次なる目的地は
あの後に俺達は一度仕切り直しをしに、ドーホース達も一緒に宿に戻った。
「あの様子なら、子供達との別れは惜しんでも、一緒に着いてきてくれると思うよ。 旅の仲間が増えるのは嬉しいじゃないですか。」
食堂に集まっていた俺達は、ゼルダの言い分に頷いていた。 ファルケンの中で悩んでいた理由が、子供達がファルケンのいない間、果たしてしっかりとした人間になれているのだろうかという懸念だったようだが、子供達はファルケンの予想を遥かに越えるくらい逞しく育っているのをファルケン自身も実感したようだ。
更にこのイークスに新たに保育所を設立させると言っていた。 ファルケンから学べないのなら、大人達が学ぶ場を作ってやればいい。 前々からイクシリアさんは語っていた。 何年先になるかまでは見通しがついていないようだが、新たな一歩として進めていくつもりらしい。
「この領地は、さほど問題にはならなそうだ。 ここまで領主がきっちりとしていればな。」
ベルジアの言うように、ここの人達はみんなそれぞれで頑張っているようなので、ベルジアにとってもかなり有意義なものになったことだろう。
「それで、この先は、どうするの、ですか?」
アリフレアは次の事を考えている。 地図的にはこのまま上に行くのが妥当だと考えている。
「領地として行くのならホセラーニだろう。 地図で言えば、この上の位置だ。」
「これ、このまま上に行けるのか?」
「いや、地形的に無理だな。 こことここに別の市街地があるだろう。 そこを経由していかなければ、この山には辿り着けないな。」
そう言ってベルジアが指差した場所には、確かに家作りが何個もある集合地帯だった。
「距離的には?」
「2つともさほど離れてはいないが、行くのならこちらから行く方がいいと思う。」
そう言って地図の左側の方を指していた。 確かによく見れば、左の方が右の領地よりも近そうに見えるし、右の領地はそのまま山に登るルートがあるようにも見えた。
「このくらいなら、ドーホース達で2日位で辿り着けるかな?」
「そうだな。 天候にもよるが、無理をさせなければそのくらいだろう。」
「では、買い物も、それに合わせて、買っていき、ましょうか。」
「人数が増えるから、また量も多くなりそうだな。」
そんな他愛ない話で盛り上がっていた。
「それにしても、これでファルケンがいなくなると思うと、少し寂しい感じがあるのだよね。」
食堂で俺達の食事の準備をしてくれていた店員さんが、俺達に声をかけてくる。
「なんだかすみません。 居所を奪ってしまったようで。」
「いやいや。 彼の居場所を作ってあげられなかった我々にも非はある。 こんなところで埋まる彼ではないからね。 あの翼のように羽ばたいて欲しいとは、なんだかんだで、みんな思っていたことなのさ。」
羽ばたく為の翼・・・か。 折り畳まれては飛べない、行き先が無ければ流されるがままなだけ。 道しるべは必ず必要だ。 その道しるべになれるなら、俺はいくらでもなってやるさ。
「しかしファルケンを仲間として引き連れるのはよいが、少々問題があるな。」
昼食を終え、買い物を始めていると、不意にベルジアがそんなようなことを言ってきた。 買い物はアリフレアとゼルダに任せ、俺達は少し遠目から会話を続ける。
「なんだ? 問題って。」
「移動手段だ。 私のベルロッテを含めてもドーホースは3頭。 そしてドーホースは、ある程度自分の体にあった重量を乗せて行けるが、それ以上はピクリとも動かなくなるのだ。」
「つまり、乗るメンバーを変えるなりしないと、まともに歩いてもくれない、と?」
「そういうことになる。 貴殿の連れていたヨコッコ達が、もう少し成長した姿なら、そのまま乗らせることも出来たのだがな。」
あの小鳥達がそんな人を乗せれるほどに大きくなるのか。 確かにゲームとかだと馬とかの代わりに乗るものもあるけれど。
「じゃあどうするんだ? 流石にドーホースをもう1頭とかは交渉させるものがないぞ?」
「その心配はいらないっすよ。」
俺達がその事に悩んでいると、ファルケンが直接声をかけてきた。
「よぉファルケン。 もう外に出ても大丈夫なのか?」
「反勢力の人間はもういないし、俺っちも品を揃えないとと思ってたんすよ。」
「それで心配がいらないというのは?」
「俺っちはこの腕から生えた羽があるっすから、ドーホース達と並走して飛べるっす。 だからドーホースは必要ないって意味っす。」
「でもそれだと流石に疲れないか?」
「心配してくれるのは嬉しいっすけど、俺っちも腕は鈍らせたくないんすよ。 師匠。」
そのファルケンの言葉に少し違和感を持った。 今の言葉は俺に向けて言ったんだよな?
「なんだ? その師匠ってのは?」
「俺っち、師匠を見て思ったんす。 俺っちは今まで自分の身を守るために、子供達に色々と学ばせていたっす。 だけどいざあの時子供が捕まって、俺っちの命と引き換えに子供を離してやるって言われた時、俺っちは自分の命と天秤にかけてしまったっす。 だけど師匠は、そんな見ず知らずの、ましてやこんな亜人の姿の俺っちも含めて、あいつの魔の手から解放することを選んだっすよね。 自分だってあの時負けていたらどうなっていたのか分からないのに。 そんな自分の命を省みずに俺っち達を救ってくれた師匠を見て、ここの子供達を守りたいと思うなら、あそこまでの覚悟が必要だって。 今の俺っちには、絶対的に欠けているモノだから、その想いを俺っちも知りたい。 そう思ったっすから、師匠の事を「師匠」と呼ぶことにしたんす。」
そう語ってくれたファルケン。 師匠とかって言う柄じゃ無いんだけどなぁ。 そう悩んでいると、隣からベルジアが肩を掴んできた。 え? なに?
「貴殿も中々見る目があるじゃないか。 かくいう私も、彼に悟られて、こうして共に冒険をすることとなった。」
そんな風に自慢げに言ってくる。 冒険って言ったって、最初のアルフィストを出てまだ1ヶ月程度、そこまでの大冒険では無い筈なんだけど? いや、確かに熊やオークとは戦ったし、領地のあちこちで制約カードバトルはしたけれども。
「ご主人様。 お待たせいたしました。」
「いやぁ、ボクらが使ってた布を見せたら、多めにくれるんだもの。 ボク、ちょっと引いちゃったよ。」
買い物を終えたアリフレアとゼルダが戻ってくる。 そしてファルケンと目があった。
「あ、ファルケンじゃないですか。 そっちの準備は終わったの?」
「こんにちは、ファルケンさん。」
「2人とも、こんちわっす。」
挨拶を交わし終えた辺りで、ゼルダを手招きする。
「セージさん、どうしたんです?」
「ゼルダ、これからファルケンは仲間になる。 丁度いい機会だから、自分も亜人だってこと、言っておいて損はないだろ。」
「どうしたんす? 師匠。」
俺達がひっそりと会話しているのが気になったのか、ファルケンが俺達に声をかけてくる。 ま、黙っていてもしょうがないことを明かすだけの事、ごもっていても意味がない。
「ファルケン、あの夜に「連れていけばいいって言ったのは亜人だ」って話はしたよな?」
「うっす。 しっかりと。」
「その亜人が、このゼルダなんだ。」
「手袋とかで見せてはいなかったんだけど、ボクはリザード系統の亜人なんだ。」
そう言ってゼルダは手袋を外していく。 そして鱗で覆われた腕を見せる。 ファルケンも驚きはしたものの、自分と同じ亜人だという事が分かり、少しばかり安堵を浮かべた。
「俺っちだけが、亜人じゃないことは、しっかりと見届けたっす。」
「これから共に冒険をしていくのに、見届けたもなにも無いだろう。 これから嫌でも見続けるのだからな。」
それはそうだろうなと思いながら、俺達は笑いあっていた。
そして俺達が出発をする時になった。 イクシリアさんを始め、色んな人が俺たちを見送りに来たようだ。
「ファルケン! 気を付けてな!」
「今度はちゃんと食べるんだよ!」
「大将! 絶対に帰ってきてね!」
「ありがとうみんな! このファルケン・ライナーの家は、これからもここなんっす! 必ず帰ってくるっすよ!」
みんなから声を掛けられながら俺達はイークスの街を出た。 名残惜しさも感じながらも、俺達は進む事にした。
「本当に良かったのか? 私達についてきて。」
「俺っちだって自分の決めた事にへそは曲げないっすよ。 それに俺っちだって学びたいことはたくさんあるっすから。」
そう思うのならば止めることはしない。 俺達はドーホース達を走らせた。
「さあ行くぜ! 次なる領地、ホセラーニへ!」
というわけで新たな仲間として ファルケン・ライナーが加わりました。
とりあえず当初の仲間人数は達成しました。 これからしばらくは仲間は入れません




