異世界生活2日目
小鳥の囀りが聞こえてきたので、目を開ける。 窓からは日がそろそろ昇りそうかな位のところまで来ている。 時計類が近くに無いので、仕方なくゴーグルを覗くことにした。
「ええっと、今が大体5時半近くか・・・この世界だと早すぎるかな?」
元々の世界ではこれぐらいに起きたらむしろもて余す位だったのだが、この世界ではよく分からない。 ゴーグルを覗いたことで分かったのだが、確かにパックが引けるような状態になっていた。
10パックはあるので、とりあえず引いてみることにした。
『モンスター:ハッキングバグ レアリティ 水色 コスト5
種族:機械種
「破壊時」破壊したモンスターの装備カードとして装備する。 このカードが存在する限り、1ターン毎に攻撃力が5ずつ下がる。
ATK 5 HP 10』
『モンスター:剣騎士 レアリティ 水色 コスト6
種族:衛兵
このモンスターに装備している装備カードを破棄することで、このモンスターの破壊を無効化する。
ATK 7 HP 10』
『魔法:小つむじ風 レアリティ 水色 コスト4
相手の装備カードを1枚破壊する。』
『領域:荒れ狂う海 レアリティ 紫 コスト6
自分のフィールドに「海竜族」または「魚人族」がいる時、そのモンスターの体力を5上げる。 このカードが存在する場合、「海竜族」または「魚人族」への攻撃を1度だけ無効化する。』
『モンスター:狡猾な魔女 レアリティ 桃 コスト9
種族 魔法使い
手札のカードを1枚捨て場に送ることで、捨て場の魔法カードを手札に加える。
ATK 10 HP 7』
最初の5枚はこんな感じになった。 多分この辺りが普通の引き運な感じだろうか? 高いレアリティになればなるほど、中々当たらないのは重々承知だし、バカスカ来られてもそれはそれで困る。
「とりあえず全部引いてから、色々とデッキに手を加えていくか。」
まだ朝早いし、アリフレアが起きる前にちゃんと済ませておこう。
10パックとも引き終えた上でデッキの内容を改修したのがこれになる。
銅レア以下
村の防人×3→ハッキングバグ×3
ウリオーク×2
魔剣の使い手×3
リトルデビル×2
スリープゴード×3
スパイクマン×3→サーカス団のピエロ×3
キッキングホークス
マジシャンドール×2
宮廷の怪人形×3→エイリアン・イン・ザ・マン 酒場の棟梁 アサルトフォード
カーテン・ザ・マント
治癒の盾→紅蓮青龍の剣
薄暗い霊園
銅レア
アイスドラゴン×2→エンジェルビー、エクステンドガーディアン
公平裁判員×2
サイバネット・コンダクター
月明かり満ちる時→表裏一体が織り成す奇跡
インドラの雷
マリオネットヤーン
銀レア
リヴァイアサン
怪盗ハンドスティール
深淵の沼
リターンアンドドロー
大災害→ブリザードコネクト
死水霊
ファイアーコロシアム
金レア
ヤマタノオロチ
コール&レスポンス→希少価値の発掘
まだまだ改修余地はあるけれど、今の現状ではこれで十分だ。 特に金レア枠の「希少価値の発掘」に関しては、前回お世話になった「死水霊」の効果を発揮できる重要なカードだ。 有効活用していきたいところだ。
『魔法カード:希少価値の発掘 レアリティ 金 コスト25
自分フィールド、手札、捨て場にいるモンスターを山札に戻し、捨て場にあるモンスター1体をフィールドに召喚する。 ただしこの効果を使用したモンスターは、エンディング時に捨て場に送られる。』
効果を見た時から、このカードゲームの弱点の補いを出来ていると思った。 このゲームをするにおいて、なにが重要かと言えば、山札の数にあると考えていた。 山札が無くなったらゲームは終了する。 そして俺のデッキにある「マジシャンドール」のように捨て場に送った上でカードを山札から引く方法もある。 つまり山札は常に減っていく訳だ。 これでは使いすぎればすぐに無くなってしまうだろう。 「リターンアンドドロー」のような手札入れ替えなら別だが。
「他にも色々と使えそうなカードはあったけれど、今はこれと言ったコンボが繋がらないから単発でも動けるのを何枚か入れておかないと相手に遅れを取っちゃうや。」
都合のいいカードが来ないことなど前の世界では日常茶飯事。 そんなことで騒いでいるようでは三流以下だ。 まあこの世界でどのくらいの種類のカードがあるか分からない以上、望んでいないカードが来てもしょうがないと思うしかない。
俺はゴーグルを外して窓の方を見る、まだ朝日は昇り始めたばかりのような感じだった。 そこまで時間は経ってはいないようだ。 感覚がよく分からなくなりそうだ。
「・・・ん。 んん。」
ゴーグルを外したタイミングでアリフレアが起きたようだが、布団の中でモゾモゾしていると思ったら、急に布団を投げる勢いで起き上がった。 そして俺の方を見たかと思えば
「ご、ごめんなさい、ご主人様! 私・・・」
「ああ、気にしない気にしない。 もう少しゆっくり起きてもいいから。」
考えてみたらまだ感覚的には朝の6時くらいなのだ。 アリフレアがいくつなのか分からないが、さすがに朝早く起こすのも悪いなと思った。
「それとも元々からこの時間から起きていたのかい?」
「ま、前のご主人様の、お世話を、しなければいけなかった、ので。」
うーむ。 ここまでの奴隷気質だとちょっとやそっとじゃ治らないかな。
「それじゃあ朝御飯を食べに行こうか。 今日はちょっとお偉いさんの所に行くから、身だしなみをしっかりしておこうか。」
「なら、私は、お留守番を、していますね。」
「いやいや、これはアリフレアの事なんだから、アリフレアも一緒に行くんだよ。」
「わ、私がそんな場所に、居ては、不釣り合いです!」
確かにそうと言えばそうなのだが、逆にそうでなければいけない部分もあったりするので、アリフレアには我慢してもらおう。
「とはいえ、どうやって領主と会うか。 あの城のような場所にいるのは間違いないんだろうが・・・」
そこまで簡単には会わせてくれないだろうというのは正直分かっていた。 となるとなにか領主と会う理由が無いといけないだろうか? この領地に来て2日目、そもそも領主だって完全には把握しているとは思わない。 大きくもなく小さくもないこの領地で、果たして浮浪者に対して、話を聞いてくれるだろうか?
「おう、昨日のあんちゃんじゃねぇか。」
声を掛けられたので誰かと思えば昨日の屋台のおじさんだった。 というかいつの間にかその屋台の近くに来ていたのか。 ブラブラしていた筈だったのだが、どうやらどういえ道を通ってもここには辿り着けるようだ。
「お? 昨日は連れていなかったよな? 嬢ちゃん、名前は?」
そう訪ねられてアリフレアは困惑した顔で俺を見てくる。
「大丈夫だよ。 自分のことを教えればいいんだよ。」
「・・・アリフレア・ナルティ。 13歳です。」
そう自己紹介をするアリフレア。 というか13歳って・・・いや、ここは前の世界じゃないからいいか。
「そうかそうか。 俺はここの屋台のおっちゃんだと思ってくれていいぜ。 それにしてもこの子はどうしたんだい? あんちゃんの妹には見えないがね。」
「実はあの後、この子を保護することになりまして。 その事で領主に話をしたいと思ったんですが。」
「そう言うことか。 それならあそこに行けば話は聞いて貰えると思うぜ?」
「え? そんな簡単に会えるんです?」
「まぁ、話は聞いては貰えるぜ。 話は、な。」
なにやら引っ掛かるような言い方をする屋台のおじさん。 いや、その喋り方で大体は察せれた。 とにかく話は聞いて貰えるならば、とりあえずは言ってみる事にしよう。 アリフレアと共にあの城へと向かうことにした。
「それで? 今回は一体なんの相談をしに来たんだ?」
目の前の玉座のような椅子に座っているのは、前髪が少し発達しすぎる感じの髪型をしている、某お茶の間アニメに出てくるやたら自慢してくるキャラクターの髪型を小さくしたような感じだ。 つり目で中肉中背で顔が整っていて、遠目から見てもイケメンな顔をしている。 歳は俺と同等か1つ上なくらいだろう。 次期領主のような感じだが、全面に出ているということは、慣らしのためかもしれない。
「この領地で身よりの無い子供がいるのは、把握しておられますか?」
「あぁ、知っている。 だがそこまで手は回せないぞ? この領地の拡大が先だからな。 そのような子供はその後でも見ることは出来るだろう。」
え? 現状改善じゃなくて、更なる向上の方が先なのか? 他国から嘗められないようにするためだろうが、ちょっと領地の人にドライすぎないか? これが「話は聞いて貰える」って言っていた理由か。
「分かりました。 それではせめてこの子を保護出来る場所へ案内して貰うことは出来ないでしょうか?」
「その娘は随分とお前さんに懐いているように見える。 無理して引き離す事もないだろう。」
知ってるよ。 聞いてみただけだっての。 しかしこうして改めて聞いてみると、本当に解決はして貰えなさそうだ。
「そう仰るのならば援助の程をして貰えはないでしょうか? もちろんそちらの無理の無い範囲で。」
「あまりこちらとしても余裕はない。 これからの事で手一杯なのでな。 お前さんの方でどうにかすれば良いだろう?」
そ、そこまでドライだといくらなんでも怒れてくるぞ。 これは言った方がいいな。
「最低限の支給は貰えるという事でいいのですか?」
「しつこいぞ。 この際ハッキリと言ってやろう。 お前達平民に、我々の資源を今は明け渡せないのだ。 分かったなら今は去るのだ。」
・・・・・・・・・
「分かりましたよ。 そこまで言うなら引き下がりますよ。 ・・・あんたが勝ったらな!」
そう言って俺はディスクを腕にセットしながら、領主に対して宣戦布告をする。 いくら若くて行政の介入が出来ない可能性があるとは言え、ここまで領地の民に対して全くの無関心なのはおろか、自分達の向上の為の犠牲だとなんとも思っていない所に普通に怒りが出てきた。
「なんだ? この私に対して制約をかけた戦いをするつもりか?」
「そうだ。 あんたが勝ったらこの場は下がるし、もうあんたに何も頼んだりもしない。 だがこっちが勝ったら、援助の提示をして貰うぞ。」
「いいだろう。 ふんっ。 こちらとしても忙しさのあまり手が出せていなかったから、丁度いいわ。」
そう言って若き領主もディスクを構える。
『制約:援助資金の提示。』
俺達は展開されたAI領域に入っていく。 俺はスノーゴーグルをはめ、相手も細いタイプのバイザーをセットし、バトルの準備が整う。
「名を聞こう。 制約によるカードバトルの申し出の相手として。 そしてこの場を用意してくれた者として。」
「俺は野村 清司だ。 清司の方が名前な。」
「私はこの領地、アルフィストの次期領主、ベルジア・アスランだ。 この名、覚えておくがいい。」
そうだよな。 戦うのに置いて名前は重要だよな。 お前呼ばわりはさすがに失礼だし。
「さてと、とりあえずこう言っておくかな? 行くぞ! ベルジア!!」
「来い! セイジぃ!」
その掛け声と共に発せられる、前回は唐突だったので言えなかった、前座の台詞がある。
「「さあ、劇場の幕開けだ!」」
今後最後の掛け声は(忘れなければ)カードバトルの始まりの合図として掛けていこうと思っています。




