国王自ら
「さぁ、どんどんかかってこい! 腕に自信のあるやつはもういないのか!?」
俺は街にいる人間に対し雄叫びをあげる。 当然最初こそ数人に声を掛けて、カードバトルの誘いをし、そして戦い、今は7連勝中だ。 だがあれだけピリピリした喧騒の中にいる人達にしては呆気なさ過ぎた。 純粋に弱いのだ。 これでは国王のお眼鏡にはかからない。 だったらと、挑発気味に何度か試しているのだ。
「けけっ。 余所者が粋がってんじゃねぇの。 俺がその洗礼をしてやる。」
そしてこう言ってくる輩も大体は弱いのも確認済みだ。 というわけで
「ファルケン。 そいつよろしく。」
「俺っちッスか? もう少し手応えのあるやつと戦いたいッスよぉ。 師匠。」
「そう言うなって。 カレラ兄弟の傘下と出会うまでの辛抱だ。 それにこれは・・・」
「なーにぶつくさ言ってやがる! 俺が手応えのないだと? その吠え面、二度と拝めないようにしてやる!」
そう言って始めて・・・
「ギャン!」
あっさりと負けるのがさっきまでの通例行事だ。
「師匠。 これになんの意味があるんすか? 俺達4人で、ただただ来た人間を相手取ってるだけじゃないッスか。 もっと強い奴が欲しいッス。」
「そのためにやってんだって。 俺達が戦って強さを証明すれば自ずと向こうも実力試しでやってくる。 それに俺はこの戦いにはもう一つ意味合いを持たせてるの。」
「もう一つの意味合い、とは?」
「それは・・・ん。 次の相手はあんたか?」
今度は強気な雰囲気の女性が立っていた。 ふーむ、少しは歯応えのありそうな人が来てくれたかとも思ったけれど、まだ甘いかな。
「今度は私が相手だ! 自分の実力を試してみたい。」
「OK。 じゃあベルジア。 俺は他のみんなに説明しているから、対戦よろしく。」
「任された。 セイジ。」
そうして戦わせている間に他のみんなには今回の意図を説明しておくことにする。
「まず向こうの力が分からない以上、俺達が「一番強い奴を出せ」と言ったところで出してくることはまずない。 向こうだって俺達の手の内が知りたいだろうしな。」
「確かに、戦場において、最初から敵の大将とは会えるわけがないでござる。 下に付く兵達によってそれは固められているからな。 余程の奇襲でない限りは不可能に近いで御座る。」
「零斗さんは分かってるようでなにより。 だからまずは外堀から崩していくんだよ。 まあ街の人達を外堀って言うのはちょっと抵抗があるけどな。」
「つまり相手の戦力をじわりじわりと削っていくって言うことッスか?」
「それは戦場における話だ。 今回の場合は俺達の強さを証明して、興味を示してもらうのさ。」
「興味を? ボクらに?」
先程ファルケンが言った外堀と言っても、今回は敵のアジトというわけでもない。 だから街の人とある程度戦い、勝ち進めていけば、腕試し兼自分達の力を改めて証明させるために出てくると睨んでいる。
「で、もうひとつは、街の人達に活気を取り戻して貰いたいのさ。」
「活気、ですか?」
「アリフレア。 この街を見て、どう思った?」
俺はそうアリフレアに聞いてみる。 なんだかんだで観察力が高いのと、人の気持ちには敏感な子なので、聞いておいて損はない。
「みなさん、人が、信じられない、という、感じです。」
「あー、それはボクも思ってました。 野生の勘? みたいなのが働いてて、警戒心バリバリで、息を殺してるように感じましたよ。」
アリフレアが客観的なら、ゼルダは直感的にか。 まあどっちも間違ってないからいいか。
「だからまずはそこから改善させてやらないとって思ってな。 見てみな。 さっきまで街全体が死にかけていたってのに、熱くなってるあの姿。」
そこにはベルジアとさっきの女性を中心に盛り上がっている人の姿があった。 さっきまでみんなピリピリしていたのに、今ではすっかり大会のような騒ぎだ。
「これで止めだ! 黒猫竜でライフコアに直接攻撃! さらに黒猫竜の効果でライフコアを削る!」
「うっ! つ、強い!」
「クールタイムに入り、私はエンディングを迎える。 これにて終幕だ!」
その掛け声と共に歓声が上がった。
「まだまだ連勝していくぞ! あの連中!」
「なぁ! 今度は俺と戦ってくれよ!」
「馬鹿! お前みたいなデッキで敵う相手じゃないだろ!」
「やってみなきゃ分からねえだろ!? なぁ!」
「では拙者が相手をしよう。 存分に楽しませて貰おうぞ。」
「おうよ!」
そうして零斗さんが行くが、時間的にはそろそろ・・・
「なんだぁ? 強い奴がいるからって来てみれば、ただの青二才じゃねぇか。」
そういって現れた、柄の悪そうな二人組。方や背の高いパンクな身なり、方や太っちょな体格の男。輪郭は違うものの、雰囲気は似ている。
「カ、カレラ兄弟だ。 いよいよあいつらが来たぞ。」
「どっちが勝つか賭けてみるか?」
「どうかなぁ。 でもあの兄ちゃんもやるしなぁ。」
ギャラリーの人達が盛り上がっているので丁度いい。 さすがに向こうから来てくれたなら、ここで見せれば、ある程度は反応してくれるだろう。
「どれだけ僕らに歯向かえるか楽しみだねぇ。 兄さん。」
「けっ。 俺達の実力の足元にも及ばない奴とは手合わせはごめんなんだけどなぁ。 俺らの実力を見て、ビビっちまうんじゃねえか? けっけっけっけっ。」
・・・よし。
「じゃあその実力っての、俺で試そうか。 あんたら、この街で一番強いらしいし。」
「はん。 ほざいてろ。 なんで俺達が強いって言われるか、見せてやるからよ。」
そうしてディスクを構えて、例の掛け声を掛ける。
「「さあ、劇場の幕開けだ!」」
「ドラグニティ・フレンズで攻撃! この攻撃で終わりだ!」
ドラグニティ・フレンズがカレラ兄のライフコアに攻撃を仕掛ける。 そして相手のライフコアが0になるのを確認してから
「クールタイムに入り、俺はエンディングを迎える。 これで終幕だ。」
その一言で全てが終わる。 カレラ兄はあまりにあっさりとした決着で、理解が追い付いていないようだ。
「な、なんだ? いつの間に俺のターンは終わってたんだ? いや、そもそも俺のモンスターは?」
やべぇ、やりすぎて本当に理解が追い付いてないじゃねえか。 というかこいつが本当にこの街で一番強いのか? 国王を例外にしても、なんていうか、歯応えがない。 向こうよりも先に俺の方が失望してるんだが・・・
「し、信じられねぇ・・・瞬殺も瞬殺じゃねえかよ。」
「あ、あんなに弱かったか? 俺達が戦った時はもっと・・・」
「兄さん?」
ギャラリーからの疑問の声に、カレラ兄はハッと我に返る。
「も、もう一度勝負しろ! こんなことで負けるわけがねぇんだ!」
「いや、この街のルールじゃ、同じ人間には一度しか戦えないんだろ? じゃああんたはもう俺と戦えない。 違うか?」
「何かの間違いだ! この俺がこんなにあっさり負けてたまるかよ! 俺はこの街で一番強いんだよ! 他所から来た奴にこんな簡単に負けて、俺の今までの実績がなくなるじゃねぇか! もう一度戦え!」
「いや、もう君は彼と戦えない。 それどころかこの街の一番という称号も奪われた。 これでは名折れもいいところだな。」
そう言ってギャラリーの中から現れたのは1人の青年だった。 ギャラリーが普通に立ち退いているのを考えると、権力的にはかなり上の人物だろう。
「カ、カリオン! 城にいるお前がなんで・・・」
「君から名前を呼び捨てされる筋合いはないね。」
「っ・・・! カリオン・・・様・・・」
見た目的にはカレラ兄と同い年そうだが、立場上では向こうの方が上のようだな。
「それにここに来たのは他でもない。 そちらの旅人達に用がある。」
俺達に・・・か。 どうやら思惑はかかったようだな。
「初めまして旅のお方。 僕はこの街の領主「カリオン・ハーレー」だ。 ここでは話をするのも気が散るだろう。 着いてきてくれたまえ。 僕の城で話そう。」
そこの時点で俺達に断る権利はない。 逆らうことは悪手になるので、そのままカリオンの背中を追いかける事にした。 これからどこまで交渉できるかが勝負だな。




