この領地でのルール
「ようやく着いたな。 イークスの中心地に。」
ヨセマから走らせること4日程、凄く濃い旅路ではあったが、ドーホース達の活躍もあって、イークスの領地に入り、そして中心地へと赴く事が出来た。
「こいつらがいなかったら、もっと時間はかかっていたな。 ありがとうよ。」
ドーホース達を誉めてやると、これまたドーホース達も「ブルルッ」と顔を寄せてきた。
「ところでお前達はこれからヨセマに戻るんだろ? 道中は大変なんじゃないか?」
そう聞くと(会話が成立しているのかまでは分からないけれど)ドーホース達はなにか言いたそうに、互いの首もとを見ていた。
「あ。 そういえば。」
そう言ってアリフレアが片方のドーホースの首もと、もっと言えば、その覆われた毛の奥に手を突っ込んで、そしてなにかを取り出した。
「ドーホースさん、達の、中に、これが、入っていて、中を開けようと、思ったら、ドーホースさん、達に、止められていた、んです。」
アリフレアが持っていたのはカプセルに入ったなにかだった。 ドーホース達に止められていたということは、ドーホース達の許可を得なければいけないのか? そう思いながらドーホース達を見ると、止める様子も吠える様子もない。
「開けてもいいのか?」
ドーホース達達は縦に首を振った。 その辺りは分かりやすくて助かる。
イークスの街の座れる場所を確保して、カプセルを開けると、そこに入っていたのは何枚にも折り畳まれた紙と封筒があった。 恐らくは手紙と同盟に関する書名だろうと思い、紙の方を広げていく。
『これを読んでいるということは、イークスの街には着いたようだね。 とは言えこれは着いてから読ませるようにドーホース達に言っておいたから、イークスに着かないと読めないことになるのだがね。
さて、念のため一緒に入れてある封筒の中身を確認して貰いたい。 万が一、どこかに落としてきてしまったことを示唆しないためだ。 それとこのカプセルの裏側にある紋章を見せれば、信用はしてもらえるだろう。 旅の健闘を祈っているよ。
追伸 君達を乗せてきてくれたドーホース達だが、今の私には必要がないので、君達の所で足にしてもらうよう言い聞かせておいた。 だから帰す事はないので、ドーホース達の面倒も見てやってくれ。
ヨセマ領主 ハウリッド・ヨセマージュ』
そう読み終えた後に、同じくカプセルの中に入った封筒の中身を確認して、カプセルの裏側の紋章を見た後に、ドーホース達を見る。 目線が合うと、ドーホース達は俺に頭を委ねてきた。
「お前達の寿命が良く分からないし、連れていけない所も出てくるとは思うけれど・・・ それまではよろしくな。 お前達。」
そう2頭の頭を撫でる。 なんだか忠誠を誓わせてるみたいだな。
「ご主人様。 なんて、書かれて、いたの、ですか?」
「こいつらをよろしく頼むってさ。 またしばらくは一緒にいられるって事だ。」
「本当ですか! 良かったですね!」
そう言ってアリフレアは2頭の間に入って、頭を抱いてやっていた。 俺以上にドーホース達の面倒を見ていたので、離れるのが名残惜しかったのかも知れない。 そう思いながら見ていたら、後ろからつつかれる。 見るとベルジアが乗ってきたドーホースが頭を出していた。 え? お前も撫でて欲しいって事か? 自分でも良く分からないままにそのドーホースも撫でてやった。
「ふむ、私にしか懐かないベルロッテが頭を委ねたか。 余程気に入ったようだぞ。 貴殿の事を。」
「ベルロッテ・・・もしかしてメスか?」
「ああ、だがオスにも負けない知力がある。」
ペット自慢されたようだが、それだけしっかりと飼い慣らしているなら問題ないだろう。 イークスの街並みを見るために俺達は立ち止めていた足を動かすのだった。
イークスは前までの都市の感じとは違い、更に片田舎感が出てきた。 大丈夫かこの国。 発展してないように見えるのは目の錯覚か?
「とりあえずなにから始める? 領主の所に行くにしては早すぎる気がするからな。」
「お宿を、探しましょう。 泊まる場所を、決めておくのは、悪いことでは、ないと思います。」
「お金の管理をしたい。 銀行に寄りたい所だ。」
「そろそろお昼になるし、どこか食べられるお店を見つけない?」
三者三様で意見が分かれる。 最優先事項を領主との接触と考えれば、どれも優先順位は変わらない。 だがここでバラバラに行動されても困る。 1つずつ終わらせるのが妥当だろう。
そんなわけでまずは宿屋を探すことにした。 ドーホース達の事もあるので、小屋も貸している宿があればいいが、都合良くは行かないかもしれない。 そんなわけでまずは手当たり次第に宿屋を当たってみる。 そしてその中の情報で最適な宿に泊まることにしよう。
「お客さん方、移動用の馬をお泊めしたいなら、こちらに馬小屋がありますのでらそちらをご利用ください。」
さっきの俺の意気込みがあっさり砕かれた。 いや、見つける気ではいたものの、1軒目から当たりを引くのは流石にどうかと思う。
「なにを複雑そうな顔をしている。 とりあえず宿を借りるぞ。 二人用の部屋が2つと馬小屋を借りたい。 1泊いくらになる?」
「すみません、旅のお方でしたら、金銭は扱っていないんです。」
「なに? てはどうやってこの宿は成り立っているんだ?」
落胆する俺、内装を見ているゼルダ、宿泊について疑問を持つベルジア。 そんな中で行動に出たのはアリフレア。 ドーホース達にぶら下げていたオークの腸詰めを持ってくる。
「あの、これでは、ダメです、か?」
要は宿泊したい代わりに腸詰めを渡すという物々交換の定義で行くようだ。
「ふむふむ・・・中々に上質な腸詰めですね。 一体どこでこれを?」
「ヨセマの渓谷前に、オークが立ちはだかっていたので、それを討伐して、勿体無いからと調理した腸詰めです。」
俺が説明をし終えると、宿屋の店員は品定めするような目で、その腸詰めを見ていた。 というかそれだけの価値があるのか分からないけれど、4人と3頭分だから相当な金額いってもおかしくはない。 だけど金銭で成り立っていないなら、ああするしかない。
「・・・うん。 これの半分で3泊分としよう。 食事も提供しよう。」
「いいんですか? そんなにも。」
「ここまで上質なものは中々見かけないし、食材ならばこっちとしてもありがたい。 そうだ。 せっかくだからこれを使ってお昼を作ろうと思うんだけど、どうだい?」
確かに今はお昼時、それなら丁度いいだろう。
「ならお願いします。」
「では奥の部屋に案内しますので、どうぞこちらに。 外の馬は、こちらで見ておきますので。」
そう言われて奥に案内され、テーブル席に4人、店員さんも座ったので、5人となった。
「ところでさっき言っていた「金銭は扱っていない」って言うのは?」
「この領地では皆、なにかしら自給自足で動いています。 なので、余程の手持ち無沙汰出なければ金銭は基本的には取らなくても大丈夫なのですよ。」
そう言われて改めて地図を確認した。 イークスは地図的には右下に位置している。 森も海もあり、山や川もある。 これほどまでに自然に恵まれている場所もないだろう。 だからこその自給自足の生活。 この国はそれこそお金の価値が全く分からなかった日本の様をありありと表しているような場所なのだ。
「とは言え完全に扱っていない訳ではないのです。 先程も言われましたように、旅人の方でも持っていない場合も多いので、これ見よがしに「さあ荷物を」とはいきません。 そう言った場合に限り、最低限の金銭で賄っているというわけです。」
「つまりこの領地では、金銭価値はあまり意味を成さないと考えてよろしいのかな?」
「ええ、ですので旅のお方。 街を出歩く際には十分にご注意くださいね。 自給自足とは言え、盗人はわんさかいますから。」
つまり警戒すべきはその盗人と言ったところか。 荷物はこの宿に預けておこう。
「お待たせしました。 今日はいいものを貰ったので、ちょっと頑張っちゃいました。」
料理をしていたであろう人がお盆にのった料理を運んできてくれた。 それは先程渡した腸詰めが丸々1本入っている、ポトフのような煮込み料理だった。 そういえばこういった手の込んだ料理を食べられるのって、アリフレアが頑張ってくれているからなんだよなぁ。 アリフレアと食材に感謝して食べないとな。
「ところで半分で良かったのですか? よろしかったらもっと差し上げたのに。」
「物々交換の時にはなにかと使われると思うので、宿代として貰えれば良いのですよ。 では食べましょうか。」
そう言って店員がスプーンを持ち始めたので、それにならい俺達も食事を取って、領主との会話について考えていた。




