平和な道中 夜のルーティン
舗装された道を進みながら、周りを警戒しているものの、これと言って襲われたりはしていない。 こういったものの話だと大抵は盗賊なり野生動物なりが襲ってくるのをよく見ていたが、あまりにも拍子抜けに歩が進むので、むしろ怖くなってきたりしている。
「・・・まあ、こんなものを羽織ってりゃ、野生動物もよっては来ないか。」
そう言って俺は今の装飾品に手を当てる。
俺達が羽織っているのは先程狩った熊の毛皮だ。 剥製とかに使われるものとしては良くある装飾品だ。 とは言ってもそこまで細かくは作れるわけもなく、ただマントのように羽織っているだけだ。
これを羽織ったのには理由がある。 これを羽織っていれば野生動物も盗賊たちも簡単にはよってこないことが分かったのだ。
野生動物は毛皮というだけで怖じ気づくし、盗賊たちはこの毛皮から出ている獣臭を苦手としている。 まあ慣れている盗賊なら多分気にしないだろうが、どうやらこの辺りはそうでもないらしい。 ただアリフレアにまでかけるのはちょっと違ったかもしれない。
「アリフレア、無理に着ること無いんだぞ? ほら、カメレオンシーツだってあるんだ。 そっちを羽織ればアリフレアは見えないし、一石二鳥だろ?」
「それだと、ご主人様も、見えなくなって、しまいます。 ご主人様から、見られなくなるのは、嫌、です。」
別に隣にいるのだから気にすることでは・・・と思っていたら、俺の裾をアリフレアら掴んできたので、からかいや冗談ではないのだろう。 その行動に俺はアリフレアの頭を優しく撫でてやった。 悲しい思いをさせないようにするのが俺の考えなのに、その方向性を見失っては意味がないのだから。
そして夜になり、また進捗状況を改めて確認する。 橋を渡ってから大分舗装された道を進んでいたので恐らく明日にはヨセマの中心街に着けると踏んでいる。 まあこれは予測の範囲の話であるし、何かしらの影響で遅れるかもしれない。 その辺りは臨機応変に変えていくつもりだ。
そして俺達は再度森の中でテントを張っている。 さすがに舗道の真ん中で寝泊まりするわけにもいかないので、仕方の無い措置だ。 盗賊に襲われるわけにもいかないし。
「ご主人様。 夕飯のご用意が出来ました。」
テントを張っている俺とは別で、アリフレアが料理を担っていた。 元々家事をやらされていたとはいえ、この旅路では調理されたものが食べられるのは凄くありがたいことだと実感した。 俺一人だったら多分適当な木の実とかで済ませていただろうし。
さて、夕飯を食べてお腹が満たされたところで、アリフレアと共にAI空間に入っていく。
「ご主人様?」
「これもしっかりと毎日やるようにしていこうと思う。 カードに慣れさせるのと、デッキ編成を常に考えるためにな。」
アリフレアは今までこういったものに触れてこなかったのだろうと思い、まずはカードを見るところからしっかりと教えていこうと思った。
「ご主人様。 色々なカードが、あるので、私1人では、分からないんです。」
「うんうん。 だから俺と一緒に見ていこうな。 夜は長いからな。 ゆっくりと、分からないことはちゃんと俺に聞くんだぞ。」
「は、はい。」
アリフレアはそう言いながら、あたふたしながらも色々と見ている。 こうして森の中とはいえ、ゆったりとした時間が作れているのは、やっぱりこの辺りに盗賊等がいない証拠だ。 動物達も熊の毛皮の効果でやはり来ない。 火を起こしているのも動物避けの為だ。
「ご主人様。 このカード、なのですが・・・」
そう言ってアリフレアは俺に見せてくる。 この領域では共有している人間とはカードやデッキの確認が出来る。 だが、トレードをする場合はそれ相応の対価があるのは、前の街で学んだことだ。 アリフレアが見せてきたカードの中身がこれだ。
『魔法カード:燐粉の踊り レアリティ 桃 コスト10
このカードの使用するモンスターにより効果が変化する。
「妖精族」または「幻想種」の場合、次のターン、カード効果による破壊は無効となり、さらに体力を2倍にする。
その他の種族の場合、次のターンのコンバットタイム時、攻撃及び相手にダメージを与える効果を使用できない。』
このカードは使用するモンスターによって効果が変化するカードだ。 しかしアリフレアら恐らく自分のモンスターをよく知らない。 知っていたらば、このカードの汎用性は十二分分かっていたことだろう。
「今アリフレアのデッキに入っている大半のモンスターカードは種族が妖精になっておると思う。 カードの効果の欄を見てごらん?」
「ええっと・・・あ、確かに、「妖精族」と、書かれているのが、ほとんど、です。」
ほとんどってことは例外があるということか。 でもそれはアリフレアのデッキの話なので、深くは突っ込まないでおこう。
「じゃあやっぱり妖精族を中心としたデッキを組んでみるのが、アリフレアにとっては一番強くなれるんじゃないかな?」
「わ、私が、ご主人様みたいに?」
「俺みたいになれとまでは言わないけれど、アリフレアらしく戦えれば、それでいいんじゃないかなって思ったりはしてるぜ? 筋はいいんだ。 後はアリフレア次第ってところかな?」
「ご主人・・・」
「心配すんな。 アリフレアの身元保証人は俺だ。 手放すつもりなんて無い。 ただアリフレアの思うように生きて貰いたいだけだ。 そこだけは変わってないさ。」
アリフレアに足りないものは人の温もりだと勝手に解釈をしているが、あながち間違いではないかもしれない。 アリフレアは奴隷だった感覚が残っているため、俺に心を許しても他の人にはまだ出来なさそうだ。 そのために必要なことは人としての温もりを与えること。 甘やかすとはまた違うけれど、アリフレアの自由を奪ってやるつもりは毛頭無い。 伸ばす才能を見極めてあげるのも、親代わりとして引き取った俺の役目だ。
「・・・ご主人様。 私の、わがままを、聞いて、頂けますか?」
アリフレアの方から声を掛けてきたこと、そしてお願いをされたことに驚きはしたものの、少しは成長の兆しが見えたということを喜びながら、俺はアリフレアに声をかける。
「どうした? 出来ることならやってあげられるぞ?」
アリフレアの事なのでそんな大層なことは言わないだろうが、念のため注意しておく。 そこで無理難題を押し付けられたら困るのでな。 アリフレアはそんなこと言わないだろうが(2回言ったのに意味はない。)
「その・・・私の・・・隣で・・・一緒に・・・寝てくれません・・・か?」
その願いはあまりにも可愛らしく、そしてアリフレア自身も照れ顔の上目遣いでくるものだから、俺がロリコンだったら一瞬で堕ちていた事だろう。 ドキリとはしたものの、そこは弁えて優しく微笑んだ。
「分かった。 一緒に寝ようか。」
「・・・! ありがとう、ございます・・・!」
そう約束をした後にしばらくAI領域でカードの効果や使い方をアリフレアに教えながら、お互いに眠たくなってきて、そのまま熊の毛皮とカメレオンシーツをお互いに羽織りながら隣り合わせで眠りにつくのだった。
朝起きて、カードのパックを確認する。
『モンスター:バンブーナイト レアリティ 水色 コスト3
「破壊時」バンブーチャイルド 「配置されてから自分のターンで2ターン後、バンブーナイトに進化する。 ATK 3 HP 4」を配置しなおす。
ATK 7 HP 5』
『魔法カード:血縁の盃 レアリティ 銅 コスト11
これを使用したターン、コンバットタイム時、自分フィールドのモンスター2体を選択し、その合計値分の攻撃力を相手モンスター1体とバトルを行う。 ただしこの効果で使用したモンスターは追加攻撃が出来ず、この効果でモンスターを破壊しても、ダメージは入らない。』
『モンスター:雨降りにさ迷う少女 レアリティ 桃 コスト8
種族 妖精族
「召喚時」領域カード「雨降りの路地裏」を発動させる。
「領域カード:雨降りの路地裏 自分フィールドのモンスター1体は相手モンスターの攻撃、効果の対象にならない。 コストを2支払わなければ自分フィールドのモンスターは攻撃が行えない。」
領域カード「染み渡った晴天」が発動した時、このカードは「救われし少女」へと進化する。
「救われし少女 自分よりもレアリティが低いカードを使用する時、そのコストを3減らす。 ATK 9 HP 8」
ATK 4 HP 12』
『装備カード:粘着液付き小型爆弾 レアリティ 桃 コスト6
このカードを装備したモンスターと戦闘を行ったモンスターは、このカードを装備し、エンディング時に破壊される。 クールタイム時、コストを5支払うことでこのカードを破壊する。』
『魔法カード:ハンティングスイッチ レアリティ 紫 コスト 6
このカードを使用した次の自分のターンのオープニング時 前のターンのコンバットタイムで戦闘により破壊されたモンスターを攻撃力、体力を半分にして、自分フィールドに召喚する。』
ふーむ、今日の最初の引きカードはやたらと相手にコストを支払わせる効果が多いな。 カードは未来の暗示とも聞くし・・・いや、それは思い込み過ぎか。
その後もまだまだ神様からのご好意が続いているカードのパックを開封して、ついでに起きてきたアリフレアのカードの開封を確認して、再度ヨセマへと歩を進めるのだった。
「ここが、ヨセマの中心部かぁ。」
お昼過ぎ、歩き続けた俺達の前に、ようやく門のような建造物が現れた。 と言ってもこの時間になるまでずっと歩きっぱなしだったが、ヨセマの領地には元々入っていたが、それでも何を盗まれるでもなく、この中心部へとたどり着いたのだった。
そして俺達が入ろうとした時に馬車が出てくるのが見えたので、俺達は邪魔にならないようにそれを避けて進んだ。 すると
「き、君達! ちょっと待ってくれないかい!?」
先程すれ違った馬車から出てきた1人の男、見るからに商人の人に声をかけられたのだった。
次回からヨセマの街に入ります




