その人物、国王なりて
その声を掛けてきた人は燃えるような赤色のロングヘアーで、少しつり目、な妙齢な女性だった。
「貴方達の行動、この目でしっかりと確かめさせて貰いました。」
「貴女は・・・?」
「おぉ! ミカラ様! このような時間にお見えになるとは!」
そう叫んだのは先程俺が荷物運びを手伝ったおじいさんだった。 様付けしてるってことは・・・
「失礼を承知でお聞き致しますが、貴女はこの領地の、いえ、この国の女国王「ミカラ・ハーキュリア」様でお間違いは無いですか?」
そう聞いたのはベルジアだった。 そういえば俺は国王の事とか全く知らなかったから、こうして聞いてくれるのはありがたい事だ。
「いかにも。 私がミカラ・ハーキュリア本人になります。」
そう言った瞬間にベルジアは膝を床に付け、頭を下げるという、忠誠を誓う格好になった。 俺とファルケンも国王の前だということで、それに習って同じ格好になる。
「まさか女国王をこの目に拝める日が来るとは、思ってもおりませんでした。」
ベルジアは頭を下げながらそう言う。 というか俺だってこんな街中で女国王に会えるなんて思ってないよ。
「頭をあげて構いません。 私は貴方達にお礼を申し上げたいと存じております。 私と一緒に、王宮へと来てくださいますね?」
なんとまあ、そんな願ったり叶ったりな話があるのか。 ・・・いや、まだ安心も油断もしちゃいけない。 ここにいるのが領民達だから見栄を張っている可能性だってある。 だが「来てくれ」と言われて「NO」と答えるのは礼儀として失礼だ。 ほかの二人はどうかは分からないが、警戒しつつミカラさんについていくことにした。
「そう言えばアリフレアちゃん達は連れてこなくてよかったんスか?」
「そもそも事情を知らないのに呼べないさ。 呼びに行って下手な時間を取らせるよりは、今は俺達だけでも行くのが得策だ。 幸いベルジアもいるから交渉方面はあいつに頼む。」
俺とファルケンはそんなことを互いに耳打ちする。 確かにパーティー全員で来るのもまた礼儀な気もするけれど、戻っている時間がもどかしくなる。 夜遅くにならないようにだけ、注意しないとな。
さて、なんの前触れもなく王宮の大広間へと案内された俺達は、改めてミカラさんと対面することとなった。
「では改めて、私はマカライヤの領主であり、この国「ハーキュリー」の国王。 ミカラ・ハーキュリアである。」
向こうも改めて挨拶をしてくる。 本来ならここで俺達も自己紹介を行うのが礼儀なのだろうが、そもそも旅人なので、こういった場合、普通に挨拶していいものなのかと考えてしまう。
「初めましてミカラ国王。 私はアルフィスト次期領主であります、ベルジア・アスランでございます。」
「アルフィスト・・・新領地の息子か。 わざわざ遠方からよく来てくれた。」
「今回の旅は成り行きではありましたが、こうして会えたことが幸いです。」
「では其方の2人は」
「私の護衛を勤めていた、セイジ・ノムラとファルケン・ライナーでございます。」
「ど、どうも。」
「初めましてッス。」
どう挨拶したらいいか分からず、とりあえず会釈だけすることにした。
「しかし成り行きとは行っていたが、その成り行きとはなんだ?」
「私は自分の領地を大きくすれば良いと考えて、領地の事を考えておりました。 しかしそれだけでは駄目だと悟られ、私は外の世界をこの目で見て、この身体で感じることで、自分には何が足りないのか。 どうすればもっとより良い領地になるのかを学びに旅をしてきた次第でございます。 その上で、国家内に置ける親密な関係を作り上げようと思ったのです。 領地同士がバラバラに動くよりも、手を取り合い、助け合うことも可能ではないでしょうか?」
ミカラさんの言葉を紡がせないように、淡々と自分の思っていることを説明するベルジア。 相手が意見するよりも先に、言いたいことを言って、その後に相手の様子を伺う交渉術の1つを見せてくる。 それを聞いたミカラさんは顎に手を当てて、ベルジアの言葉に思考を巡らせていた。
「・・・貴方はそれが出来た暁の見返りを考えているのですか?」
「見返りなど要りません。 この国の領地を訪れて、思ったことを口にした迄です。 そこに私情などありません。」
その言葉に嘘がないのは俺達がよく分かっていた。 ミカラさんとベルジアは互いの目を見合っている。 おそらく嘘をついていないかを見極めるためだろう。 そして長い沈黙の後、ミカラさんが深くため息をついた。
「なるほど、確かに貴方の言っていることに嘘偽りは無いようですね。」
「それでは・・・」
「こちらで話を付けておきましょう。」
話はどうやら着いたようだ。 これでこの国、ハーキュリーの国自体の財政は安定することだろう。
「・・・私の方からも1つ、話を聞いて貰えますか?」
「こちらの話を聞いて貰えたので、何なりと。」
「私はこの国をより栄えさせるために様々な策を練った。 しかしそれを行うには国が1つでは足りなかった。 元々ハーキュリーは島国。 やれることをやっても限界がある。 だから私は考えた。 国1つで出来ないのなら、多くの国を持てばよい、と。」
「どういう・・・」
国を持つ? 1つでは足りない? 島国・・・
「・・・国と国との貿易・・・他国との貿易による共存。」
「貿易?」
「つまりこの国に、他国の文化や知恵を、受け入れる姿勢の考え方だ。 そしてそれは逆も然り。 この国での知識を、他国に渡すんだ。 そうすることで多国籍文化となり、他国から来訪しても困らない生活を送れるようになるってことだ。」
「流石です。 私の考えを踏まえた上で、更にそこに知恵を付け加えるとは。」
社会の勉強で嫌という程知ってるからな。 まあその分貿易機関なんかは必要になってくるが・・・それを敢えて今は言わなくてもいいだろうな。
「私の国のものから、その橋渡しを出そうと模索したのですが、生憎と適切な人材がおりませんでした。 そこで」
「我々が足を運び、文化の情報交換を行うと言うわけですね。」
「貴方は他の国の現状を知れる。 我々は国の文化を伝えられる。 一石二鳥の考えだとは思いませんこと?」
確かにそれならベルジアの目的にも反映されるし、国の活性化にも繋がるだろう。 隣のファルケンは話についていけてないようで、頭をグルグルさせているが、まあこっちで勝手に決着を着けておこう。
「ですが本当によろしいのですか? 我々は国のものではありますが、まだミカラ様に認めて貰えるような行いはしておりません。 ましてやそのような重要な仕事、一度人助けをした人間に簡単に渡すのは、少々軽すぎるのではないかと感じます。」
それは一理あった。 俺もここで「国王の命令だから」と簡単に首を縦には振れない。 後細かく言えば俺はこの国どころか、この世界の人間ですら無いんだがな。
「その点は当然分かっております。 だからそれは私自身で確かめさせて貰おうと思うのです。 これを使ってね。」
そう言ってカードホルスターを持つミカラさん。 なるほどな。 認めて貰うには実力を見せろってことか。
「なるほど、では早速・・・」
「いえ、私が確認する人物は貴方ではありませんよ。 ベルジア・アスラン。」
そう言った後にミカラさんは俺の方を見据える。 え? まさか・・・
「貴方にカードバトルを申します。 セイジ・ノムラ。」
「少々お待ちください! 確かに彼も連れていきますが、証明ならば・・・」
「私は思うのです。 確かに交渉の問題ならあなたが行えばいい。 だが貴方達をここまで導いたのは、彼なのではないですか? むしろ、彼が貴方達の中心になっているように感じる。」
「む、むぅ・・・」
そう唸るベルジアに対して、俺はゴーグルとディスクを用意する。
「セイジ・・・」
「女国王様が試したいって言うなら、俺は受けるぜ。 どうやら制約は結ばれないみたいだしな。」
「スキルなど無くとも人を見定めることは可能です。 では、始めさせて貰いましょうか。」
そう言ってミカラさん、もといミカラ様も、バイザーとディスクを構え、戦いの準備が出来上がる。
「存分に見せなさい! 貴方の事を!」
「認めさせてやるぜ! 俺の実力を!」
「「さぁ、劇場の幕開けだ!」」
かなり久しぶりの、セイジのカードバトルです。
何話以来でしょうかね?




