水のある砂漠の街では
あの夢を見てから2日後、俺達は次の目的地の中間にある街にたどり着いていた。 砂漠のオアシスとは良く言ったもので、入った街の中心には池にも等しい位の大きさをしていた。 あれだけ大きくするのはかなり時間が掛かっただろうと思うくらいだ。その証拠に池の周りには格子がされていて、簡単には中に入れない使用になっていた。
「それだけここの水は大事にされているんだね。」
「生命線とも言えるッスからねぇ。 乱雑に扱われないように措置するのは当然ッスよね。」
その光景にゼルダとファルケンは同じ様に意見を繰り返した。
「お水、貰えるでしょう、か?」
「人数分とドーホース達の分を貰えなければ、我々の方で対処しなければならない。 向こうだってあの水をそう余所者に渡すわけにもいかないだろうしな。」
アリフレアとベルジアは自分達に渡すだけの水の確保を危惧していた。
「とにかく聞いてみるぞ。 最悪水の変わりになりそうなものを購入するんだ。 ここを出てもマップのそれを目測するなら3日は掛かる。 出るのを次の日の朝にすると考えて、色々と聞いてみよう。」
その言葉にみんな納得し、俺達は店のありそうな場所を探すのだった。
「水ならこの街では売ってないんだ。」
最初の店の人に「どこなら水を売っているのか?」と訪ねたところ、そう返事をされてしまった。
「やはり街以外の人間にあげるだけの水源ではない、というわけですか。」
「あぁ、違う違う。 確かに水は減らしたくはないが、飲まなきゃ死んじまう。 だから俺達も工夫しているのさ。」
そう言って取り出したのはペットボトルに入った、濁った液体だった。 その中には何か粒のようなものが煌めいていた。 しかもそれが大半を占めていたので、完全な液体では無さそうだ。
「なんなのだこれは? なぜこんなにも濁っている?」
「・・・そうか、泥水か。」
「正確に言えば「砂水」だ。 少ない水で喉を潤すなら、こいつが一番なんだとよ。 この街に伝わる由緒正しきやり方だと教わったよ。 とはいえ砂混じりなんか飲めないだろって思ってるだろう。 ほれ、一杯飲んでみな。」
そう言われてカップの中の飲み物を俺が一口飲んでみる。 最初に来るのはシャリシャリとしたおそらく砂であろう粒が舌に当たるが、喉を通る時は予想以上にするすると入っていって、なによりも甘さを感じた。 それに加えて冷たさも相まって。
「・・・うん。 お店で売れる理由が分かった。」
「大丈夫、なのです、か?」
「毒は入ってないし、喉を通る感触が心地いいぞ。 これなら暑さも凌げる。」
そう言って俺が飲み残したコップをみんなに渡した。 そして店の人に言った。
「あれ、水と砂を容器に入れて、凍らない程度に冷やしているでしょ?」
「お? なんだ? 1回飲んだだけで分かっちまったのか。」
「あれに似た飲み物を飲んだことがあるからね。」
あの飲み物を飲んで思ったのは、フローズンだと思ったことだ。 正式な作り方までは分からないけれど、似たような感じのものがそれだったのだ。 冷えていて、シャリシャリとした感触も気にならず、飲みやすい。 フローズンと違うのは、氷を元に作っていないので頭が痛くならない点だろう。
「・・・本当です! これなら、飲みやすい、です。」
「・・・なるほど、これには砂糖が入っているのだな。 ただの砂では甘さは出せないからな。」
「先人の知恵が、ここの人たちを救ってくれてるんだね。」
「これを考えた人には、感謝しないと、ッスね。」
みんなにも好評だったので、これなら旅にも問題はでないだろう。
「それじゃあこれを・・・」
「おっと待ちな。 あんたら、すぐに出ていくのかい?」
「え? いやぁ、1日位は宿泊しますけど・・・」
「悪いなあんた方。 この街のルールがあってな。 飲み物関係を売買をするのはこの街を出ていく時だけなんだ。」
「どうして、そのような、ルールが?」
「・・・買い貯めと盗難防止ですか。」
「そう言うことだ。 悪いことをしてるのは分かってるんだ。」
「いえ、こちらこそ気づけずすみません。 では出る時にまた声をかけますので。」
そう言って俺はその場を後にした。
「良かったのですか? 買わなくても?」
「あそこで売られてるものは易々とは売れないさ。 それにさっき言っていただろ? 「売買をするのはこの街を出ていく時だけだ」ってな。」
「どういう意味なんスか?」
「・・・なるほどな。 確かにあの位置は、色んなものが良く見える。」
ベルジアが振り返った先の光景を目の当たりにして、納得してくれたようだ。
「あの位置は街の出口と池との間にあって見通しもいい。 水を盗もうものなら即刻現行犯。 そしてあの人の店で買った商品は中には持ち込ませないように、あの人自身が見張ってる。 そしてこの街の水はとても貴重。 そんな中で水を盗んだり、貯め込んだりするのは、この街ではNGなんだろ。」
「じゃあ、「売らない」んじゃなくて、外に出る訳じゃないから「売る必要がない」ってことなんだね。」
「そういうことだ。 それが分かったら、街探索といきますか。」
そうして街の探索を再開させるのだった。
周りが砂漠で囲まれていること以外では、ここは住み心地の良い街とも言える。 ただ、料理や何かは焼き物が多いと見える。 まあこういった場所で凝った料理をだしてもきついだけだろうしな。
「すみません、その焼き串、人数分買います。」
「はいよ。 それじゃあ、水色レアのカード10枚だよ。」
ん? カード10枚?
「おっと、悪いね。 旅人だったかいな。 ここじゃAIのカードを通貨代わりにしててね。」
「それだと利益にならなくないです?」
「本物のお金なんて、この街じゃ価値はないよ。 それよりもまだ遊ぶことの出来る、カードの物々交換のほうがこの街じゃ有意義に使える。」
そう後ろの方を見るように促されると、子供達がカードバトルを繰り広げていた。
「確かにこの街はこの先の中心街に行くのに必ずと言っていいほど通る場所にある。 そりゃそうさ。 この街がなけりゃ、1週間の砂漠横断なんて正気じゃないからね。」
「旅人を助け続けてる街なんですね。」
「ま、盗賊やなんやらもいたから、全員が全員って訳じゃないけどね。 さ、出来上がったよ。」
そう言って串焼きの乗った皿が目の前に用意される。 思えばここまでの旅路で、こういった素朴な料理すらも食べれてなかった気がする。 ゴクリと生唾を飲んだ後に、俺は一つ訪ねてみることにした。
「ねぇ、水色レアなら、種類は気にしない?」
「うん? ・・・ああ、そう言うことかい。 特に指定はしないよ。 なんでもOKだ。」
俺が聞いた理由は、細かな条件が提示されるかもしれなかったからだ。 「水色レア」と一言で言っても数は多い。 ならばそこで条件を絞らないと、欲しいカードが手に入らないこともあるだろうと言う算段だったが、杞憂に終わったようだ。 なので俺はみんなに顔を見合わせて、全員でゴーグルやバイザーを装着し、不必要なカード2枚ずつを渡すことにした。
「これで合計10枚。 文句は無いでしょ?」
「ああ、十分だ。 ほれ、持っていきな。」
そうして俺達は串焼きをゲットすると共に、この街の買い物事情にも触れられたのて、この街での買い物を済ませて、宿を借り、一泊したのち、出るとなった時に昨日買えなかったものを買いに来たのだった。
「どうも、昨日ぶりですね。」
「ん? おお、アンさん達か。 今日出発するのかい。」
「ええ、なのでここで買い物をと、思いましてね。」
「それだったらいいぞ! 昨日飲ませてやったやつに、この暑い砂漠にひんやりとしたパン。 あ、こいつは明日中には食ってくれよ。 熱でやられちまうからな。 それから・・・」
と、おっちゃんがどんどん品物を出してくれるが、さすがに量が多すぎることになるので、かなり絞ったが、それでも量が多かった。
「で、値段、というよりはカードの交換だが、金レア1枚でどうだ? 無理なら銀レア5枚にするが。」
なんか良くあるお菓子の景品の引換券みたいな話だな。 そう考えていると、ベルジアが前に出た。
「このカードでいかがでしょうか?」
「・・・ふむ、確かに金レア、頂いていくぜ。 良い旅をな。」
そう言って荷物をドーホース達や、ファルケンに持って貰い、街を出発した。 そして街が見えなくなった辺りで、ベルジアに質問した。
「なあベルジア、本当に良かったのか? 金レアなんて渡して。」
「あの金レアカードは今の私にとっては必要の無いカード。 だから渡したのだ。 それに・・・」
「それに?」
「今まで縛っていた戒めのカードを手放せたことを、私は清々しているのだよ。 だから気にする必要はない、私がやったことなのだからな。」
その瞳は、確かに昇り来る朝日のように輝きを持ちながら澄んでいたのだった。
今回「砂水」と称して出しましたが、イメージとしてはチョコフローズンだと思っていただければと思います。
なにかで泥水を砂の割合が多い状態で飲んでいるのを見かけたことがあったので、それを採用しました。




