第5章
市立大学に近づいた途端、少女が一瞬クラっとして倒れそうになりました。
「魔王、大丈夫かい?」
ギョームがテンダム自転車を飛び降りて、少女の傍に駆け付けました。
「無線電伝研究会と書いているハコが動いているぞ」
「それが原因かも、シアナ、テンダム自転車を支えて」
シンメイさんもテンダム自転車を飛び降りました。
「バランス保つ継続不能だ、倒れるよ、ガイアとの肌の触れ合いが嫌だ」
「そのハコ、元の場所に戻していただけるかしら?」
巨大なハコの後ろに台車で押している男の人がいました。
「何でだよ。俺たちはこの無線電伝機を賢者の石で囲まれた部屋から運び出しただけだけど」
「賢者の石って言ってた?もしかしたらこのハコ、魔族に強い悪影響があるじゃなくない?魔族の生徒もたくさんいるのに、何故こんな危ないものを持ち運いでいるかしら?教務課か学生課かに苦情を言ったら、その同好会が活動停止確定じゃないかしら?」
「ごめんだって、シノワちゃん。…シャイセ、シノワのガキにやられた」
「黙れ、もうたくさんだ。そのハコ、元の場所に戻してこい!」
「ごめんなさい!」
男の人が台車を押して逆方向に走り去りました。
「皆さんごめん、私が迷惑をかけてしまって…」
「魔王がここに倒れたら、俺と決闘できなくなるのが嫌だぜ」
「魔王のくせに、無線電伝のハコに倒されちゃって、くやしい?ねー、くやしいー?」
「シアナ、帰ったらお仕置きが必要かしら?っ…無線電伝…そういえば、ブルティーノに来たらどの固定式の魔導機械でもかならずポスト魔導回線で動いている仕組みだわ」
「やだコワーイ!うちみたいな可愛い子相手に、何考えてるんだろー!」
「アーンラーンシャーウホーンザーン」
「ゲボッ!メイっち、ひどいぞ、うち、自転車から転んでじまったじゃないか」
「シアナさん、体が大丈夫なの?」
「人好しのままじゃ魔王の威厳が成り立たないぞ、俺、失望したぞ」
「ギョームさん、ごめんなさい!」
「無線電伝と魔導と魔族の関係が興味深いわ…」




