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8 ふたりは最後にめぐりあう

最終話です。



 黒の貴公子は、従わない貴族達や王党派を打ち破り、戴冠して、新たな王国を築きました。


 王国の名はフランドル。


 後世では前フランドル王国といわれる国です。



 彼は、あの火の中から助かったのです。


 顔の左半分は焼けただれ左腕を失いはしましたが、生き残ってしまったのです。



 新たなる王は奮闘しました。


 自らが先頭に立ち、国の仕組みを次々と改革し、全てを自分で監督し、全ての書類に眼を通し、誰よりも働きました。十数回にわたる暗殺の危機も自らの剣で切り抜けました。


 その合間に、北の蛮族を打ち平らげ、南と西の隣国を征服し、遠征軍の留守を狙った東の国を大いに打ち破り、その王都を略奪しました。


 その圧倒的な強さから彼はいつしか大王と呼ばれるようになりました。


 王国は征服した地から奪ったもので富み栄え、臣民はこぞって名君と称えたましたが、その歓声を受ける王の目に喜びはありませんでした。


 大王は、征服した国々の王族や貴族の娘達を侍らせ、十二人の子供を産ませました。


 だけれども誰一人として皇后にはしませんでした。


 仕事をしている時は、誰も近づけず、誰にも相談もせず、たったひとりですごしました。



 大王は赤毛の王太子の墓を王都から伸びる街道の石畳の下に作りました。


 深い穴を掘り、皇太子の死骸を投げ込み、その上に石畳を敷いたのでした。


 遠征軍が出発する度に、その墓は何万もの軍靴や蹄に踏みつけにされました。


 しかも葬られて数年後に盗掘されて、空になってしまいました。


 素晴らしい婚約者を追放し、国を滅ぼした愚かな王太子の末路に、同情する者はいませんでした。



 大王は宝石姫の墓を焼け落ちた修道院跡に立てました。


 王妃が葬られるにふさわしい壮麗な墓でした。


 焼け跡に残っていた骨片を拾い集めさせ、石棺に収め、巨大な墓室に安置しました。


 宝石姫の骨片が入っている石棺の隣にもうひとつ石棺を置きました。その石棺は空でした。


 権力を欲した父のせいで大王と引き離され、愚かな王太子と婚約させられた悲劇の宝石姫。


 その上、愚かな王太子に追放されたにも関わらず、その男に殉じた宝石姫。


 彼女の哀しい末路に、みなが涙を流しました。



 即位して20年。昼も夜も働き続けた大王は、執務室で急死してしまいました。



 大貴族達はそれぞれ王子を擁立し、激しい跡目争いが起こり、大王の亡骸は執務室にほうっとかれて腐るに任されました。


 王宮内から始まった争いは、王国全土へ拡大。


 子供達が各地で王を名乗り、生き残るために戦い、跡目争いは十二年続きました。


 ありとあらゆる貴族が死に絶え、最後には北の蛮族の力を借りた末の子供が生き残り、ようやく跡目争いは終わりました。


 その時には、かつて大王が征服した国々は全て復活し、元通りの大きさに戻った国土は荒れ果ておりました。


 復活した国々は連合を組み、末の子供は戦場に散り、フランドルは無主の地となり、各国が奪い合う戦乱の地と化してしまいました。



 かつての王国の民が、自分たちの国を取り戻したのは、それから150年後のことでした。



 そのあいだも宝石姫の墓はその姿をとどめていました。


 盗掘しようとすると、15人の男達の亡霊に襲われるという噂があったおかげです。


 今でも二つの石棺は並んで安置されています。


 そしていつからか、空だった石棺には、一人の男の亡骸が納められておりました。


 長らく大王の亡骸と思われていましたが、首を切られたあとの残る亡骸は大王のものではありえません。大王は片腕しかなかったのですから。



 大王の亡骸がどうなったのかは、誰も知らないままなのです。



誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。


最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。


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[一言] 宝石姫が愛を語り愛に殉じるとこ、マジに泣いた まーたクライマックスでやられちまったぜ…
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