夜の楽しみ
いやらしいものではないですよ。
「・・・んー。 またあそこにはお世話になるかもなぁ。 でもそろそろなんかカードもやりたくなってきた。」
少し飲み過ぎたかと考えつつも、俺は貨物室の方に向かっている。 理由はそこにドーホース達がいるからだ。
マーキュリーでお世話になったドーホース達とヨコッコ達だが、返すのは時間がかかるし、置いていくのはさすがに可哀想になったので、貨物扱いにはなってしまったが、連れていって貰えるように手配して貰ったのだ。
まあ後はドーホース達をどうするか考えていた時に、アリフレアの「ここでお別れなのですか?」と訴えているような潤んだ瞳を見て、俺もベルジア達も理由もなく置いていくのは良くないという結論に(特に誰が言ったわけでもないが)至り、ドーホース達も旅に同行することになったのだ。 足は確かに必要だったので、結果論的にはいいのかとも感じていたが。
俺は貨物室の見張りの人に許可をもらって、ドーホース達が入っている檻に案内して貰った。
「どうだ? 窮屈か?」
特に言葉が通じるとは思ってはいないが、ドーホース達のストレスにならないように声をかけると、ドーホース達は「ブルル」と横に首を振りながら、鼻を鳴らしていた。
「この子達は随分と大人しいので、こちらが手を焼くこともないです。」
「普通のこう言った生物の運搬はやっぱり手間がかかりますか?」
「ストレスで暴れる事もありますので、その時は飼い主等に来てもらって対処をして貰っています。 この子達は人馴れしているし、我々の方から食べ物を与えても、ちゃんと食べてくれます。」
「苦手そうなものがあったら言ってください。 俺達もドーホース達の好き嫌いはまだハッキリと分からないので。」
「畏まりました。」
「お前達も、駄目そうなら無理して食わなくてもいいからな。 出されたものはちゃんと食すっていう行為自体は結構だけど、それとこれとは話が別だからな。」
そう言うと、ドーホース達やヨコッコ達は「分かった」と言わんばかりに、ひとつ鳴き声を発した。
「随分と手懐けていますね。」
「旅の仲間ですから。」
そう言って俺は貨物室の見張りの人に任せて、船内に戻ることにした。 覗いた窓から見えたのはオレンジ色の夕陽、この船旅ももう後1日か。 そんな風に黄昏ながら、歩いていくのだった。
陽は沈み、すっかりと夜になったところで、夕飯用に用意された食事には手をつけずに、ステージで行われているショーをぼんやりと見ていた。 そこにアリフレアの姿もあったので、声をかけることにした。
「アリフレア。 ショーは楽しいか?」
「あ、ご主人様。 楽しんで、いますよ。」
それなら良かった。 長い船の旅なのだ。 客を退屈させないためにも色々と頑張っているのだろうなと感じた。
「部屋には、ベルジアさんと、ゼルダさんも、います。」
「ん? ファルケンはどうしたんだ?」
「それが、お昼頃から、お見かけ、することが、無くて。」
この広いようで狭い船内でそんなことがあるのか? バーはそもそも入れないから論外として・・・ 行ってない可能性があるのはカジノスペースか。
「まあ、鳥の亜人だからって空を飛ぶとは思えんからな。 アリフレア。 ファルケンは俺が見つけておくから、眠たくなったら部屋に行くんだぞ。」
「はい。 よろしく、お願い、いたします。」
そんなに注意して見るものでもないのだが、ややこしい事・・・にはならんか、さすがに。 そう思いながら俺はカジノスペースに向かった。
カジノスペースとは言ったものの、実際にはルーレット台やポーカー用の机が配置されているだけで、そこまで凝った造りにはなっていない。 なんだったらカジノスペースというのに、子供まで一緒に楽しんでいるのだ。 つまり大人の遊びというわけではないという事だ。 そんな中でファルケンを見つけるのは容易かった。 というか普通に鳥の亜人というだけで目立つのだ。 見分けられない訳がない。 そしてもうひとつ気になったのが。
「・・・なんでディーラーをしてるんだ? ファルケン。」
「ん? おお、師匠。 すいませんッス、なかなか顔を見せられなくて。」
いや、気にするところはそこじゃない、そこじゃないんだ。 お前がディーラーしていることに俺は突っ込みたいんだよ。
「いやぁ、俺っちが1回イカサマを見破っただけで、ディーラーとしてやらされたんスよね。 ま、子供もやってるんで、大人だけが勝つ、なんてゲームは面白くないッスから。」
ファルケンがそれでいいなら、俺ももうなにも言わない。 ちゃんと船旅が終わるまでには戻ってこいよ?
ディーラーファルケンの姿を見終わった後、俺も少し遊ぼうと思った。 とはいえルーレットやポーカー、ブラックジャックと、楽しめそうなものは色々と見えるが、もう少し単純明快なものがいいな。 そうふと見ていると、トランプではないカードを遊んでいる集団を見つけたので、そこに見に行くことにした。
「なにをやられてるんです?」
「お、兄ちゃん初めてかい。 これは「ザ・ナイトロー」というゲームでな。 ルールはシンプル、3枚のカードのうち、1枚を裏返しにおいて、同時に開示して強い方が勝ちになるんだ。」
「へぇ。 ちなみに種類や勝利方法は?」
「種類は「角付き盾」、「剣」、「拳」だ。 角付き盾は剣に強く、剣は拳に強く、拳は角付き盾に強い。 シンプルだろ?」
あぁ、つまりカードでジャンケンを行うのか。 でも本物のジャンケンなら逆なんだがな。
「でもシンプル過ぎてありきたりな感じですね。」
「まあな。 でも心理戦にはうってつけだ。 自分も相手もどんなカードを出すのか分からない。 そこで生まれる腹の探りあい。 これが地味に効くんだ。」
ふぅん。 心理戦かぁ。 ちょっと興味出てきたなぁ。
「次、やってもいいです?」
「おう、次の挑戦者はアンちゃんか。 まだまだ無敗伝説を、作らせて貰うぜ?」
体つきはかなりいいが、それだけでは当然勝てない。 しかし無敗ということは何かしらの方法があるはず。 それを見極めてみますか。
「では、3枚のカードを取って・・・出すカードを裏向きで置いてください。」
そうディーラーが言った瞬間に「バンッ」と相手側のカードが置かれた。 ふむ、速攻でカードを出して相手を焦らせる作戦か。 確かに早めに出せば確率は3分の1、そして焦らすことで判断力を鈍らせるって事なんだろうが、それだけじゃ無敗にはならない。 改めて相手を見てみると目の眼光が凄いことになっていた。 よっぽど早く終わらせたいんだろうな。 そっちがその気ならこっちだって手はある。
「さっきの試合、あんたなにで勝ったんだ?」
「お? それは「拳」だ。 相手が「角付き盾」を選んでくれたから勝てたんだ。」
なるほど、拳ね。 ならこっちは・・・「拳」かな。
「では開けてみてください。」
俺は「拳」、相手は「角付き盾」だった。
「・・・ふぅ。 運が良かったな。」
「そうだな。 もう一度勝負だ!」
そう言ってカードをテーブルの下で切り直して、再度カードを確認し、同じことを相手は繰り返した。 角付き盾はさっきので負けたので同じ手は出してこない、と考えるか、逆をついて同じカードを出してくるか・・・
「あんた、ほとんどカードは見てないし、相手の事も観察してない。 自分の行いが正しいと思ってる。 そうでしょ?」
「他人の事なんか気にしてたら、キリがねぇ。 だったら自分の事を見た方がいいだろ?」
いい得て妙だな。 俺も出すカードは決まった。 俺もカードを伏せる。
「では開けてみてください。」
相手が「拳」、俺は「剣」だった。
「な・・・俺が連続で・・・?」
そんなに落胆することでもない。 そもそもが出す組み合わせが9種類しかない上に、勝敗を含めてもどれも3分の1。 言葉を使わないのなら、こっちが喋って、その中で相手から捻り出せばいい。 まあ相手が違えば変わるだろうな。 そんな感じで俺はカジノスペースで夜を更かしたのだった。
正直カジノってどうなんだろうとは思ったのですが、カードを普通に遊んでいるのって、カジノとかってイメージが高かったので。




