登山開始、中枢
ドーホース達を走らせて数時間、順調だったドーホース達の足が急に落ちた。 そして目の前に見えてきたのは、山の斜面。 つまりここから先が、山の入り口となる。
「ふむ、どうやらここらで休みたいらしい。」
「だな。 山に入ってテントを立てる場所もなく夜を迎えるのは危険だろうし。 下手に歩かせるのも怖い。 アタックを仕掛けるのは明日の明朝からにしよう。」
みんなもその意見に頷き、今回はテントを張ることにした。
「そういえば、準備の荷物の中に色々なものが入ってたっすね。」
アリフレア達が料理の準備をしている間に、ファルケンが荷物の確認をしていると、そう呟いた。
「山登りに必要なものを見繕ってくれたのだろう。 私達が何日でホセラーニに着くか分からないからな。 私達やドーホース達も体力面を考えたものもあるだろう。」
「山の天気は変わりやすいって言ってたからなぁ。 ほら、カッパから防寒着まで色んなのが入ってるぜ。」
俺達男3人は、中身の確認をしていた。 ちなみにその中に缶詰などの日持ちのいい食糧も入っていたので、アリフレアにそれを渡して、調理をしてもらっている。
「師匠の持っていた「カメレオンシーツ」も今回は必要になりそうっすね。」
「山にはどんな猛獣が潜んでいるか未知数だ。 急ぐか留まるかの選択も重要になってくる。 腕を過信したものは死期が早まると聞くからな。」
普通の登山でも危険なのは承知していた。 山肌、土砂崩れ、突風。 危険だらけの旅路なのは元々覚悟の上だ。 だが1つの町に蹲っていては先には進むことも出来ない。
「とにかく山は慎重に行こう。 ドーホース達も体力面以外での事を気に掛けてやらないとな。」
「そうだな。 我々にとって足が無くなってしまうのが、今は痛手になる。」
「俺っちも天候によってはドーホースに乗らせてもらうっすよ。 飛べないのはキツいっすから。」
「その時はドーホース達をゆっくりにさせるよ。 あいつらだって急かす理由はないんだ。 急いで欲しいと言われたのは、イークスの時だけだからな。 今は俺達の所有物になってるし、無理はさせられないさ。」
そう4つの脚を器用に折り畳んで座っているドーホースと最近2匹が大きくなりつつあるヨコッコ達を見ながらそう言った。
「だからドーホース達の動向には一層注意しておこう。 俺達が操るよりも、野生の勘を信じた方が生きやすい。」
「私達は山賊達に注意を払っておこう。 戦闘場面において、不利になる場所もあるだろうからな。」
「俺っちが警戒してるっすよ。 目なら効くんで。」
これがまさしく旅の山場と言えるだろう。 急く必要はない。 それだけに何が起こるかも予測不可能だ。 とにかく生きて、領地を越え、町に着かなければ、目的の達成など程遠くなるのだから。
「さてさて、作戦会議は終わりましたかな?」
「お夕飯の、用意が、出来ました、よ。」
俺達の会話が終わった丁度その時に、アリフレア達が料理を持ってきてくれた。 さすがに見計らってるんじゃないかとは思ったけれど、そんなことをアリフレア達に言ってもしょうがない。 まずは夜を過ごし、明日に向けて体力を温存するのみだ。 そうと決まればと言った具合に俺達は食事を取ることにした。
翌朝、日課のルーティンを終えて、いよいよ山登りの開始だ。
とは言っても、斜面を登るのではなく、ある程度道になっている部分を歩くのと、それでも道がない場合のみ坂を登るといん選択を取っている。 ただしそれはドーホース達の体調や気分にも変わってくる。 もしドーホース達が一歩も動かない場合は、無理に登らせずに、登れそうな位置まで歩かせてから進ませることにしている。
またそのような坂が出てきた場合には、ファルケンに上空を見て貰ってから判断をすることに作戦を立てた。 ここでファルケンのような、上空を見渡せる仲間がいるのが非常にありがたい。 今のところは検知していないが、ゆくゆくは魔法を使えるようにもなるのだろうかと考えつつ、ドーホース達を歩かせる。
今回も俺とアリフレアの乗ったドーホースを先頭に、ゼルダ、ベルジアと続き、ファルケンは後方を見て貰うように頼んだ。 敵は前だけではないのでな。
「そういえば簡易テントなんかを立てる場所も考えないといけないんじゃない? さすがに野ざらしって事はないでしょ?」
ゼルダの意見も最もだ。 いくら山肌に囲まれているとは言え、テントを立てるくらいの横穴は欲しいところだ。 最悪掘るしか無いかもしれないが。
「とりあえずその辺りも探しつつになるか。 どうだ? ドーホース。 なにか感じるか?」
そうドーホースに訪ねて、ドーホースはブルブルと首を横に振った。 どうやら今のところは安心らしい。
ドーホース達が今までよりもゆっくりと走るので、それはそれでやることが無くなってしまう。 そこで俺達は自分達のカードバトルに置ける強化をしようと考えた。
「・・・というわけで、このカードを使用する際に注意するのは、相手のモンスターの体力を見極めてからにしないといけない。 じゃないと不発に終わってしまうからな。」
「なるほど、ただ減らせばいいと言う訳ではないのか。 上手く使うことが出来れば枚数有利も可能か。」
「そういうこった。」
「ご主人様。 これは、どう、読めば、いい、ですか?」
「ん? ああ、これはな・・・」
こうして俺が講師としてみんなに教えているのだ。 もちろん俺だけでは全員を教えきれなかったりするので、最大で2人教え、残りの2人はカードバトルをしてもらっている。
ここで注意するべきは一人一人に教える内容が違うと言うところだ。 一概にデッキの構築や戦い方を教えるのは汎用的でやりやすい。 だがそんなものは初心者から始める人の話だ。 ここにいるメンバーは少なくとも俺よりもこの世界を生きている。 ある程度の戦い方は心得ているだろう。 なのでここで汎用的に教えるのはアリフレアのみとなる。
ちなみにアリフレアにはそれに併用して、計算の仕方や文字の読み方にも力を注いでいる。 アリフレアは今までの経緯を考えると家事は出来ても計算勘定までは教わって貰っていないだろう。 仮に自分でやっていても限界があるのは分かっていた。
「しかしこんなことをするのには、理由があるのだろうな? それなりにカードバトルは出来ているのだから、そこまで要らないのではないのだろうか?」
「カードバトルだって日々進化する。 それに俺がやっている理由はその進化に乗り遅れない事じゃない。 その進化にいかに対応出来るかを教えているんだ。 進化なんて出来なくてもカードバトルは出来る。 だが何が起きたのか分からないまま負けるよりは、少しでも知識を身に付けておいた方がいい。 それに相手はどんな手で来るのかをある程度予測しておけば、カードとコストのタイミングも変わってくる。 常に自分のしたい事が出来るとは、もう思わない方がいい。」
「・・・セイジ。 なにがそこまで貴殿を奮い起たせるのだ?」
「・・・その辺は俺もよく分からない。 ただ、前にいた場所以上に、この世界は理不尽だらけだって思っただけだ。」
「前にいた?」
「今は気にしないでもらえると助かる。 っとと。 ドーホース。 なにか不具合か?」
そんな感じに進み続けて2日が過ぎた。 これと言った悪天候には見回れず、通行量が少ないにしても、商人の馬車とすれ違ったりする時に、少々食糧の買い物をしていく。 商人達も腐らせるよりは買ってもらった方が商売になると感じていたようで、書いてある値段よりも何割引もしてくれた。 勿論カードトレードもしながら、かなり安めに買い物も出来ている。
下を見れば大分高いところまで来たのを伺える程に、町が小さくなっていた。
「随分と、小さく、なっています。」
「それだけ標高が高いんだろうなぁ。」
「だがここはまだ中枢だ。 領地を越えるには、一度頂上まで行かないと越えられないからな。」
「先は長いっすねぇ。」
みんなが呟くのに対して、全く言葉を発することの無かった人物を見ると、何故か身体を震わせていた。
「ゼルダ? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫。 ボクの事は、気にしないで、いいから、行こうか。」
そう言ってドーホースを歩かせるが、この時の時点で、ある程度の対策を考え直さないといけないと後悔したのは、更に登ったところで、ゼルダがドーホースから滑り落ちてからの事だった。
ゼルダの身に一体何が!? 次回を待て!




