違和感の真相
「なんであの表記のカードが他にも・・・いや、それはありえない。 あれだってれっきとした理由があってこそのあの状態だった、 それならなんで・・・」
「どうしたのだセイジ。 あのカードになにかあるのか?」
そうベルジアは言っているが、俺が気になっているのはカードの事ではない。 なぜあのカードの表記が不鮮明になっているのか、である。
俺が最初に貰った「死水霊」は神様のいたずら心もあったが、俺のスキル作られた引きを引き出すためのものだったし、その後は表記も正常になっていた。
だがあのモンスター、ビューティフルマーメイルと言ったか。 それの表記の部分にノイズが走り、正常にカードを読み取れない上に、そのビューティフルマーメイルにすらそのノイズが走っている。 俺が最初に死水霊を使った時ですら、そんな風にモンスターの立体映像にはノイズはかかってはいない。
ならば果たしてなにが原因であのように立体映像にまでノイズが走っているのか。 俺には分からない。 だから聞いてみることにした。
「なぁベルジア。 このカードゲームにおける不正について、どのような事案がある?」
「・・・貴殿は急になにを・・・」
「いいから言ってくれ!」
ベルジアが質問をしようとしていたところに俺が急かす。 こんなことをしても意味がないのは一番分かっているのにだ。 怒りをぶつけている場合ではない。
「・・・事例が多くはないが、ちゃんと出ている。 大会などを主催している場所で、そのような不正があったそうだ。」
「例えば?」
「まずは自分のデッキの枚数のごまかし。 1、2枚程度でも申告したカード枚数出なければ不正になる。 そしてカードテキストの改ざん。 こちらの方が事例としてあがっているのが多い。 汎用カードほど、それが多く見られる。」
なるほど、機械的なやり方ってことだな。 でも不正は不正になるからな。 大会運営側も大変だろうて。
「もうひとつは相手プレイヤーへの干渉だ。 直接的なものならば、相手の使うバイザーやデッキホルスターに細工をする。 デッキの中身を変更するという事例がある。 間接的ならば、第三者からの相手プレイヤーへの電波妨害があげられた。」
最後のはいわゆる「ジャミング」というやつだな。 この世界でもあるんだな。 ジャミング。
そしてベルジアから聞いてあがってこなかったのが「袖の下」だ。 要は自分の服の裾から、カードを取り出し、ドローをしたフリをして、何事も無かったかのように手札に加えるものだ。 何故それが出ないのかと考えて、ふと気が付いた。
これはAIによるカードを使っている。 つまり物理的に存在していないカード達なのだ。 だからカードを作ろうにも物理的に存在しないのだから、そんなことをしても意味がないのだと、結論付いた。 なら相手のやっていることはカードテキストの改ざんが一番有力的か。
「とはいえ、その不正のためにやることがな、そもそも高度な技術な訳なのだから、普通の人間には余程不可能なのだよ。」
「じゃあ、事例が少ない理由は・・・」
「その不正のためのやり方を知っている者が少ないこと、不正だと分からず見抜けぬ点、そして不正した人間は、更正代わりとして仕事を与えられることが要因だ。 最後のは逆を言ってしまえば、不正してでもそのような仕事が見つかるという訳だ。 自分で言っても信じて貰えないなら実証するしかないという具合にな。」
複雑な世界・・・と言っていいのかまでは分からないが、ハッカーやプログラマーなんかは、かなりの熟練者が行ってると見ていいだろうな。
「しかしその不正については、制約カードバトルにおいては存在しない。」
「・・・どういうことだ?」
ベルジアの一言に苛立ちが出てきた。 まさか制約カードバトルを行う際は、不正も関係ないと言うのか?
「その不正が発覚する前に警告がなるシステムが導入されているのだ。 不正で勝とうなど、正当ではないからな。」
なんだそうなのか。 それなら問題はないか。 ならば残る疑問は1つ。 いや、さっきのベルジアの台詞で不正でないと分かったとするならば、あのカードはいったいなんなのか。 それだけの疑問になる。
「正規のカードだとするならば、余程の事がない限りはあんな風にノイズ混じりにならないよな? なら、やっぱり発動条件を満たしていないだけ?」
「なんだ? 発動条件とは? スキルの事か?」
俺の独り言にベルジアが疑問を持つ。 ああ、そうか。 あの「死水霊」の状態を知っているのは、俺以外だとアリフレアの前の主人だけだったか。 いや、説明するのはよしておこう。 言っても信じて貰えん。
「スキル・・・か・・・」
そしてベルジアの言った「スキル」という言葉が脳を刺激する。 そして脳内である仮定が生まれた。
「なあベルジア。 スキルの発動には、必ず宣言しなければいけないのか?」
「む? まあ基本的にはそうだな。」
「「基本的には」ってことは、例外もあるんだな?」
「あぁ。 例外のスキルの特徴として「常時解放」が存在する。 スキルを宣言するまで発動するものと違い、ある程度の期間、もしくは最初からスキルが発動しているタイプの事を指す。」
「その場合のスキルの提示はどうなる?」
「自分で発言をする、もしくは相手に見破られると言った具合だ。 およそ前者はしないから、後者で何とか見つけるしかない。 第三者から公言すると言う方法もあるが、それを見極めるのも難しいだろう。」
スキルにもタイプがあるのか。 となればこの状況はそのパターンに当てはまる。 ファルケンは知らず知らずの内に、敵の術中に本当にはまってしまっていたようだ。
話が本当ならば、自分で違和感を見つけて、自分で摘発しなければならないのだ。
「これは・・・ファルケン次第って事になるのか・・・」
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チラリと見た師匠の顔は、なにかが分かったような顔をしていたッスが、それを言葉で伝えられないようになってるッス。
「コンバットタイム! 私はビューティフルマーメイルの攻撃を放棄することで、このカードの攻撃力分の効果ダメージを与えるわ!」
そう言ってビューティフルマーメイルの攻撃力分のダメージが・・・ あれ? 効果ダメージとは言われたッスけど、どのくらいのライフコアが減ったのかが分からなくなってるッス。
「ふん! 私が直接手を出さなくたって、ダメージを与えてやったわ! どうかしら?」
いや、どうかと言われても・・・これはどう言うことなんスかね? 俺っちのライフコアが分からなくなってるッス。 これはどうすればいいんスかね? 俺っちには分からないッスよ。 師匠。
こう言った時に師匠は目を瞑って、瞑想している事があるッス。 ここに来るまでの旅路でも、道中のカードバトル中でも、とにかく思考時間があったッス。 でもその後の師匠はとても決意に満ち溢れた表情になっているッス。
俺っちもやってみることにしてみたッス。 制約カードバトル中に、そんなことをしても意味はあまりないような・・・
「どうしたのかしら? あんまりにも急すぎて諦めちゃったのかしら?」
相手からの問答が聞こえてくるッス。 でもそんなことに構ってはいられないッス。 この後をどうやって勝ちまで進めるのか・・・ 集中・・・集中・・・
「自分の状況を把握してみなさい。 すぐに負けを認めたくなるわよ?」
そうやって相手に聞かせる訳になんの意味が・・・
「言葉を・・・聞かせる?」
その考えに俺っちは少しだけなにかが頭に浮かんだ。 なんでそうまでして相手に自分の言葉を聞かせたいのかを。
「もしかして・・・もうスキルは発動している?」
そう発言すると相手は少しだけ体を反応させるッスが、すぐに元の調子に戻ったッス。 これはなにかあるッスね。 それがなんなのか・・・ 相手はずっと喋り続けている。 そういえば最初もこうやって喋り続けてたッスね。 こっちの意見も聞かずに。 喋ることで相手に自分の言葉を信じ込ませる・・・
「もしかして、喋った言葉は嘘でも、本当だと信じ込ませてるッスか?」




