国王まで何人目?
ハーレーストラの街並みを最初に見た時の感想を述べよう。
なにやらギスギスしていた、という表現が正しいだろうか。 とにかく活気があるだとかそんなものではない。 街の空気が悪いのだ。 自分以外は皆敵だと言わんばかりの空気だ。
「拙者もこの空気は知っている。 訓練所で生きるか死ぬかのギリギリの試合をさせられた時と同じで御座る。 相手の腹を探り、隙があれば攻めいる。 傭兵の基本で御座った。」
つまりそれだけ緊迫状態にあるわけか。 なにも知らない俺達にまでその空気が伝わってくるようだ。
俺達がハーレーストラの街に着いたのは昼前のこと。 検問所も用意されていたし、荷物チェックを受けて、なんの問題もなく入れたと思ったらのこの空気感である。
大人がこんな空気になるのはなんとなく分かるのだが、多分カードゲームを覚えたての子供まで似たり寄ったりな状況とはどう言うことなのだろうか? 不可解ではある。 だが話を安直に聞いてくれそうな雰囲気は毛頭無い。
「おう!? なんだぁ? てめぇ、肩ぶつけやがったな!?」
そんな中で聞こえてきたのは男の声、向かいには子供連れの奥さんがいた。 しかもそこそこ若い。
「ちょっと! 言いがかりは止してよ! 大体こっちは子供を連れて歩いているのよ? そっちが退くのが筋じゃないの!?」
「なにぃ!? 上等だよ! どっちが悪いかこれで決めようじゃねぇか!」
そう言って取り出したのはカード。 つまりカードゲームで決着をつけようというのだ。
「・・・っ! 分かったわ! その勝負受けて立つわ!」
そうして俺達が止める隙もなくカードバトルが始まってしまった。 AI領域が展開されていないので、制約上とはなっていないようだ。
「なんだこの街は・・・肩の接触だけであそこまで過激になるものなのか?」
「それがこの領地の絶対的なルールなんだよ。」
後ろから声をかけられたので振り返ると、そこには前髪を目まで被った1人の少年がいた。
「あんた達ここに来るのは初めて?」
「あ、あぁ。 旅をしているものでな。 それにしてもあんなことが日常茶飯事に起きているのか?」
「うん。 この領地に据え置いている国王様の意向でね。 相手を分からせるのは強き者だけだっていう話だよ。 別に負けても蔑まれる事はないけれど、同じ人物には戦えないことになってる。 それは友人でも家族でもね。」
「勝った方の言うことが正しいって話か。」
「そういうこと。 だからみんな下手に動けないでいるんだ。 それで、気を張り切り過ぎて、些細なことでもあんな感じになるって訳。」
そりゃ気が気でならないだろうな。 あれじゃあ、日中監視されてるようなものじゃんか。 やってらんね。
「それで? 君は説明したから見返りを寄越せと言うのか?」
「別にそんなの望んでない。」
「いいんだぜ? 君は情報をくれた。 対価を支払うのは当然だと思うぜ?」
「そんなことやってるから人の本当の優しさに触れられないんだよ。 でもお兄さんは当然の正しさの中で生きられる人だ。 人間や亜人は下手に知能があるから、騙し、騙されを繰り返す。 人の生死すら簡単にああやって天秤にかける。」
「随分と据わってるものだな。」
俺と似たような目をしているな、この少年。 ものはついでだ。 折角だから彼から情報を引き出すか。
「少年、飯を奢ってやるから、ちょっと情報が欲しいんだが。 いいか?」
「あんまり知らない人にはついていかないって、親から言われてるんだ。」
「それは従わないとな。 悪いな、余計なことを言って。」
「でもあんな親くらいなら、あんたの方が信頼できる。 ついていくよ。」
よくもまあ。 そういうわけで少年を連れて適当な場所で寛ぐ事にした。
「とりあえず、何て呼べばいい?」
「レセック。 本名じゃないけど。」
「じゃあレセック。 いつからこんな調子だ?」
「僕が産まれる前からって親は言ってた。」
レセックの歳的には15年。 多く見積もっても20年近く前からこんな状態だったわけだ。 次世代の子供にまで強要するって、どんな親だよ。 いやここの大人に言えることか。
「でも、ご両親は、心配に、ならないの、ですか?」
「・・・いいんだよ。 親も元々、あんまり仲が良かった訳じゃないし。 育ててくれたのは感謝してるけど、こんな街じゃ、親の教えよりも、自分で見つける方が正しいんだよ。」
「そう、ですか・・・」
「・・・なんで君が悲しそうな顔をするのさ。 気にしてなんか無いんだ。 あんな親。」
アリフレアに指摘されて目を逸らしながら答えるレセック。 というか若干顔が赤くなってるようにも見える。 なんだ? 脈ありか?
「親や街の問題じゃないとなると、問題があるのは領主か、その規則か。 どちらにしろ、この街は今のままじゃ潰れる。」
「それはここの子供はみんな思ってる。 産まれてすぐにこんなことを見せられて、それでも生きなきゃいけないってある意味感情を殺してるんだ。」
この国は、そもそもの問題があるみたいだな。 それならやることは決まったな。
「ねぇ。 ここの国の王様は、隣国に戦争を仕掛けそう、みたいな話は噂でも聞いたことはある?」
「ここの子供達はみんな戦争を仕掛けようとしてるのは言われなくても分かってる。 でもそんなことを聞いてどうするの?」
「あとは、どうやって王様と会うかだな。」
「・・・お兄さん、まさか戦う気?」
「直接じゃないぜ? ここのルールに従うなら、これが一番手っ取り早い。」
そう言って俺はデッキケースを見せる。 向こうだって兵は温存するだろうし、なんだったら俺達みたいなのに構ってる場合じゃない。 だが実力を見せるのは簡単だ。 それに俺達は武力介入する訳じゃないしな。
「これに関しては君は関与しなくていい。 いや、むしろこれは部外者である俺達が一番いい。 他国からの侵略者、みたいな感じで売り出せば、少なくとも目は光らせるだろうな。」
それこそが俺の狙い。 街で勝ちまくっている旅人がいるとなれば、何かしらの方法でコンタクトを取ってくるだろう。 それで国王に会えばそれでいい。 話をするのはそれからでも問題ない。
「危険だと止めてくれても構わないが、俺達はやるぜ。 この国の王様には話をしておきたいこともあるんだよ。」
レセックはあくまでも情報を提供をしてもらっただけの少年だしな。 これ以上俺達に深入りしてもらう必要は・・・
「・・・この街で一番強いのは「カレラ兄弟」だよ。 でもそれにたどり着くまでには、かなりの人とカードバトルをしないといけない。 人海戦術ででもあの二人の傘下にいる人間と戦わないと、あの二人には会えない。」
「そのカレラ兄弟を引きずり出して倒せば、王様が出てくる可能性があるってことか。 でもいいのか? そんなことをベラベラと喋っちゃって。」
「別に国家機密じゃないし、それにお兄さん達に賭けてみたくなったんだ。 この廃れた現状を変えてくれるかもって。」
レセックの瞳は先程までの死にかけていた目ではなく、少しだけ光の入った目になっていた。
「期待はすんなよ? 俺達がやろうとしているのは反逆みたいなものだ。 許されることじゃない。 それでもいいなら待ってな。」
そうして俺達は街へと駆り出した。
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清司達が反逆のために動いてから1時間が経過した頃。
「我が国王カリオン様へ通達致します。」
円卓に座る白髪の青年、カリオン・ハーレーの元に、1人の黒子が降りる。
「なんだ。」
「我が国民に対し、次々とカードバトルを仕掛ける集団が現れたとの報告を。」
「身なりは?」
「集団は6人。 2人はローブをしていたので詳細は把握できていませんが、それ以外なら、男3人。 幼女1人。 荷馬車も所持していました。」
「目的が分かり次第報告しろ。」
そうしてカリオンは黒子を下がらせる。 そして円卓に座り直し、笑みを浮かべた。
「実力者なら是非見てみたいものだな。 この国の過去からの遺産を取り除いてくれる存在になるやもしれん。」
GWが終わった地点で、投稿ペースを落とそうと思います。
理由としましては、単純にネタ詰まりなのと、圧倒的に時間が無いことです。
不定期にはしないように心掛けますが、また毎日投稿出来なくなることをお許しください




