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カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第一の章 今の世界を知る
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夢、だったのか

 俺はテントから少し離れた所に作られている焚き火の所にやってくる。 ここが俺達の見張り場所だ。 ドーホース達も寝てしまっているため、完全なる静寂と明けるか明けないか位の明るさになってきた空が俺を包んでいる。 そして簡易的に作られている椅子に腰かけたところで、ポツリと呟いた。


「あの夢の内容は、おそらく俺の前世の記憶だろうな。」


 いや、それ以外に学校という空間はありえないだろう。 思う部分はいくつもある。


 なんで今さらこんな記憶が?とか、まだ前の世界に未練があるのか?とか、疑問に疑問が飛んでくるが、俺がこの世界に来てからもう2ヶ月近くになる。 内容が濃すぎて、逆に昔の事なんか忘れていたくらいだったのに、今になって記憶から現れるとは、正直自分もビックリだ。


「神様からの悪戯か。 それともどこからか俺を見ている、悪魔の罠か。」


 そんなことを1人で呟きながら、沸かしていたお湯を耐熱性のコップに入れて、前の街で多めに買った蜂蜜を入れる。 これはハニーショットと呼ばれ・・・まあ簡単に言えば、蜂蜜のお湯割りだ。 こう冷えきった日には、これを飲んで温まるのが通例なんだそうだ。 どこの通例なのかは知らないけれど、蜂蜜の甘さが身体に染み渡ってくる。


「ふぅ・・・」


 身体が温まってきたところで、また考える。 あの夢は一体なにか意味があったのだろうか? 俺の夢の内容はまず誰かに話すつもりはない。 おそらくだがこの世界には学校のような校舎は無いと見る。 それに俺の夢の話をしたところで、それこそまさしく夢物語として話を信じてもらえないだろう。 まあそんなのを信じろと言う方が無理な話なのは分かっていることだ。 だから俺のこの話は胸の奥に閉まっておくことにしよう。


 日の出が見えた辺りでバインダーが光ったので、日付変わりのパック開封の時間になったようだ。 そういえば神様からの加護のパック増加キャンペーンはそろそろ終わる筈だ。 今日か明日辺りだろうか。

 とにかくパックを開けるためにゴーグルをした。


『領域カード:ドリームスクール レアリティ 紫』コスト6

 自分のコンバットタイムをスキップする代わりに自分フィールドのモンスター1体の攻撃力のダメージを相手に与える。』


『モンスター:ニューエージェント レアリティ 紫 コスト7

 種族 衛兵

「召喚時」このカードの攻撃力を2倍にする。 ただしこのカードが戦闘をする度に、攻撃力が8減少する。 また攻撃力が0になった時、このカードは破壊される。

 ATK12 HP 4』


『装備カード:トロフィーフラッグ レアリティ 桃 コスト9

 このカードの装備モンスターと戦闘を行う相手モンスターは、ダイスを振り、1/○分攻撃力が減少する、○はダイスの出目の数に比例する。』


『モンスター:ハリボテ騎士(ナイト) レアリティ 水色 コスト4

 種族 衛兵

 このモンスターが戦闘、及び効果で破壊される時、体力を半分にして、フィールドに残す。

 ATK 8 HP 8』


『装備カード:クラッカー・ジ・エピローグ レアリティ 銅 コスト12

 このカードを装備したモンスターしか、攻撃できない。 このカードを装備しているモンスターは コンバットタイム時のみ、攻撃力が2倍になる。』


 開放したカード・・・学校に新入生、運動会の徒競走の順位の旗、文化祭の演劇、そして卒業式の卒業証書・・・か。 よっぽど前世の記憶に惹かれたのだろうか、完全にそれに偏ってしまった。 どうも俺の記憶までカードに反映し始めたようだ。 性格やらなにやらを反映するのは知っていたが、まさかここまでになるとは思わなかったな。


「それにこれらのカードはあんまり・・・いや、別のカードと相性がいい場合もある。 保留だろうかな。」


 そういいながらカードを見ていく。 カード事態はAI領域の話なので、カードが半透明なので、カードのイラストも見にくいのだが、完全に分からないわけではないので、何故か見いってしまっていた。


 余程前世の記憶が残っているのだろうか? それとも懐かしさから見いってしまっているのか分からない。


「・・・みんな、どうしてるだろうかな。」


 前の世界では、俺は暴走車に飛ばされた後に電車に轢かれて死んでしまった。 そしてその転生先としてここに生き返らせて貰い、今に至っているのだが、こうして昔の事を思い出させて貰えるのは、こちらとしても不本意だが懐かしさを感じられる。


 そんな事だから俺も昔の思い出が甦って・・・


「・・・っ・・・くっ・・・」


 この世界に来て、前世の事は忘れようとしていた。 いや、正確にはあの夢を見るまでは完全に記憶から飛んでいた。 なのにあの夢を見て、思い出してしまっている自分がいる。 そしてそんな中で、涙が出てくる程に悲しんでいた。


 断ち切ろうにも、やはり前世の記憶は前世の記憶。 そう易々と切り離せるわけがない。 むしろ思い出したことによって、あの楽しかった日々を、もう味わえないと言う悲壮感まで込み上げてきた。


 温かい筈の炎も、今の俺の身体には当たらない。 心の寒さがそれを上回ってしまっているから。


「俺だって・・・あんな風になんか・・・死にたくなかったよ・・・ みんなとあれからも・・・遊んだり・・・喋ったり・・・笑い合いたかったさ・・・」


 今更になってそんなそこを弱音のごとく、いや、これが今の俺の弱い部分なのだろう。 俺は縮こまりながらポロポロと愚痴のように溢して言っていた。


 前世の記憶。 良くあるラノベなんかだと、記憶を受け継いでいる作品が多い。 稀に記憶が無いパターンもあるらしいが、それは転移物の話だし、大体は記憶を取り戻しても、元の世界には戻らないパターンも知っている。 だけど俺の場合は、記憶に残っているからこそ、不便な部分になっている。 それが俺の脆い部分になり、弱点になる。 思い出しながら泣きながらも、その辺りだけは、冷静に頭が働いていた。 今後、過去を掘り返すような人間や亜人が現れないこともない。 そしてそれによって、ひょんな事で俺自身の心が壊れる可能性も否定できない。


 ならばせめて、見えない部分で泣いてしまえばいい。 あいつらに心配させるくらいなら、1人で閉ざしていた方がましだ。


「ご主人様・・・?」


 声がしたので頭をあげると、後ろにアリフレアがいるのが分かった。 俺はハッとしたように涙を拭う。


「おはようアリフレア。 朝御飯の準備か?」

「・・・ご主人様、どこか具合が、悪いのですか?」

「え? あぁ、いやぁちゃんと寝た筈なんだけどなぁ。 やっぱり寝不足かな?」

「お体を、丸くして、いましたし。」

「ハニーショットは飲んだんだけど、まだちょっと寒かったみたいでな。 焚き火で暖まってたんだ。」

「・・・目が赤いですよ? それに、なにやら頬に、跡が・・・もしかして泣かれていたのですか?」

「いやぁ、砂が目に入っちゃってさぁ。 それで目が痛くなっちゃったんだろうなぁ。 ははは・・・」


 アリフレアの純粋かつ鋭い質問にある意味苦しい返しに対して、俺は段々アリフレアの視線が辛くなってきた。


「ご主人様?」

「・・・」


 そんなことを言ってもしょうがないとは分かっている。 だけど俺に最初に寄り添っているアリフレアの前では、さすがに居心地が悪くなる。 頭を少し掻いた後にアリフレアに目線を向ける。


「朝御飯の準備をしよう。 俺も手伝う。」

「はい。 ヨコッコちゃん、達の、様子を見た後に、材料を、出してきます、ね。」


 そう言ってテントの中に入って数分後、アリフレアが人数分の朝御飯の材料を出して、焚き火を使って、フライパンのような調理道具に熱を帯びさせる。


「アリフレア、これから俺が話すことは、全部独り言だと思って、聞き流しながら聞いてほしい。」

「? はい。」


 そうアリフレアに言った後に、俺も食材を切っていく。


「俺は、この国とは全く違う、遠い場所からやってきたんだけど、その時の記憶が無くなりそうになっていたところに、夢を見たんだ。 その場所の夢を。」

「夢、ですか。」

「その夢を見てな、俺は懐かしさと悲しさを思い出したんだ。 あの頃が楽しかったって思ったのと、あの頃には、戻れないんだなって、思ってな。」


 またあの事を思い出して、苦しい気持ちになっている筈なのだが、何故か平然と喋れていた。 切り終わった野菜を盛り付けて、机に置く。


「変な話だよ。 今まで忘れていたのに、唐突に思いだしたんだもんさ。 頭がおかしくなりそうだった。 俺が、俺でなくなりそうで、怖くなっちゃってな。 そんなことで弱気になっちゃいけないって、頭で処理出来なくなってな。」


 そう言った後にため息をつくと、アリフレアが背中から俺を抱き止めてくれた。


「アリフレア?」

「ご主人様は、私にとって、かけがえの無い、人です。 ご主人様が、いなかったら、こんな風に、なれて、いません、でした。 だから、悲しくなったら、何時でも、言ってください。 少しでも、ご主人様の、力に、なりたいです。」


 そう言ってくれるアリフレア。 俺のやったことは、間違ってなかったのだと、アリフレア自身が証明をしてくれているようだ。 確かに過去に囚われすぎるのは良くないなと、改めて確認が出来た。 そんなアリフレアを正面にして抱き止めてあげる。


「ありがとうな、アリフレア。 とりあえず、火を止めようか。 焦げちゃうからな。」


 そう言ってアリフレアを鍋の方に与えるのだった。

前世の記憶については、またどこかで使う機会があると思います。


どこで使うかは・・・その時のお楽しみで。

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