スキルの発動
怨霊が現れたところで手札を再度確認する。 俺の手札には今引いた「アイスドラゴン」、「マジシャンドール」、「ファイアコロシアム」、「カーテン・ザ・マント」の4枚となっている。 どれもこれも決定打にはならない。 しかしライフを削られてしまっている以上、奴からの攻撃は極力避けておかなければならないし、ライフはなるべく温存したい。
「プラポレーションタイム。 俺はコストを6支払い「マジシャンドール」を召喚する。」
『モンスター:マジシャンドール レアリティ 紫 コスト6
種族:人形
「召喚時」 このカード以外の「マジシャンドール」を山札から召喚する。
「破壊時」 捨て場にマジシャンドールが2体になった時、コントローラーは山札から1枚カードを引く。
ATK 10 HP 9』
下から同じ様にマジシャンドール、操り人形が現れる。 そしてその隣にもう一体のマジシャンドールが生まれる。 このカードのありがたいところはこのカードが2枚破壊されてカードを引くことが出来る部分にある。 ドローソースは何よりも重要なのはどのゲームにおいても一緒のことだ。
「更に俺はコストを10支払い、装備「カーテン・ザ・マント」をスティールに装備させる!」
『装備:カーテン・ザ・マント レアリティ 桃色 コスト10
このカードを装備したモンスターは1ターンに1度、自分に受ける攻撃を無効化する。』
「ちっ! また攻撃無効かよ! しつけぇなぁ!」
確かに攻撃を回避することは出来るが、キッキングホークと違うのは、これは装備モンスターを対象に攻撃してきた時にしか発動はせず、他のモンスターが狙われた場合は対処出来ないという点だ。 だがこれで今のところの最大火力となるスティールは守れそうだ。
「コンバットタイム!」
まずは攻撃力をあげる厄介な女帝を崩さなければ。 あいつさえいなくなれば、この力押しの戦いは無くなる。
「俺はスティールで女帝を攻撃する!」
スティールは女帝に向かって攻撃を開始する。 だがそこで思わぬ事態が起きた。 なんと女帝は待機してきたディービーストの首を鞭で縛って引っ張り上げて、自らの盾としたのだ。
「なっ! 女帝にはそんな効果は無い筈だ!」
「くっくっくっ! その反応だと「スキル」について知らないようだなぁ! こいつは俺に有利だぜ!」
「「スキル」?」
お、おいおいそんなの知らないし、貰ってもいないぞ。 この時点であいつと大幅なハンデが生まれてるじゃないか。 ここまで来て無スキルで戦えなんてとんだ無茶を言うもんだ。
「俺のスキルは「我が身を盾に」! これにより俺は自分のフィールドに存在する、最もコストの高いモンスターの攻撃対象を任意のモンスターに変更する事が出来る! 女帝には手出しさせねぇぞ。」
確かにこれでは女帝まで攻撃が届かない。 いくら女帝に攻撃しようとも、他のモンスターで狙いが逸れてしまう。 だがその反面あることに気が付いた。
「その割にはライフコアの減りが凄いことになってるけど?」
そう、他のモンスターが攻撃対象になろうが、差額計算は行われるのだ。 なのでこの時点で相手のライフコアは「63」となっていた。 つまりあのスキルはあくまでも対象を変更するだけであって「ダメージの無効化」には繋がらないというわけだ。
ならばどうするか。 自分のライフコア削らないように女帝で守ってくるか。 それとも女帝を守るためにモンスターと自分のライフコアを削るか。
「俺は1体目のマジシャンドールでもう一度女帝を攻撃!」
当然のように対象を変えてくるか、女帝の体力を減らすか。
「スキル「我が身を盾に」発動! 対象をオックスフォードに変更させる!」
なるほど、それなら対象はオックスフォードになるが、攻撃を受けるのは「保存の鉄檻」になるからダメージも無いという寸法か。
「ならばその鉄檻を破壊してやる! 残ったマジシャンドールと怨霊達でその檻を破壊するんだ!」
そういってモンスター達は檻をバキバキに破壊する。 耐久値的にもちょうど破壊が出来るので、これでオックスフォードは放たれ、女帝の効果を受けることはなくなった。
「はん! 鉄檻を壊したところで、それ以上は攻撃が出来なかったようだな! 俺のライフコアを削れるチャンスだったのによ!」
そう挑発をしてくるが、あのまま女帝を攻撃しようが、結局はスキルの効果によって鉄檻に1度対象を変更されてしまう。 おそらく最初のディービーストは見せしめだったのかもしれない。 まだこちらのライフは半分近く残っているが、使いどころを間違えれば一瞬で持っていかれそうな体力でもある。
「クールタイムに入り、俺はエンディングに移る。」
相手のモンスターは1体しか減らせず、ライフもまだ向こうの方が上。 しかも今の手札じゃ勝ち目はない。 なんとかしないと。
「俺のオープニング! そしてドロー! ・・・ちっ。 このカードじゃ止めをさせねぇじゃねぇか。」
どうやら相手も望んだ手札ではなかったようだ。
「だがそのめんどくさい怨霊を消してやるぜ! コストを6支払い、魔法カード「小規模のつむじ風」発動! これでお前のお墓もおさらばだ!」
『魔法:小規模のつむじ風 レアリティ 水色 コスト6
このカードの発動時、発動したプレイヤーは相手の装備、もしくは領域カードを無条件で破壊する。』
発動した瞬間に俺のフィールドに風が吹き荒れ、それはどんどん強くなり、墓場が全て持ち上げられ、終わった頃には宙に浮いていた墓場は全て下に落ち、墓が破壊されて、それについていた怨霊達も消え去っていった。
「そしてバトルだ! 攻撃力はまだ上げたかったが仕方ねぇ! オックスフォード! その怪盗に引導を渡せ!」
そういってオックスフォードは突進をしてくるが、俺にはカーテン・ザ・マントがある。 どうせ一発じゃ死なないが、攻撃力はオックスフォードの方が上。 ならば使うのはここが最善手だろう。
「カーテン・ザ・マントの効果によりオックスフォードの攻撃を無効化する。」
マントをヒラリと覆し、オックスフォードの攻撃をかわす。 しかし効果は1体のみ。 これ以上は攻撃を凌げない。 おそらく・・・
「ディービースト2体でマジシャンドール2体に攻撃!」
ディービーストが人形に向かって一心不乱に突っかかる。 そして人形は粉々に破壊された。
「マジシャンドールの効果! マジシャンドールが捨て場に2体になった時、カードを山札から1枚引く!」
カードをドローして確認する。 引いたのはリトルデビル。 ここではあまり役には立たないカードとなってしまった。
「そして女帝で小汚ない怪盗に鞭を入れてやれ!」
女帝の鞭にスティールは痛め付けられるが、攻撃力だけでみればスティールの体力を減らすことは出来なかったようだ。 こちらも安心しつつも、ライフコアの残りは「28」。 ライフコアを使えるセーフティラインは刻一刻と迫っている。 召喚をしてこないところを見ると、やはり手札が悪かったようだ。
「ちっ! 削りきれねぇ! クールタイムに入り、エンディングを迎える!」
「俺のオープニング、そしてドロー。」
補充コアは18となるが今の手札では・・・そう思い先程引いたカードを見ると、まるでこの機会を待っていたかのようなカードが来てくれた。
「プラポレーションタイム! 俺はコストを12支払い、魔法カード「リターンアンドドロー」を発動!」
『魔法:リターンアンドドロー レアリティ銀 コスト12
手札のカードを山札に戻してシャッフルし、その後戻した手札の枚数分ドローする。』
ここに来て手札の入れ替えカードが来てくれるとは思わなかった。 これでまだ逆転の機会が作れた。 俺の作ったデッキはまだまだ改良の余地のある未完成なデッキだ。 しかもリターンアンドドローを使った後の3枚のカードを上手くつかいこなせれるか。 それは俺の引き運と来てくれるカードによる。 だがこの場を凌ぐなり、形成を逆転させるなり、勝利への1手は確実に掴みとってみせる。
「山札をシャッフルし、そして山札に入れた3枚分、ドロー!」
相手側 ライフコア 63
従わせし女帝 クーリャンセ
オックスフォード
清司側 ライフコア 28
怪盗ハンドスティール(カーテン・ザ・マント装備)