優しき者の貢献
アリフレアが発した力とは?
「ふん。 終わったで。 さあそのガキを渡して・・・なに!?」
そうなにかを言いかけたフクラーは驚きを隠せていなかった。 当然だろう、俺は本当ならばライフコアによる補填が出来ないので、このカードを出すのは不可能だったのだから驚くのも無理はない。
「馬鹿な!? お前! いったいなにをしたんや!?」
「俺はなにもしていない。 だがいつの間にか俺のライフコアが上限まで行っていたから、使ったまでだ。」
そう、俺が使ったのは「ツギハギの折り畳み盾」。 当然手札に戻す効果も込みで、だ。 だがどうして急にライフコアが回復したのか。 その答えは俺の隣にいつの間にか寄り添ってきていたアリフレアが何かしたのだろうと考えた。 そして折り畳み盾がしまわれると同時に、アリフレアは力無く膝を落とした。
「アリフレア!」
俺は倒れないようにしっかりと支えた後、上にウィンドウが現れる。 内容はこうだった。
『アリフレアのスキル:私の命はあなたの命
タッグパートナーのライフコアが15以下の時に発動が出来る。
自分のライフコアを、任意の数パートナーに渡すことが出来る。 ただしこの効果を使用する際、パートナーのライフが0の時、または自分のライフコアが25以下の時は使用が出来ない。』
これがアリフレアのスキル。 タッグ専用のスキルだったのか。 そりゃ普通じゃ解放できんな。 そんな優しさに溢れた少女の頭を、俺は静かに撫でてあげた。
「・・・ありがとうな、俺のために。」
「ふん。 スキルを使ったのはエエが、ガキの方が倒れとるやないかい。 ま、ワイには関係の無いことや。 弱いから潰れただけの話や。 弱いやつがどうなろうと、知ったこっちゃないで。 クールタイムに入って、ワイはエンディングに入る。 さぁ、とっとと続きをせいや。」
「・・・あんたには、人の心を痛む気持ちが無いんだな。」
「そんなもん気にしとったら上には立てん。 強いやつはな、弱いやつを踏み台にすることで、立てるんや。 分かったらさっさと・・・」
一瞬にしてその場の空気が変わったことに、フクラーは面を食らっていた。 それもそのはず。 俺はフクラーに対し、人の心を持っていないことに怒りを覚えたからだ。 その怒りを隠さずに表に出しているからだ。
「な、なんや・・・? なんで・・・あんさんのモンスターまで、ワイを睨むんや?」
どうやらそれは、俺のフィールドにいるモンスターにも伝染したようで、マン・イン・ザ・エイリアンが、エンジェルビーが、ダウナーな音楽家が、怒りを露にして、フクラーを見ていたのだ。
「あんたには分からないだろうな。 弱者を、人を踏み台としか思っていないあんたには、俺達の本当の怒りは分からないだろうな!」
「なにを言われようとワイには関係ない! ワイにはワイのやり方があるんや! 弱者のクセにしゃしゃり出てくるからそうなるんやろ? 弱者が強者になるにはな、人を押し退けんといかんじゃい!」
その言葉に、俺の怒りは臨界点を突破した。 そこまでして人を見下したいのかと。 そんなやつが領地を統治しているのかと。
「だったら教えてやるよ。 本当の、真の強さってのはな、金や名誉で成り立つものじゃない。 本当の強者は、自分の命を省みずに他人を、いや、守りたいものの為に、動く心を持つ者の事だ!」
その言葉に反応するかのように、俺のデッキトップが光出した。 どうやら条件は達成したらしい。
「はん! そんな演出したところで、なにも状況は変わらんやろ! あんさんのモンスター全員で攻撃したところで攻撃力が足りんわ! 次にワイのパートナーがエンディングを迎えて、そのガキがドローでけへんのなら、そっちの不戦敗になるんや。 どっちみちワイらの勝ちには変わりないわい! がっはっはっはっはっ!」
「・・・もうあんたらに手番は回らないぜ。 このカードで全てを終わらせてやる。 それが、俺のスキルの真骨頂なんだからな。 俺のオープニング、そして、作られた引き!!」
アリフレアを地面に寝かせた後、俺は自分のスキルで作り上げたカードを引いた。
「前のターンで使用した「領域展開準備」の効果により、手札の「染み渡った晴天」を、そのまま展開する!」
雨は上がり、煌々と光が照らされる俺達のフィールド。 だがそこに見えたのは明るい光だけでなく、怒りが具現化したような陽炎が俺達の周りを包み込んでいた。
「そして領域が「染み渡った晴天」になったことにより、「雨降りにさ迷う少女」は「救われし少女」へと生まれ変わる!」
少女は垂れた髪を後ろに引き、今まで隠していた目で、辺りを見回した。
「俺はコストを8つ支払い、ウエスタンヒーローを召喚!」
召喚されたウエスタンヒーローも後ろの俺とアリフレアを見て、決意を位したように目の前の敵に目をやった。
「そしてこれが全てを終わらせるカード。 コストを10支払い、魔法カード「優しき者への集約」発動!」
『魔法カード:優しき者への集約 レアリティ ミラージュ コスト10
自分フィールドのモンスター1体を選択する。 そのモンスターにフィールドのモンスター、全ての攻撃力を上乗せする。 ただし選択したモンスター以外のモンスターは、コンバットタイム時に、戦闘を行えない。 この効果を使用したターン終了時まで、相手はモンスター効果、インタラプトカード、スキルを使用することが出来ない。』
「フィールドのモンスター、全てやと!?」
「これはあんたがさっきやった事と似ているだろうが、こっちは恨みなんかじゃない。 力を貸したいと願う者の、魂の声だ。 あんたが踏みにじってきた想いを集約させる力だ。 その力を、俺は「救われし少女」を対象に発動する!」
フィールドのモンスター全てと書いてあるが、元々の攻撃力が記載されてない「頂点ゴブリン」や、攻撃力の低い「隠れ蓑スナイパー」と「ばらまきゴブリン」はほとんど戦力にならない。 だから純粋に俺達のモンスターの集約とみていいだろう。
幻影領域や染み渡った晴天の相乗効果も相まって、救われし少女の攻撃力はどんどん上がっていく。 そして最終的に備わった攻撃力は
「攻撃力160やと!?」
そう驚くのも無理はない。 なぜならどんなモンスターを盾にしようと、一撃で倒せる程の攻撃力になっているからだ。 染み渡った晴天の光を背にしているその姿は、とても凛々しい姿になっていた。
「効果によって他のモンスターは攻撃できないが、一撃で倒すには十分だ。 コンバットタイム! 救われし少女で・・・」
「ま、待ていや! そんなん・・・」
「これは制約に基づいたカードバトルだ。 そう言ったのはあんただ。 止めてくれなんて言ったって止める気はないぞ?」
これは向こうの失言だ。 ここで御託を抜かされる位ならとっとと止めを刺した方が楽だ。
「わ、分かった! ワイの負けや! ここでワイは舞台を・・・」
「降ろさせると思ってんのか? そんな泣き言なんか聞きたくないね。」
「な、なら望むものをやる! 金か? 地位か?」
「そんなもの必要ないし、あんたから貰うなんか反吐が出る。」
「な、なら領地をやる! それでどうか・・・」
その辺りで俺の怒りは再度臨界点を突破する。 怒髪天を衝く思いだ。
「あんたはそうやって、自分の行為を踏みにじった人間を無理やり屈服させてきたんだよな? だけど自分がなったらそうやって乞うのか。 あんたは上に立ったんじゃねぇ。 無理やり押し付けただけだ。 それに今までの威厳はどこへ行った? 結局自分だって弱者なんだってことを、自ら露呈してんだぞ? 弱者を作っているのは強者じゃない。 押し潰されそうになっているところを、偶々逃れられただけの弱者なんだ。」
相手の意見なんか全く耳にいれず、俺は喋っているが、俺の怒りはそんなものでは当然収まりが付かない。 付くわけがない。 こいつには一番に怒りに来ていることをまだ吐いていないからだ。
「それにな。 あんたにアリフレアのなにが分かるって言うんだよ。 こんなに必死になっている少女の、本当の心境なんか、あんたにはこれっぽっちも分からないだろうな。 そんな人の心を一切気にしないような人間に、アリフレアを侮辱なんかされたくないね!」
そうして俺は手を上にかざす。
「あ、あんさんにだって人の心が無いんじゃないのか? そんな攻撃をしなくてもワイは倒せる! やから・・・」
「攻撃を止めろってか? あんただって同じことをしてきたんじゃないのか? そうやって止めろと言っても止めなかったんじゃないのか? それにこっちはもうあんたらに手番は渡さないと言ったんだ。 ここで止めるつもりは、毛頭ない!」
そして救われし少女に攻撃をさせるために指を前に出す。
「山札を1枚捨て場に送る! 救われし少女よ! 頂点ゴブリンに攻撃し、民を苦しめている奴の全てを奪え!」
そう言って救われし少女は後光を浴びながら、手から全てのモンスターから授かったエネルギーを手のひらに集めて、そしてその光を頂点ゴブリンに浴びせる。 そして頂点ゴブリンは光の中に消滅していき、フクラーのライフコアも蒸発し、「0」になった。
「クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える。 これで終幕だ。」
アリフレアを抱えながら、そう宣言をするのだった。
これにてタッグ戦は終了です。
体感的にはかなり長く感じました。
アリフレアのスキルの都合を考えると、何回かタッグ戦をしないといけなさそうですが、完全に気が向いたらになりそうです。




