001. 毎朝のことなので
スマホのアラームが鳴って、うっすら目を開けてそれを止めるのはいつもの動作である。
直後、ふわりとしたものが近付いてくる。
ミケコさんだ。
ミケコさんはわたしが1人でお世話しているので、さくの部屋で寝起きする。
アラームとほぼ同時にやってきては可愛い前足 (お手手)でさくの顔をちょんちょんと撫でる。
「んむー、あとちょっと待ってミケコ……」
「んにぇーん」
ちょんちょんが激しくなって、今度はベチベチと叩かれる。決して爪を立てない所が優しさである。
稀に鼻フックをされることはあるのだが。
「ハイハイ、起きますよ」
「にぇーん」
もそもそと起き出して、猫ごはんのストッカーからカリカリの袋を取り出すと、パラパラとミケコさん用のお皿に少なめの量を入れる。日によってはすぐに食べたり、先に水を飲んだり、ミケコさんは気まぐれだ。
その様子を見守ってから、わたしも朝食のために階下に降りると、ミケコさんは5割ほどの可能性で一緒に降りてくる。
そうするとせりさんがいるのだ。せりさんはなぜかわたしより先にミケコさんに声をかける。
「あらー、おはよう」
「…………」
「ミケコー、せりさんに『おはよう』は?」
「にぇー……」
「うん、よし。おはよーせりさん」
「おはよう」
わたしはいつものようにカップに牛乳を注いでレンジに入れる。温めて温度を確認してからミケコさんの鼻先に差し出す。
「はい、ミケコ。牛乳だよ」
ミケコさんはその日の気分により飲んだり飲まなかったり。やはり気まぐれだ。
まあ実際問題として、猫に牛乳、というのはあまり推奨はできない。かかりつけの獣医さんに聞いてみたところ、「欲しがるようなら少しはあげても大丈夫」との事だったので我が家ではこうしているだけだ。
さくがパンをトーストして牛乳をコーヒー牛乳にして朝食を済ませるなど朝のアレコレをしていると、ミケコが『早く部屋に帰ろう』と訴えてくる。
「ミケコさん、ちょっと待ってね」
「にぇ」
「よし。ミケコー、帰るよー」
いろいろ済ませて声をかけると、ミケコさんはダダっと階段を途中まで上がり、振り返ってわたしを見ると『はやく』と訴えているようだ。
「はいはい」
トントンと階段を上がりながら、途中でミケコを撫でつつそのまま部屋に戻るとミケコがついてくる。
そんな感じで1日が始まるのが、わたしの日常なのである。