表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第一の章 今の世界を知る
64/262

勇者のお仕事

「勇者・・・私は逸話物の話だとばかり思っていたのだが。」

「いや、自分は本物の勇者でもないし、末裔と言う訳でもない。 これだけは誤解しないで貰いたい。」


 先に気になる疑問を潰してくれたのはありがたい。 と言うことは俺と同じ転生・転移という線も潰れるな。 こうしてみると俺と同じような雰囲気が全く無いからな。


「じゃあどうしてそんな格好を?」

「端的に言えば、領地統括のためと言えば分かるかな。」


 領地統括。 領主の所有する土地、領地が広ければ広いほど良いのは聞いたが、それを全部一人で見るのは当然不可能。 そこで、実績のある人物を、ある領地の一角を渡し、領地を渡す代わりに領主に見繕う事を約束される。 要はそれで貴族になるという話だと、俺は簡潔に頭の中で整理した。 だって実際にそんなことが行われていたのは俺が前世の地球で産まれる前の話だし、歴史の教科書程度にぼんやりとしか分からない。


「それで勇者様・・・カリストさんのやっていることとなにかご関係が?」

「領地を広げて、貴族となった者がその土地や住民を管理する。 それは当然の摂理だが、見えないところではどうなのかの確認もしなければ、こちらとしても納得は出来ないのだよ。」


 つまり、裏でなにか良からぬ者達と繋がっていないかの調査も兼ねた仕事って事だな。


「それに、この格好はどちらかと言えば仮の姿。 本当のところはもっとみすぼらしい格好をしている。 勇者の言う言葉など意外と聞いてはくれないさ。 そもそもが逸話物だ。 存在している方がおかしいと、自分達も感じている。」


 そう肩を竦めるカリスト。 

「勇者の格好だと目立つっすから、当然の配慮っすね。」

「君ほどではないがね。 そのローブやフードの下に、自分達には見せられない秘密があるのかな?」


 そうファルケンに問うカリスト。 ここからは一手でも間違えれば一瞬で全てが破綻しかねない状態。 カードゲーム的に言えば、次の攻撃で止めをさせる時、相手の手札にインタラプトカードがあるかどうかで勝敗が決まる状況に等しい。 ファルケンも先程までのおちゃらけさなど捨てて、カリストの目を見ていた。


「・・・見せるのはいいっすけど、俺っちは亜人っすよ? 俺っちは自分の街から出て、ここに来るまでにまともに顔は見せてないっすから、本当の意味で正体を出した時にどんな表情をされるか知らないっす。」

「構わない。 見せてはくれないか?」

「・・・その意志、嘘でないことを証明するっす。」


 そうしてフードを取るファルケン。 出てくるのは耳に生えた羽根と鳥類特有の目。 そしてローブも取り腕の羽を露出させる。 ここまで出して目の前の2人は表情を変えずにファルケンを見ていた。


「亜人の存在・・・自分もこの目で何人も見てきたが、彼らはなんの変哲もない生き方をしていた。 つまり我々と同じ様に、人として生きているのに代わりはなかった。 確かにあれでは侮蔑している方がおかしいと感じるのかもしれないな。」

「ファルケンを見て普通にしているなら、ボクも顔を出しても良いってことだよね。」


 そう言ってゼルダも羽織っているローブを外す。


「君は・・・リザードの亜人か。」

「亜人を連れて歩く旅のお方。 これは外交関係に大きく影響されることでしょう。」

「それはどちらの意味で、でしょうか?」

「当然良い意味で、ですよ。」



 一度領主の棲む城を離れ、ドーホース達を預けられる場所を探してから、俺達は近くにあったカフェテリアの屋外の席で、一息ついていた。


「それで、このあとはどうするんですか?」

「そうだなぁ。 ここでの仕事はある意味終わっているからなぁ。」

「ここでしばらくは滞在するつもりではいるが、次の領地に行くまでにまた準備を整えないといけないな。」

「次は、どのような、場所に、あるの、ですか?」

「次は砂に覆われた場所にある街なのだが、そこまでの道のりが険しくてな。 少なくとも1週間分の水が必要になってくるくらいの距離になっている。」


 砂に覆われた・・・砂漠があるのか。 しかし1週間か・・・ 恐らくオアシスのような場所って事だよな。 それはまた過酷な旅になりそうだな。 寒さの次は暑さかい。


「でもそれって1人分での話っすよね? そんな大量の荷物、ドーホース達に乗せられないっすよ? 俺達より先にバテちゃうっす。」

「迂回路はないのか?」

「いや、そもそもその領地事態が砂で覆われている。 根本的に行くのは難しい。 ならある程度は最短距離で目指した方がいいだろう。」


 領地が全部砂漠かよ・・・ 1回の補給じゃあ無理あるんじゃねえか?


「その地図はいつかにもよるんじゃないかな? もしかしたらかなり前の地図ってこともあるし。」

「ふむ。 確かにこの地図の時期によっては、新たな集落などがあるやもしれん。 だが下手に焦らせるのも危険だ。 次の旅のための準備も、怠らないようにしなければな。」

「じゃあ、まずは、なにを買うか、ですね。」


 そう俺達が今後の方針について話し合おうとした時、


「ガンッ」


 という金属がぶつかる音がしたあと、


「うわっ! ジュースが服に! こらガキ! なにしてくれとんねん! 折角の白スーツが台無しやないかい!」


 そう裕福そうな体つきのおっさんが、アリフレアを睨んでいた。 そこには確かにアリフレアが頼んでいたジュースが倒れ、おっさんの白いズボンに、オレンジ色の染みがついてしまっている。


「この服オーダーメイドやねんぞ! どう支払ってくれんねん!」

「え? ええっと・・・」

「ああ、すみません。 こっちの不注意で・・・ アリフレア、謝っておきな。」

「あ・・・ふ、服を汚してしまって、ごめんな・・・」

「そういうのはいらんねん! 弁償しろや、ゆうてんねんけど!?」


 そう言ってアリフレアの胸ぐらを掴むおっさん。 確かに高い物に汚れを付けてしまったのは落ち度かもしれないが、そこまで怒る必要なんて無いだろうし、ましてや相手は高校生以下の子供。 簡単に弁償させようと思っているのはお門違いというものだろう。 そもそも、だ。


「ちょっと待ってくださいよ。 アリフレアは俺達と一緒にベルジアの方を見ていて、ジュースのグラスには手を付けていないんです。 それに勝手にぶつかってきたのはそっちの方でしょ?」


 俺達はベルジアの方を見ながら会話していた上に、なんだったらベルジアが持っているメモ帳を見やすくするために、全員がベルジアに近づいていた位だ。 その間は誰もジュースなどに手は付けていないし、俺達も音がするまではベルジアに集中していたので、全く気が付いていなかった。 だからアリフレアが()()()ジュースを溢すのは、ある意味おかしな話だとも思った。 しかし


「お前には関係ないねん。 このガキと話しとるんやからのぉ。」

「だからって子供相手に胸ぐらを掴むのは、簡単にやってはいけないことでしょう?」

「じゃかましいわ! ケツの青い小僧が! 世の中にはそれ相応の詫びっちゅうもんをせんといかん事があんねん! 対価を取らせることのなにが悪いねん!」

「だからそれがお門違いって話なんですよ。 大体あんたのそのオーダーメイドの服がいくらか知らないけど、そんな金額を持ってるように見えるんですか? その子が。」

「対価が払えんなら、体で払って貰うだけや。」


 ちっ。 埒が明かねぇな。 こういった場合は肩代わりしてやるのが一番だ。 余計なトラブルの火種にならないうちにな。


「分かりましたよ。 でもその子じゃ払えないんで、俺が保護者責任として払いますよ。」


 そう言って出してきたのは手のひら、大きく開いているってことは「5」という数字は表されているだろう。


「500セートってところですか。 それなら・・・」

「5万セートや。」


 俺が言った言葉の100倍がとんできた。


「・・・は!? オーダーメイドの服にそんな金額掛けます?」

「あほ。 これは賠償金も兼ねてや。 さ、出してもらいましょか? 5万セート。」

「そんな法外な金額を払う必要はありませんよ。 セージさん。」


 そう現れたのはカリストだった。


「フクラー殿。 今回はあなたの方から()()()そのジュースがかかるように行ったところを、たまたま見かけました。 あなたのその、他者にたいし自分が優位に立っていることを示すような行為が、悪質になっていることは、カミーユ様に報告済みです。」

「だからなんやっちゅうねん。 ワイはあんたらから領土を譲渡されとんねん。 なにをしようが文句を言われる筋合いはないやろ? それに今は個人的な問題や。 口を挟むなや偽善勇者。」

「そうはいきません。 あなたのそのような行動で、あなたに明け渡した領地の人間がどれだけ苦しんでいるのか、お分かりになられておられるのですか!? あなたは怠惰と傲慢さを働かせ過ぎです!」

「なにがありましたか?」


 そう言って言い揉めていると、警官らしき人物が現れた。これで少しは状況説明させて貰える時間が増えた。


「ええ、実は・・・」

「このガキがワイの服を汚したんや。」


 カリストが言う前にフクラーの方が先に警官に抗議した。 しかしそこは仲介的に話を聞いて・・・


「なるほど、では君は一度来て貰えるかな? なぜこんなことをしたのか、じっくり聞かせて貰おう。」


 そう言ってアリフレアに手を伸ばそうとした警官を、俺は止める。 さすがに我慢ならなかった。


「悪いですが、話ならここで聞いて貰えませんかね? 別に職務質問ならここでも出来るでしょう?」

「彼女はフクラー氏を狙う相手かもしれません。 その辺りもしっかりと・・・」

「じゃあ保護者として俺が証明してやるよ。 ここにいる5人は少なくともこの人が通った姿を目撃していない。 視界の片隅にもだ。 そんな人達がピンポイントでジュースを当てることなんか出来るわけが無いだろ。」

「お前らもグルなら話は別やがな。」


 こいつ、俺達のことをとことん悪者にしたいらしい。 だが引き下がれば奴らの思うつぼ。 ならば


「じゃあ制約カードバトルで決着を付けましょうか。 俺は無罪を、あんたは有罪を証明すればいいんだろ?」

「ふん。 そんなもんでワイが負けると思うなよ? それにそこのガキは当事者やし、一人一人来られるのも面倒や、ワイはこの警官付けるから、そっちも2人でこんかい。」


 アリフレアを巻き込まないようにとつけた制約カードバトルだったが、それが裏目に出たか? この世界でのタッグバトル。 仕様が読みきれない。 だが、やると決めた以上、アリフレアと戦うしかない。 ならば勝ってやる。 アリフレアと共に、この勝負に勝ってやる!

次回、この小説初めてのタッグ戦を行います。


少し目まぐるしい感じになるかもしれませんが、ご容赦のこと、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ