなのか、それはいたるところに平地と谷があるからだわ。」
「え?ああ、私を励む意味なのね、ありがとう、レグヴァンさん」
「泣きたいときは泣いていい。人には感情があるものだから」
「魔王の一族は本来、人前で泣いてはいけないと、お父様が教えていたの」
「ねぇ…魔王姫、七つの大罪って知ってる?」
「確かに傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲の7つ…合ってる?」
「正解だわ。いっそう吟遊詩人になって世界周遊してこない?」
「こんな時代に吟遊詩人なんて生きていられないんだよ。それに、私には魔王城を守る使命があるから」
「使命…自分の身を奮い立たせる都合のいい言葉わよね」
レグヴァンさんは凛とした目で少女を睨みます。
「魔王姫、まさにその傲慢だわ」




