ベルジアのここまでの経緯
「で? 何て俺達を追い掛けてきた? というか領地はどうしたんだよ。」
ドーホース達を走らせながら、俺は一番後ろを走っているベルジアに声をかける。 いや、疑問を投げつける。 追い掛けるだけなら距離やドーホースの速さを考えれば分かること。 だがそれでは納得がいかない。 そもそも何故ベルジアが単騎で来たのかも理解しがたいこと。 次期領主がこんなところまで来てよいのだろうか?
「両親からの許可は既に降りている。 貴殿が去り、私は私の行いを振り返った。 そしてその行いを改めて悔いた。 だからこそ私、いや私達はすぐに行動に移した。 貴殿らがいなくなってしまったが、民達へと私は誓った。 「私達は成り上がりの領主、そしてそれに私達は意気揚々とし、この領地に住むもの達を傍観していた。 だからこそ今一度、私達の領地開拓を増やすため、力を貸してもらいたい!」とね。 頭を床につけようとも、私は民達への罵倒を受ける覚悟だった。 だがその後に届いた声、いや、音は拍手だった。 私達は民達に見放されてなどいなかったのだと、あの時ほど実感した覚えはない。」
ベルジアはそう語った。 確かにあそこでサンドイッチ屋をやっていたおっちゃんが言うには、まだ出来て半年だったと聞く。 それがもっと長く続いていたなら、罵詈雑言は避けられなかっただろう。 これが早めに行動を行った結果だろう。
「そして私達はただ闇雲に開拓を進めても意味がないと感じ、外交貿易から始めていくことにした。 そして貴殿らはこの国を回ると聞いていたので、ヨセマで君達の武勇伝を聞きながら、領主と会い、外交を結び、そしてここまで来たという訳だ。」
ここまでの行動力は中々なものだが、それを最初からしておけば、ここまで大事にはならなかったんじゃないか? そう考えては見たが、そもそも俺がああしてアリフレアと共に行った上であのように去らなければここまでにはならなかったと思うし。
「ふーん。 ボクと会う前にそんなことになっていたんだねぇ。」
そう真ん中を走るゼルダが言う。 ゼルダはヨセマで会ったばかりなので、ベルジアの事もだが、アリフレアの事情も知らない。 どう捉えるかは人それぞれだが、ゼルダ自身はあまり気にしていないようだ。
「それで、彼女は誰だ? 君達と同行しているようだが。」
それはベルジアも同じで、ヨセマでの俺の武勇伝は聞いただろうが、ゼルダについては触れていなかった。 まあ自己紹介も兼ねてここで説明しておいてやるか。
「彼女はゼルダ。 フルネームはリーゼルデ・フォン・フランシュシュ。 今は手足を隠しているが、彼女は亜人だ。」
「亜人・・・噂で耳にしていた程度だったが・・・もう少し肉体的に分かりやすいものだと思っていた。」
「ははは。 ボクは確かにあんまり形としては現れてないタイプの亜人だよ。 もちろん逆の人もいたけれど。」
「亜人のみが暮らす国があると聞いたが、それは本当か?」
「本当だよ。 この国から海を渡って来たんだけど、そこには色んな亜人がいてねぇ。」
ベルジアは亜人であるゼルダに興味津々だ。 あそこまで興味をそそられているとなると、余程外には出ていなかったと見える。 自分で井の中の蛙と言っていたが、その言葉はあながち間違ってはなかったみたいだな。
「どう? アリフレア。 まだ怖いか?」
そんなベルジアの様子を、アリフレアはじっと見ていた。 最初に会ったときのベルジアの反応を考えると、アリフレアはあまりいい印象を持ち合わせていない。 それにここでどう見るかはアリフレア自身の問題。 果たしてどう見る?
「ご主人様。 今のベルジアさんなら、大丈夫です。」
そうか、と俺は微笑んだ。 折角仲間になると言うのに、ギスギスした関係では、旅先で不安になる。 それを払拭出来ただけでも、今回は功績だったようだ。
少し広めの場所に差し掛かった所で、ドーホース達を休ませ、俺達も休憩を挟んだ。 とはいえ先ほどの子供達に食料をある程度渡してしまったので、以前よりは食のレパートリー事態は少なくなってしまったが、あの集落の事を考えれば、俺達が我慢するのは造作もない。
「すまないな。 本来なら私の分は用意されていなかっただろうし、私も個人的に食事を取るつもりだったのだが。」
「気にするな。 旅は道連れ世は情けって言葉があってな。 思いやり精神は必要だろ?」
昼ご飯のメインであるオークと香草の炒め物を口にしながら、ベルジアにそう言う。 オーク肉はまだそれなりにあるし、なんだったら腸詰めが残ってる。 渓谷なので、取れる食材は限られるが、生きていけないことはないので、なんとかなるだろう精神で乗りきっているのだ。
「ふむ、私は今まで調理されたものしか目にすることは無かったのだが、こうして調理過程を見た後で食べると、感謝の念が出てくるな。 私達は、恵みを貰えているのだと。」
「大袈裟かも知れないが、そう言うことだな。 旅の途中だからって言うのもあるだろうしな。」
ベルジアも旅先で食べる料理にご満悦のようだ。 それを見ながら俺は前の世界での事を思い返しながら感じる。 人間感動を覚えるのは、その状況に置かれてからなんだろうな、と。
「このままドーホース達になにも無ければ、夜には渓谷を抜けることが出来るだろう。 だがこの先は傾斜の緩急が激しい。 ドーホース達を無理に動かさない方がいいな。」
「OK 俺じゃドーホースの勝手が分からないからな。 使えるやつがいて助かるぜ。」
そうしながらベルジアの言い分に従い、ドーホース達を走らせたり、歩かせたり、時には俺達が先に行ってから、ドーホースを連れてきたりと、様々な方法で渓谷を抜けていった。 ベルジアは夜にはと言ったが天候や道の状態の事もある。 下手に過信はしない方がいいだろう。
「ご主人様、森が、見えてきました。」
アリフレアの言う通り、渓谷の下側で遠くに見えていた森が、大分近くに見えていた。 とはいえまだ下らなければいけないのは確かなので、まだまだ油断はせずに、ドーホース達を操っていた。
「ここを下れば森に入り、そこから少し行けばイークスの領地に入る。 陽も暮れてきた。 急いで下り、森の中で一夜を過ごそう。」
その意見に賛成し、ドーホース達にはもう少し頑張って貰うよう合図する。 それで分かったかのようにドーホース達も急いで、それでいて焦らずに歩を進めていた。
そしてドーホース達の頑張りもあって、イークス近くの森と渓谷の境界の場所に差し掛かった辺りで、ドーホース達は歩みを緩ませる。
「また道端でドーホース達が立ち止まった。 何が来るか分からない。 みんな、警戒は怠るなよ。」
そう俺が合図して、ドーホース達は歩みを止める。 俺達が何が来るかと身構えていると、舗装された道を中心に、両端の森から数人の男が現れる。 手には斧やら棍棒やらが持たれている。
「へっへっへっ。 兄ちゃん達、ここを通りたかったら持ってるもん全部置いてから行きな。 歯向かったら、分かるよなぁ。」
スキンヘッドに刺青の入った男言ったその一言で分かった。 これが本物の山賊か・・・と。
「どうする? セイジ。」
「正直なにも渡したくはないんだけど・・・」
横に来たベルジアに俺はうんざりした様子でそう言い放つ。 どうせ簡単には通らせてはくれないだろうが、念のため聞いておこう。
「なぁ、全部ってのは、このドーホースの事も言ってるのか?」
「当たり前だ! ボケ! 全部っつったら全部だよ! 食糧も! 金も! 服もパンツも全部・・・」
そう吼えていたスキンヘッドが急に喋るのを止めた。 何故ならば目線が明後日の方向に行っていたからだ。 その方向を見ると、その先にはゼルダがいた。 この感覚、昨日も見たぞ?
「・・・中々の上玉じゃねぇか。 おい、この女を置いていけば、服と馬は見逃してやる。 さあ、どうする?」
どうすると言われてもなぁ・・・ゼルダは俺達の仲間だ。 手放すわけ無いだろう? そう思いながらナイフの柄を触ると同時に、ゼルダが前に出た。
「またボクが目当てなの? 全くどうしてこうも悪趣味なのばっかりめにつけられるんだろ?」
そう言って俺とスキンヘッドの間に入るゼルダ。 そしてスキンヘッドにこう言った。
「ボクをものにしたかったら、カードバトルで勝ってからにしてくれる? だけどボクが勝ったら、今後ボクらには、一切の干渉はしないことだね!」
『制約:ゼルダの確保、または一同の不干渉』
そうゼルダが啖呵を切った制約カードバトル。 俺はゼルダを見失う前にAI領域内に飛び込む。 入れたものの2m範囲内にいなかったので、声は届かない。 だがゼルダの瞳は負ける気配の無い瞳だった。 俺はそんなゼルダを、陰ながら応援することにした。
「「さぁ、劇場の開幕だ!」」
次回はゼルダのデッキについて触れていきます。
前回はゼルダのデッキのテーマが決まっていないと言ったのですが、なんとか決まったので、それを主軸に展開していきます。




