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カードゲーム世界で始める下克上  作者: 風祭 風利
第一の章 今の世界を知る
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勉強のための街散策

 宿屋を一度退出した俺は、街並みを改めて見渡す。


 レンガタイルの床に、こちらもレンガ出てきた家、そして屋台がちらほらと立ち並んでいる。 異世界で見るようなあんな街並みではないけれど、俺はこの雰囲気は好きだ。


「さてと、まずは金勘定からかな? セートっていうのが、この世界での通貨になるんだろうな。 紙幣が多いってことは、昔の日本みたいなやり取りの仕方なんだろうか?」


 小銭すらも今は持っていないので、とりあえずなにか買ってみないことには価値も分からない。 身だしなみも少し整えておきたいな。 改めて思ったけど髪の毛がボサボサなのに気が付いた。 昔は言うほど整えてなかったけれど、異世界にきたので、その辺りも「らしく」しないとと考えていた。


 というわけで、最初に探すのは床屋だと感じ、早速辺りを見渡す。 とはいってもここは異世界。 言語は同じでも文字まで一緒とは限らない。 本当は文字の読み書きなんかも必要なのだが、近くの店の文字を改めて見てみる。


 するとなんということだろうか。 文字の平仮名カタカナを鏡写しにしただけの簡単なしようになっているではないか。 実際にはまだ分からないが、それっぽい所を探しつつ、答え合わせをしていこうと思った。


「いらっしゃい。 すぐに用意できますよ。」


 入った店の女性店員に席へと案内される。 リクライニング機能のついた椅子に、ハサミやくし、洗面器のようなものにドライヤーのようなものがあるので、どうやらここが床屋で間違いないみたいだ。 値段の方も15セートと書いてあった。 おそらく1セート=100円となっているようだ。 難しくなくて本当に助かる。


「どのような髪型に致しましょうか?」

「あー・・・それじゃあ今の髪型のまま、短くした感じにして貰えませんか?」

「分かりました、どのくらい切られますか?」

「大体5センチ程切って貰えれば。」

「かしこまりました。」


 そう言って店員さんはテキパキと髪を切ってくれた。 特に髪型は気にしてはいないが、この長さは少々邪魔になると思ったので、切れて本当に良かった。


「このくらいでよろしいでしょうか?」


 鏡に写った自分を見て、見違えるほどの清潔感が生まれたような気がした。


「ありがとうございます。 これで大丈夫です。 ところで・・・」


 俺は先ほどからガラス越しに見える電子パネルが見えていたので質問をすることにした。


「あれにはなにが書かれてるんですか?」


 そう聞きながら髪の毛をシャンプーされていく。 シャンプーが目に入ると痛いのでめは瞑る派だ。


「あれに書かれているのはカードリストよ。」

「カードリスト?」

「あそこに書いてあるカードを提供すると、その分割引が出来るってシステムなの。 でもやってるお店とそうじゃない店があるから、カードが余ってても、むやみやたらにあげない方がいいわ。」

「なるほど。 ちなみに値引きの値段もお店によってまちまちなんですか?」

「そうよ。 家はカードを提供してくれると、なんと二割引! といった感じで、結局自分の欲しいカードが他者から手に入れば儲けものって感じよ。 それにそう言ったカードは基本的には高レアリティだから中々手に入らなかったりするからねぇ。 」


 それはなんとなく分かる。 強力なカードや、希少価値の高いカードなんかはそもそもが貰えない。 ボックス買いをしてパックを引いて、当たるか当たらないかの確率、運を使い果たすようなレベルのカード達がむしろそんなポンポン出てきてたまるかという話ではあるけれど。


「ありがとうございました。」


 床屋を後にして、さっぱりした髪型で街並みの風を感じる。 代金として50セート払ったら35セート返ってきたので、計算上は間違っていないだろう。 そんなことを考えていたらお腹がなり始めた。 そう言えばこの世界に来てからなにも食べてないことを思いだし、適当な屋台の食べ物を食べようと考えて、大通りに出た。


 噴水広場がロータリーの様になっていて左回りに馬車が何台も動いていた。 交通規制はしっかりと成されているようだ。 そしてこういった場合、異世界ならではの食べ物を食すか、見慣れたものを食すかで迷ってしまう。 そんな中で、ひとつの屋台の気になる光景が目に入った。


「えー、いいじゃん! 1セート位まけてよぉ!」

「そうはいってもなぁ坊よ。 簡単には頷けないぜ?」

「そこをなんとかぁ!」

「だったら、このカードのどれかと交換するって、言ってるだろ?」

「持ってないんだもん! ねぇ! お願い!」


 どうやら手に持っているお金と屋台の商品のお金が合わず値引き交渉をしているようだが、あまり効果は無さそうだ。 コッペパンにサラミとレタスのようなものが挟んである食べ物のようだ。 なんの肉を使っているのかは定かではないが、今はあれでも十分だろう。 俺はその屋台に行って、やり取りをしている遠目から、先ほどの床屋と同じ様にぶら下がっている電子パネルを一通り見てみる。 そこには確かにカード名のようなものが載っていた。 これならどんなカードが欲しいか一発で分かる。


「ん。 このカード名は・・・」


 そのカード名とスノーゴーグルを付けて、そのカードを見てみる。 ・・・うん、名前は一致している。 後は・・・ 俺はスノーゴーグルを外して、その屋台に足を運んだ。


「いらっしゃい。」


 店長と思わしき人物はいかにも普通のおっさんって感じの風貌だった。 まあこのくらいの人の方が変な威圧感無くて接しやすい。


「すみません。 これを頂けますか?」


 俺はショーケースに入っている1つのパンを指差す。


「あいよ。 「ピッキーサラミ盛り」ね。 5セートだよ。」

「それと・・・」


 そう言って俺はデッキホルスターから先程確認したカードを取り出す。


「これを渡せば、割り引いてくれるんですよね?」


『モンスター:ナイトメアナイト レアリティ 桃 コスト11

 このカードが場に存在する限り、相手の召喚コストは+3される。

「破壊時」破壊された次の自分のターン、召喚コストが-2される。

 ATK 7 HP 4』


「お、それそれ。 それが欲しいんだよ。」

「それじゃあ確認をするために、お手に取ってください。」


 これは俺なりの作法で、この世界ではカードトレードは普通に行われると考えている。 そこで真偽が無いかと言うことと、目の前での盗難防止の為に、先にカードを相手に渡して見せるという手法を考えた。


「・・・うむ。 確かに俺の欲しい「ナイトメアナイト」だな。 そんじゃあ二割引いて、4セートで・・・」

「それをこの子の分として買わせてあげてください。」


 いきなりそんなことを言う俺に店長も子供も驚いている。


「・・・いいの? 兄ちゃん。」

「食べたかったんだろ? ほら、お金を渡した渡した。」

「う、うん。 はい、4セート。」

「はいよ。 良かったな、坊。」

「うん! ありがとう! 兄ちゃん!」


 そう言って頭を下げて、子供は走っていった。


「転んで落とさないようになぁ。 さてと、それじゃあ改めて、さっきのやつ、もう1つくれる?」

「粋なことするねぇ。 あんちゃん。 あの子の為に、わざわざ自分の余剰カードを使うなんてよぉ。」

「その分、おっさんの屋台に収益がでたんだから、いいことでしょ?」

「はっはっはっ! こりゃやられたぜ! ほれ! 持っていきな。 景気を良くしてくれたんだ、トッピングにさっぱり味のアカミをプレゼントだ!」


 おっさんは俺のピッキーサラミ盛りに赤い果実のようなものを挟んでくれた。 そして5セートを払ったあと、折角なのでこの街について知っておこうと思った。


「この街って最近出来たって連れてきてくれた商人に聞いたんだけど、ここは前はなんだったの?」

「いや、ここは街としては元々あったんだが、そこまで豊かではなかったなぁ。 半年前までは街を仕切る奴もいねぇ、近くの村の農作物をかっさらって来るのもあの頃は普通だった。 廃れるのは時間の問題だった。 そんな時、ここよりも大きな街からやって来た、今の領主達が、この街を仕切ることになったんだ。 まあ、まだ作りたてだし、街のみんなも思うところはまだまだ課題として残っているがそれでも以前よりは大分ましにはなったもんだ。 さっきみたいに子供がああやってお店でお金を払える程度にはな。」


 今があるのはその領主のお陰ってことか。 しかし話ぶりを聞くと、どうやら完全統括とは行ってはいなさそう。 噴水広場から見える少し高いところにあるあの白塗りの建物にその領主はいることだろう。


「それにさっきも言ったが作りたてだから完全に治安が良くなったわけでは無くてな。 よく言うだろ? 光あるところに闇があるってよ。 そんな感じだぜ。 今のこの街は。 あんちゃんも気を付けな。 宿屋に泊まっているからって、安全とは限らないからな。」

「忠告ありがとう。 それじゃあ、俺は行くよ。」

「食いたくなったらまた寄っていってくれよ!」


 そう言いながら屋台を後にして、貰ったパンを食べる。 あ、このアカミってやつ、トマトの味がする。


 日が傾き、空が茜色に染まり始めた頃、この世界での目的をどうしようかと街並みを歩いていると、どこからか声がしてきた。 辺りを見渡すと、声を出していたのは俺くらいの年齢の2人の少年。 そしてその後ろを歩く長いボサボサ髪の少女だった。 年齢的には中学1年くらいだろうか? 髪はおろか肌や服までボロボロの状態で、足元も良く見たら靴すら履いていない。


「おら、とっとと歩くんだよ! 奴隷として歩かせてるだけありがたいとおもえ!」


 奴隷。 その言葉に耳を傾ける。 この世界で奴隷がどのような扱いになっているのかは知らない。 完全に悪いと言ってしまえばそれまでだし、例外があることも否定できない。 だからこそあの3人の間の関係に割ってはいることは出来ない。


「よし、この辺りでいいだろう。 おい、四つん這いになれ。」


 そう上に伸びた髪の少年が言うと、少女はなにも言わずに四つん這いになる。 そしてその上に先ほどの少年は座る形で彼女の背中に乗った。 あの少女の体では保つのがやっとだろう。


「しっかりと支えてくれよ? お前が倒れたら大変なんだからな。」

「そうそう。 恨むんならここに椅子が1つしかないことを恨みな。」


 その少年達の言動に更に耳を傾ける。 関わらない方が楽だろう。 そう考えているのは俺だけではない。 それなりに遠くにいる大人ですら見てみぬ振りをかましている。


「しっかしどうやって今後やっていくかねぇ。 お小遣いだけじゃやっていけねぇよ。」

「そいつでも利用して稼ぐか? 聞いた話じゃ、そう言う目的で奴隷を売ることもあるらしいぜ?」

「バカ野郎。 こんなみすぼらしい体のやつ、大人が相手すると思うのかよ。」

「そう言いながらみすぼらしいケツを出してやるなよ。」


 そんな会話で2人の少年はギャハハと笑っている。 そして角度的には見えないがスカートを捲られているのだろう。 少女の顔は羞恥で赤くなっている。 本来なら目のやり場に困る場面だろうが、彼らに対する内側から込み上げてくる()()()が彼らの行動を見逃さない。


「おい、見てみろよ。 あっちのおっさん、ちょっとこっちに興味持ったっぽい目付きになってるぜ?」

「ふーん。 利用価値は十分・・・か。」


 そう言うと少女に座っていた少年は立ち上がり、少女の方を向くと


「服を脱げ。」


 そう命令を下した。 当然少女は嫌そうな顔をするが、少年は胸元の布部分を両手で掴んだ。


「この最後の服を無くしたくはないだろ? ずっと惨めな醜態を晒したくなければ自分で脱げ。 出来なきゃ剥ぐぞ。」


 そう言われ、少女はスカートのすそ部分を持ち始め・・・た辺りで我慢の限界が来た。


 この後面倒事になることを知っている上であえて言わせて貰おう。 あんな現場を見せられて、黙って見ていることが我慢ならなかった! 俺は彼らに近づき、椅子に座っている方の少年の肩を持った後、拳をその少年の右頬にぶち当てた。


「ぐあっ!」

「あ!? なんだてめぇ!?」

「お前らの事情なんか本当は知ったこっちゃねぇし、ただの通行人で済ませたかったさ。 だがな、そこまでの事を見せられて、もはや俺は通りすがりすることが出来なくなった!」

「あぁ!? てめぇにゃ関係ねぇことだ。 すっこんでな。」


「その子を解放するのになにが必要だ?」

「あぁ!? 俺達がこいつを手放す? そんなことはしねぇよ。 ただそんなにもこいつを解放したかったら代わりの誰かを連れてこい。 それが条件だ。」


『制約が確定されました。 これより「アリフレア・ナルティの解放」の制約の名の元に、AIフィールドを展開。』


 どこからかその掛け声と共に、辺り一帯がレンガ造りのから電脳的な空間へと様変わりしていった。


「おい! まさか今ので制約が成立したのか!? まあいい! ディスクを構えな!」


 そう言われて俺は左腕を見るといつの間にかフィールドディスクを付けていた。 いつ付けたのかは分からないが、やり方は前の世界と同じなので知っている。 俺はデッキホルスターからデッキを取り出し、山札置きにデッキを入れる。 そしてデッキがシャッフルされる。


「さあ、ゲームの始まりだ!」


 やつの号令と共に、この世界で初めてのカードゲームが幕を開けた。

お金やらカードの価値やらをある程度決めるために書きました。


そして奴隷扱いされている少女を助けるべく、主人公は立ち上がりました。


この話の次は、ようやくバトルへ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 髪を切ったことでさっぱりして、新しい世界で心機一転頑張ろうって気持ちにもなれそう(*'ω'*) 奴隷の少女がずいぶん酷い扱いですね……清司くんが助けてあげたいと思うのも当然! この世界に…
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