全ての結末
『勝者 セイジ ノムラに決まりました。 それにより、アリフレアの冤罪が成立致しました。』
AI領域が閉じて、ホセラーニの町並みの景色が見えた。
「勝ったのだな、セイジ。」
解放されたと同時にみんながこちらによってくる。 AI領域に入っていなかったということは、多分展開するときには近くにいなかったのかもしれない。 いや、敢えて離れていたのかも。
「セージさん。 アリフレアちゃん抱えて、どうしたんです?」
そうゼルダの疑問に、俺はハッと思い出した。
「そうだ! アリフレアを休ませてあげてくれ! 今回のカードバトルで大分頑張ったから疲れちゃったみたいでさ。」
「そ、そうなんすか! ちょっと宿屋まで送ってきますね!」
「すまんファルケン!」
アリフレアの冤罪は出来たんだ。 別に離れたところで問題はないだろう。 そして当の問題なのは・・・ 俺はフクラーの前に行くことにした。
「おい、アリフレアの冤罪は出来たから、これ以上関わってくるなよ? 俺はあんたらの事情には本来関係のない話なんだからな。」
そうフクラーに言ってはみているものの、フクラーの反応はない。
「しかしあの状況からよく逆転まで持ち込めましたね。」
そう言ってきたのはカリストだった。 そういえばこの人は戦いの様子を見ていたんだっけ。
「いや、俺だけの力じゃないですよ。 アリフレアの事もありましたし、自分のスキルにだって頼ってしまって・・・」
「そ、そうです! あの者はイカサマをしたのです! あのような力は許されざる力です! 再戦要望致します!」
急にフクラーが動いたと思ったら、カリストに対して思いっきり媚びを売り始める。 なんかこの光景を見たことがあるな。 意外と最近に。
「フクラー殿、確かにあなたはスキルを使わずに彼と戦い、そして負けた。 この事実は変わりない。」
「せやろせやろ? さすが勇者様、分かって・・・」
「ですがそれはあなたがスキルの顕現の条件を満たしていないから、あなたが発動できなかっただけの事。 それにスキルは必ず勝てる絶対的な力ではないし、顕現させるのだって一筋縄ではいかないだろう。 あの少女だって、彼を助けたいという想いが強くなったからこそ、スキルが開花したものだし、それに気付いていないあなたは実に愚かだ。 もうひとつ言っておくと、あなたの愚行を私達が見ていなかったとお思いならそれは大きな間違いだ。 あなたには領地剥奪を促す報告がいくつも上がっている。 所在についてカミーユ様からの報告がある。」
「なっ・・・そ、そこまでするかいな!?」
勇者カリストの長文説明にフクラーは愕然としている。 この驚きよう、よっぽど巧妙に悪いことを隠してきたのか? だとすると相当な悪党じゃね? 弁解するきは毛頭ないがな。 アリフレアの事を散々侮辱したんだ。 個人的にも許すわけがない。
「それと・・・」
そう言って一緒にいる警官にも目を向けるカリスト。 この警官にも何かあるのか?
「君はフクラー殿が悪事を働いていたのを知っていたにも関わらず見ぬふり、いや、帳消しのための買収をされていたそうじゃないか? その辺りは、君自身はどう考えている?」
「自分も罪に捕らわれていると言うのならば、自分は甘んじて受ける所存です。 汚職警官として後ろ指を差されようとも、罪は償うつもりです。」
やっぱりというか、薄々は気が付いていたが、フクラーになにか握らされていたな。 じゃなけりゃあんなに迅速に職務質問の為に連行なんていう手段は取らない筈だ。 奴とのタッグ戦での連携を見てみても、かなり深い関係に踏みいっているのかもな。
「とのことだが、君はどう思う?」
「・・・え? それを俺に振るの?」
「君はある意味被害者だ。 被害者からの意見も取り入れないとね。」
言ってることは間違ってないだろうし、勇者らしいといえば勇者らしいんだけども・・・とはいえ侮辱されたからと言って死刑やら磔刑に処すようなレベルなのかと言われると、それはそうではないようにも感じる。 しかし簡単に許せばつけあがるかもしれないし・・・
「なら領地を統括するものとしての仕事ではなく、領地に住む人間の仕事をさせる、というのはどうでしょうか?」
「それだけでいいのですか?」
「もちろん休みは少なく、ですがね。 それぐらいしないと、領地を預かる身としての自覚が芽生えませんからね。」
優しくも厳しい罰だと考えるが、言われてみれば、ほとんど俺に刑を委ねても構わないような形になっていた。 そんな風に見ていると、フクラーはなにかいいたげな表情だったが、俺の方が明らかに有利なこと、勇者が前にいること、自分の地位を守りたいという想いが色々と重なっているようで、それ以上はなにもいってこない。 言い返せない、と表現するのが正しいだろうか。 とにかく言いたくても言えない現状にフクラーはなっていたのだ。 だが
「一応言っておくが、これはあんたのためでもある。 なんでもかんでも死刑だ禁固刑だなんて、表社会に戻ってこれないような事をしたところでなにも意味をなさない。 少しでも改心する気が起きるようにしているだけだ。 まともな理由もなしに殺されなかっただけましだと思え。 それにこれはあんた1人の罪じゃないんだからな。」
「自分も同じ罪なのですか?」
「罪を償おうという気持ちまで奪うつもりはない。 どう変われるかはあんたら次第だ。 もう俺達には関係無い。」
そう諭してやっているが、果たして聞いてくれるかどうかは結局は本人達次第だ。 ここから先は干渉する気もない。
「そう言うわけなんで、後はお願いします。 あ、もしも不安なら、何人かは監視で派遣すればいいと思いますよ?」
「承知された。 しかし本当に良かったのか? 君の仲間を侮辱した人間を、生かすような事をして。」
「侮辱されたからあいつを殺してやる、なんて考えならキリがないんでね。 それに別に死んだりはしていないので。」
これで殺しただなんていえば、ほぼ間違いなく死刑にしていただろうが、今回ばかりはそう言ったものではないので、労働という、人の感性によって変わる処罰にしただけの事だ。
「本当に優しいのだな。 君は。」
「面倒なだけですよ。 色々なことに絡むのが。」
そしてそのまま残りをカリストさんに任せ、俺達はアリフレアとファルケンの元に行くことにしたのだった。
「どうだ?アリフレア。 まだ気分は悪いか?」
「いえ、大分、良くなり、ました。」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。 AI領域での話とはいえ、あの時のアリフレアは衰弱しているように見えた。 俺を助けたいが為に発動したスキルの代償かとも感じたが、そんなことになってしまえば、そもそもスキルが使えない。 結果として見えた答えは、張っていた気を一気に緩めてしまったことによる疲労の蓄積だろう。
「悪かったな。 無理に、戦わせちゃって。」
「謝らないで、下さい。 ご主人様。 ご主人様は、私のために、動いて、くれたんです、よね? でも、守られて、ばかりじゃ、いられないと、思ったから、頑張った、だけですよ。」
「そんな無理して頑張らなくても・・・って言ってももう無理かな。」
「はい。 私は、アリフレアは、ご主人様の、お役に、立ちたいと、思って、おります。」
そうアリフレアは、寝転んでいるベットの上で、そう決意をしていた。
「セイジ、アリフレアの頑張りは、貴殿がよく知っているだろう? もう過保護に見る必要もないだろう。」
「ん。 そこまで過保護だったか?」
「まあ、魔物と戦う時とかは最後列にさせてたりしてたもんね。 なるべくアリフレアちゃんに敵の目が行かないようにとかね。」
む。 無意識にそうしていたのかもしれないな、それは。 でも考えてみてほしい、アリフレアはまだ13歳なんだし、危険なことをさせるには、まだ少し幼すぎる気がしたんだ。 まあそれが余計だと言われれば止めるだけなんだが。
「私は、ご主人様が、お優しい方だと、いうのは、知っています、ので。」
まあ、そう言ってくれるならまだいいのかな?
アリフレアの療養を行いながらホセラーニの街に滞在している時、結構色んな事が起きた。
まずフクラーと警官についてだが、刑罰としては役職の剥奪のみとし、納めさせていた食材や金品を返納、その後は自らが色々なところに立ち会いながら、仕事をしているのだそうだ。 フクラー自身もあまりそう言ったことに疎かったようで、毎日ヒイコラ言っているのだそうだ。 ちなみに領地を授かっている地位は残っているのだが、実質名ばかりの、と言った具合に落ちたようだ。 これからベルジアのように、領地で切磋琢磨にやってくれればと、願うばかりだ。
そしてまた少しずつ開拓をしているようで、また新たにひとつの領地を設けるそうだ。 その領主として俺の名前が上がったようだが、辞退させて貰った。 こういってはなんだが、俺は留まるよりも動いていた方が性に合ってる。 というか領地の確認なんか出来ない初心者なのだから勘弁願いたい。
そんなこともあって、何日か滞在したのちに、散々休ませていたドーホース達やヨコッコ達と共に、街を出て、今度は砂漠地帯に足を踏み入れるのだった。
次回は砂漠横断です




