問題解決に向けて
その席の方に目を向けると、方や白シャツに青い作業用ズボン。 身体は鍛えているようで、シャツの上からでも分かるくらいに身体が大きい、頭にねじれハチマキをした黒髪の芝生頭の男性。 方や緑のシャツにサロペット、机の上には麦わら帽子がのっている、ウェーブがかったセミロングのオレンジ髪の女性がいた。 というかこの人たち、さっきまで言い争ってた人たちを止めてた人達じゃね?
「あぁ、すまないね。 煩くしてしまったかな?」
「いえ、それば大丈夫なのですが・・・悩み事ならお聞きになりますよ?」
「旅をしている人たちに、私達の話を聞いてもらうのは・・・」
「人間、内に隠すよりも、大っぴらに吐いても構わないのだ。 それに私達も、解決までとはいかなくても、助言なら出来るかもしれない。 当事者以外の者から意見を聞くのも、悪い話ではないと思うぞ?」
そうベルジアに言われて、2人は顔を見合わせた後に、話してみるだけでもと思ったのか、俺達に目を向けてくれた。
「立ち話もなんだからとりあえず座って。」
そう促され、俺達は席に座らさせてもらった。 元々大人数でも大丈夫なような作りにはなっているがそれでもいかんせん狭そうに感じる。
「まずは自己紹介からだね。 僕はロット・エスパーダ。 漁師の息子だけど、料理屋も嗜んでいる。」
「私はタリス・ブロード。 実家で山菜採取、販売をしているわ。」
海と山、それぞれが違う観点の世界。 問題としては大きそうだ。
「それで、悩みというのは?」
切り出したのはベルジア。 次期領主として、解決案と対策をこの場で学ぶつもりなのだろう。 少しでもという意志を感じる。
「この町で採れる物を、名産品にしようという話が前々からあってね。」
「その名産品はどちらが相応しいかっていう言い争いをしているのよ。」
2人ともうんざりとした様子で答えていた。 一体いつからそんなことをしているのかは分からないが、そんなのを四六時中見せられたら嫌にもなるだろう。
「ではその名産品にしようという物を説明してくれないか? それだけ言い争いをしていれば、良いところも悪いところもあるだろうからな。」
ベルジアは中立の立場らしく話を進めていく。 元々そういう才能はあったのかもしれない。 次期領主として、最適な才能だ。 ちなみにしっかりと聞いているのは俺とベルジアだけで、残りの3人は飽きてきてしまったのか、メニューを吟味していた。 まあ変な横槍いれなくて助かるけどさ・・・
「ではまずは僕の方から。 この町の海に面している浅瀬に採れる中型の魚「セレタ」だ。 釣り上げたときに見える青い鱗が鮮やかで、見た目も素晴らしいと言った特徴がある。 味も抜群だ。」
「山菜の方は「サンキ」という小さいながらも栄養価の高い山菜があって、私の方はそれを名産品にしようと躍起になってるの。」
互いが互いの自慢したいの一点張り。 そりゃ平行線になっているのは当たり前の事である。
「じゃあお互いに良いところを言ったので、悪いところを教えて頂けます?」
「サンキはとにかく苦い。 食べ物としてはあまり口に入れたくないくらいには。」
「セレタは毒が凄まじいの。 食べたら腹痛だけでは終わらないわ。 最悪死ぬこともあるの。 よっぽどの事じゃないと死なないんだけどね。」
名産品にしてはデメリットがでかすぎるな。 こう言ってはなんだけれど、どっちもどっちなんじゃないかと思ってしまう。
「この町には他には無いのですか?」
「無いわけではないのですか、やっぱりインパクトの事を考えるとどうしてもね。 という話なんだ。」
ふーむ。 確かに名産品としてはインパクトが欲しい、か。
「それにしてもお互いの事をそれだけ知っているのに、なぜいがみ合っているんだ? いや、正確にはなぜ互いに譲渡しあわない?」
「それは互いに頑固者だから、仕方ないのよねぇ。 ほんと、嫌になっちゃう。」
再度ため息をつくタリスさん。 ここまで来るとよっぽどだよな。
「方や毒の魚、方や苦い山菜・・・か。」
「しかしサンキの栄養価の高さは折り紙付きだし、苦味が抜ければ良いのなら、砂糖水につければ、苦味の成分が溶ける。」
「そうなのよねぇ。 私もセレタの毒の抜き方、この町の数少ない職人に教えてもらったのよねぇ。 でもねぇ・・・」
・・・あれ? そこまで知ってるなら・・・
「あの・・・それならもう解決策、出てません? 要はその方法を教えあえば・・・」
「それが出来ていたら、苦労しないというかなんというか・・・」
「いがみ合っている方の特色を知ってもさぁ・・・」
はぁ、と何度目かのため息をつく2人。 つまり教えたいけれど、互いに頑固親父過ぎて、聞く耳を持たないって訳か。 確かに一筋縄ではいかないか。 うーん・・・
「どうだセイジ? なにかアイデアはあるか?」
まだ考えてるってのにその質問はダメだろベルジア。 でも俺便りなんだろうなぁ。 逆隣の3人は聞く耳持ってないし。
「いっそのこと両方名産品に・・・なんて甘い考えは駄目だろうしなぁ。 でもその方が圧倒的に解決には向くんだよなぁ。 別に名産品が1つだなんてルールなんて無いんだし。」
「2つにしたところで、解毒方法や苦味抜きを知っているのは私達だけよ?」
そこなんだよなぁ。 つまりそれを世に知らしめる為には別の手段が必要になってくるんだよな。
「ご主人様。 ご主人様もお召し上がり下さい。」
ずっと会話をしっぱなしだった俺達に、アリフレアから料理の乗った皿が渡される。 乗っていた料理は魚の香草焼き。 香りが強いが、食欲をそそられる一品だった。
「・・・これか?」
「セイジ?」
「これならもしかしたら、もしかするかもな・・・」
「なにか思い付いたのですか?」
それな乗っかるのかどうかはある意味2人次第という事だが、話をしてみるのは当然だろうな。
「例えばなんですが・・・」
そうして俺は作戦を話し合う。 ところどころで頷き返しながら作戦を練っていく。
「これは確かに上手くいけば・・・」
「後は日時ですね。 俺達は昼にはここを出てしまうので・・・」
「それなら問題はありません。 ある程度時間は必要になりますが、朝の早い時間に会わせることは出来るかと。」
すげぇ無茶苦茶な事を言ってるような気もするけれど、もうやるしかないようだ。 それで丸く収まるなら、それでいいか。
その決行の作戦の事で夜まで費やし、次の日の朝までに、自分達も英気を養うために眠るのだった。
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翌朝、まだ陽が昇る前。 私はある場所から外を見ていた。 そしてその時は突如として訪れた。
「・・・ふーむ。 タリスの奴に、朝早くにここにいてくれと言われたが・・・一体なんなんだ?」
私が見ている窓から現れたのはタリス側の父親の姿。 声がかなり張っているので瞬間で分かった。 そしてそんなタリスの父親に近づいてくる影が一つ。
「・・・あん? なにやってんだ? おめぇ。 こんな時間から?」
その影の人物はロット側の父親だ。 互いに状況が読み込めておらずポカンとしている。
「おめえこそ、この時間はまだ釣ってる筈だろ? なんだってこんなところに?」
「ロットの奴が、「今朝は僕と、僕が連れてきた人とで釣るから、親父は噴水の場所に行け」何て言うからな? 来てみたらお前がいたんだよ。」
「なに? それなら俺もタリスから「頼みごとがあるからそっちに行ってきて、山菜採りは私がやっておくから」って言われたぞ?」
そんなところまでそっくりなのか。 似た者同士とはこの事を言うのだろうな。 さて種明かし、もとい時間稼ぎの為に動こうではないか。
「朝早くからお集まりいただき、ありがとうございます。」
「あん? 誰だ? あんちゃん。」
「私はアルフィスト次期領主のベルジア・アスランです。 今回はお二方の跡継ぎのお二人からのご依頼の元、集まってもらいました。」
「なに? あいつらから?」
「お二方は自分の選んだものが名産品になるべきだ。 そうお考えのようですね? ですが、話は一向に平行線。 跡継ぎの方も随分と頭を抱えております。」
「ふん! そんなもの、あっちが引き下がらないからこうなっとるんだ!」
「な、なにをぉ!? お前のところのものよりも、ずっとこっちの方が見映えが良いんじゃ!」
そこでまた言い争いを始められては始められない。 ここはひとつ話を割り込ませてもらおう。
「お二方のご意見が揃わない。 ならばこの世界のルールで優劣を決めてみてはいかがでしょうか?」
「どういうこったい?」
「カードバトルを行い、勝った方の商品を名産品にする。 それで話を付ければ良いではないですか。」
そういって2人とも、腰のホルスターを見る。 仕事は行ってても、ホルスターは外せなかったようだ。
「・・・いつぶりかな。 自分のカードに身を任せるのは。」
「だが確かに話し合いでは埒が明かん。 これで決めれるのなら。」
「では見届け人は私が行いましょう。 それではバイザーを付けて、構えて!」
「「さぁ、劇場の始まりだ!」」
カードゲームの流れになっていますが、残念ながら次回はカードバトルは行いません。
というよりもその描写は載せない予定です。




