外と中で見えているもの
今回かなり短めになってます。
それとセイジ視点となります。
「・・・なあセイジよ。」
「なんだ?」
「あそこでファルケンに制約カードバトルを行わせる意味はあったのか?」
意味、とは。
「別にあの場でファルケンが謝ればそれでこの騒動は終わっていた筈だ。 なのになぜわざわざ戦わせたんだ。」
その疑問に対しての質問か。
「ベルジア。 お前も前の街でアリフレアがなんの意味もない罪をかけられたのは分かってるよな?」
「ああ、それがどうした?」
「・・・俺の国でもそうだったんだけど、基本的に訴えられたら、自分がなにもしていないのに、罪に捕らわれる事がほとんどなんだ。 無罪の主張なんか本気で通らない。 でも不思議なことにな、悪いことが表沙汰になったのにも関わらず、金や謝罪で終わることもあるんだ。 そんなので許されるなら、最初から最初からそうしておけばいいって思えるんだ。」
「・・・なにが言いたい?」
「ベルジア。 反論出来る、自分の意見を通すことが出来るって、案外重要なことなんだぜ? 1人で抱えたって解決しないし、ましてや誰かに言って納得して貰えるか分からない。 だから制約的にでも、自分の主張を通さなきゃいけないんだよ。 この世の中な。」
無罪の証明の難しさ。 それは地球においても同じこと。 前にドキュメンタリーでやってたのを思い出し、圧力は時に人間の精神を壊すものだと、そう学ばされた。 だから人間悪いことをしないように生きるし、真面目に生きようと必死なのだ。 だがこの世界ではまだ自分の無罪を主張できる。 ならば出来る限りの事はさせてやろうという思いでやらせたのだ。
ファルケンは子どもの頃の経験からそういったものが出来なくなっている。 いや、俺も地球にいた頃は反論なんて滅多にしなかったし、間違っていることの指摘もしないように生きてきた。 けどこの世界ではその概念を覆さなければ駄目だと感じた。
「だからこそ、その主張が出来るうちに、やらせておきたいんだ。 謝って済む世界なんか、どこにだってあるんだからな。」
「・・・貴殿がどのような世界で産まれてきたかは分からないが、余程の胆力があると見える。 私もそのようなことを、今まで思っていなかったのだからな。」
そうベルジアは言うが、元々はお前との接点があったから、そう思っているだけだ。 やれることなんか限界が来る。 その前にやるだけだ。
「ところで、試合状況だが。」
「ああ。 ファルケンの詰め方がちょっと甘い気がするんだよな。」
「私はファルケンと戦っていないので分からないが、負ける要素は引き運くらいだと感じている。」
「それも踏まえて、あいつのポテンシャルは高いぜ? テーマデッキならば、尚更な。」
ファルケンのWsデッキは、「ローリスクハイリターン」な部分がある。 例えば俺が戦った時に見せてきた「バレットボム」は相手のインタラプトカードを無効化するインタラプトカードなのだが、代償は自分フィールドのモンスターとなる。 だがファルケンのモンスターは基本的にはコストがあまり高くない。 むしろ条件を満たしていれば低コストでの召喚も可能だ。 それで相手の手段を潰せれるならば、お釣りも来たっていい。 大量展開からの確実な打点は強みになる。
だが、今回の場合は蜃気楼領域のせいで、相手に主導権を握らされている。 ファルケンの戦い方としてはかなり危ない状況になっている。
「私のオープニング、そしてドロー。 プラポレーションタイム。」
このAI領域は、半径2m以内なら声が届くが、残念ながら俺達はその中にはいない。 そして半径20m以内なら声が届けられないが、戦っている相手同士の会話は聞くことが出来る。 まだそれだけでも状況把握には十分だろう。
「私はコストを8支払って「フラムロウ・コンバース」を召喚するわ。」
『モンスター:フラムロウ・コンバース レアリティ 桃 コスト8
種族 術使い
このカードが攻撃対象となる時、体力を6上昇させる。
ATK 9 HP 10』
そう言っているが「蜃気楼領域」のせいで、どんなモンスターなのかが全く見えない。 それどころか中の状況も把握が出来ない。 声だけで判断するのは至難の技だ。
「今はどちらが優勢なのだ?」
「状況からすると多分相手がマウントを取っている。 相手にはあの領域の効果があるから、ファルケンの攻撃を凌ぐことも、変更することも容易だ。 それに相手の術中にファルケンが嵌まってる気もするんだよな。」
「それは私も思っていた。 相手の手のひらで踊らされていては、勝てるものも勝てない。」
手のひらで踊らされている、か。その表現は正しいかもしれない、だけれども。
「・・・俺はこの戦い、なにか裏があるような気がするんだよな。」
「・・・そんなことを考えているのは貴殿だけだろう?」
「ああ、悪い。 別に陰謀論の話をしてるんじゃないんだ。」
「ではなんだと言うのだ? 裏とは。」
「あの霧、本当に蜃気楼領域の効果だけか?」
ベルジアにそう言うと、ベルジアも今戦っている領域を確認する。
「コンバットタイム! 行きなさい!フラムロウ・コンバース!」
「それは受けるッスよ!」
「まだよ! 崇高な女も攻撃させるわ!」
「今度はやらせないッス! コストを5つ支払って・・・」
「別段普通だと思うが・・・なにが気になっているんだ?」
ベルジアはなにを言っているのか分からないと言う風な感じだ。 正直俺だって自分の推測は当たってて欲しくはない。 だがこの違和感の正体を掴みたくてしょうがないのだ。
「なぁ、こう言ったAI領域内での領域カードのエフェクトって、どこまで考慮されてるんだ?」
「なんだ? 唐突に?」
「とりあえず答えてくれよ。 なんでもいいからさ。」
「・・・本来ならあそこまでの領域展開はされない。 精々霧が出る位だ。 そこまでの影響力はない。」
「・・・そうか。」
じゃあやっぱり目の前で起こっている事はおかしいんじゃないかと言う事になる。 そこまで影響力が出ないのなら、なぜ外から見ている俺達にすら、まともに2人の戦いが見えないのか。 その影響はなんだ? なぜ見えない?
「・・・そこまでして隠したいなにかがある?」
「・・・セイジ?」
思考を動かしているものの、なにを隠したいのか分からない。 目の前で戦っているファルケンはおろか、観客である俺達にも見せないものとは・・・?
「・・・クールタイムに入って、私はエンディングを迎えるわ。」
これで相手のターンが終了する。 なにを隠したい? なにが知られたら不利になる? 俺達にまで与えるものとはなんだ?
「・・・セイジ!」
ベルジアの叫びに、俺は現実に引き戻された。
「あ、あれ? 俺どのくらい思考してた?」
「時間は経っていないが、考えを巡らせすぎだ。 純粋さを失っていたぞ。」
そうは言うが、やはり気になってしょうがない。 なにかがあるようで。
「なにかあると考えても、それを対処できるのは我々ではない。 ファルケンに託そう。」
そうだ。 俺達に出来ないなら当事者に任せればいい。 そういった意味であいつにこの戦いをやらせたのだ。 変な思考が混ざってしまったようだ。 頭を切り替えてこの試合を見守ろう。 俺達にはそれしか今は出来ないのだから。




