零斗の想い
俺達は長く感じた橋を渡りきり、いざハーレーストラの別の土地へと踏み入れようとした時、すれ違った人の言っていたように、そこの検査員に止められた。 そこまでは聞いていた通りだし、なんだったら通行料も余裕で払える金額になるだろうと思っていた。(金銭面に関しては俺とベルジアの通帳があれば、支障無い位の金額が銀行には入っている。)
しかしその認識自体が甘かったことを、今この場で悟られた。
「いや、向こう側には誰もいなかった、と言うかこんな検問所のような場所すら無かったんだってば。」
「そんなことがあるものか! 大方不法に橋を渡った苦し紛れの言い訳だろ!」
「だったら誰かしら残しておけよな! 仮にそっちみたいに二人組だったら、両方いなくなるのはおかしいだろうが!」
目の前の検査員二人に止められて、当然のごとく橋を渡るための手形が無いと言うことで、しょっぴかれそうになっていた。
「セイジ。 これ以上は言っても無駄だろう。 大人しく引き下がるんだ。 我々の落ち度であるのは代わりないのだから。」
ベルジアに言われて、これ以上言うのを止めた。 分かっていたこととは言え正直腹の虫は収まっていない。 とはいえこちらとしてもなにも支払わない訳にいかないのが現実。 ベルジアの言うように、落ち度はこちらにあるのだ。 利用金額が超過するくらいは、まあ目を瞑ることにしている。
「そちらの事情を知らなかった我々の責任です。 利用料の2倍の金額で支払うので、今回は・・・」
「おいおい、それだけじゃ足りねぇよ。」
「・・・なに?」
「その料金に更に5倍は支払って貰わないとなぁ。」
つまり2倍の5倍、元々の金額の10倍で支払えと言うのだ。
「それはあまりにも貰いすぎだ! 利用料金を遥かに超えている!」
「別に払わなくたっていいんだぜ? それに等しい代償・・・そこのガキとそっちのローブをしている奴、お前女だな? その2人を置いていけばお前らを通してやる。 どうだ? ハーレーストラに入るには十分だろ?」
その言葉にベルジアは怒りを出していた。 いや、ベルジアだけじゃない。 ファルケンも零斗さんも、勿論俺も目の前の検査員二人に対して怒りを露にしていた。 理不尽さに理不尽を重ねるだけじゃなく、奴らの為にアリフレアとゼルダを差し出せと言ってきたこいつらに心の底からの怒りが沸いてきた。 確かにこれなら橋なんか利用しなくても良かったと思えるくらいに。
「どうした? 差し出しなよ? それとも・・・俺と賭けるか? カードバトルで。」
向こう側から土俵に入ってきた。 これなら勝機はこちらにある。 図体のでかさや力任せの奴の力量は見てきた。 ならばこいつらも、ほぼほぼ対したことはないと、勝手な憶測が立てられる。
「・・・いいぜ。 その賭けに・・・」
「拙者が参ろう。」
最後まで言う前に、零斗さんが口を挟んだ。
「零斗さん?」
「言ったであろう? 先陣はやらせてくれと。 それに拙者とて、自身の利益のために、他を売らせようとするやり方は気に入らないで御座る。」
そうして前に出る零斗さん。 彼だけは冷静になっていた。 ただし顔だけだ。 顔だけが怒らずにいて、オーラやらは滲み出ていた。
「拙者が相手をするで御座る。 どちらが来るで御座るか?」
「あー? 俺が行ってやるよ。 制約は「税の追加」だかんな。 異論はねえだろ?」
「そのような曖昧なものでは分からぬ。 あの少女達が欲しいならそう言えば良かろう?」
さすがは零斗さんだ。 制約の内容を提示するとき、それを完了させるのは「互いの承認を得てから」となる。 つまりこっちが認めなければ、制約としては成立することはないというわけだ。
「・・・ちっ。 ならあの二人でだけでいい。」
「それで良いで御座る。」
『制約内容:アリフレアとゼルダの譲渡』
そしてAI領域が展開される。 俺は邪魔にならないように見えるギリギリのところでAI領域に入っていた。
「「さぁ、劇場の始まりだ!」」
「本当によかったんスか師匠? レートに任せちゃって。」
隣にいたファルケンがそう疑問をぶつけてきた。
「おいおい、一緒に旅をする仲間を信頼してならないでどうするんだよ。 大丈夫だ。 零斗さんはあんな奴らに負けるほど弱くねえよ。 それは戦った俺が保証するさ。 それとも実力が足りてないなんて言わないだろ?」
そう言うとファルケンは零斗さんの方を見てから、苦笑をした。
「そうッスね。 変なことを聞いたみたいッス。」
「疑心暗鬼をするなとは言わないが、さすがに仲間くらいは信頼してやれよな。」
「分かってるッス。 レートは師匠と会う前の俺っちと似てる部分があったッスから、ちょっと心配になったんスよ。」
似ている・・・か。 人を疑う不安定さの事を言っているのか、それとも同じように救ってくれた事を言っているのか。 どちらにしても、零斗さんは俺と出会って、こうして旅をしてくれている。 心の心境がどうなっているのかは零斗さん次第だが・・・ お願いします。 零斗さん。
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賽が投げられ、拙者が「93」、相手が「26」となり、拙者の先攻となった。
「ちっ、ついてねぇなぁ。 折角女が手に入ると思ったのによぉ。」
「・・・汝、国を護るものにしては随分と私欲が交じっているな。 忠誠心の欠片もない。」
「はん。 俺はそもそもこんなところでこんなことをしてたんじゃねぇんだよ。 結局は金のためさ。 遊ぶにも食うにも金がいる。 それの出稼ぎをしているだけだ。 それのなにが悪い。 あんなガキの御守りなんかよりも、離しちまえば、お前もずっと楽だろう?」
「楽・・・で御座るか。」
確かにセイジ殿に会う前の自分の旅は、誰にも憚れる事無く、自由に過ごせた。 町に赴けばその町の流行に触れ、傭兵時代では味わえなかった食事を楽しみ、腰によい布団でも眠れた。
森にいる時でもかなり緊迫とした気分ではあったが、それも傭兵になってからと言うもの、別の命の取り合いに、感激もしたものだ。
しかしそれも最初の半月程だけだった。 後にそれも当たり前のようになっていった。 だからこそそんな時に襲われたのは虚無感。まさしく拙者は何もない「零」のような心になっていた。
そんな時に現れた、拙者と同じ波動を持つもの。 その感覚に震えたと同時に、拙者と同じ境遇にあるのならば、仲間に恵まれているあのときのセイジ殿が自分とは世界が違うように見えた。 拙者とセイジ殿でなにが違うのかそれを問いただしたかったがためのあの行動だ。 あの時はなぜカードバトルを仕掛けたのだろうと後悔をした。 そんなことを仕掛ける必要など無かったのに。
だがそんな拙者を何一つ蹴落とさず、それどころか手を差し伸べてくれた。 そわなセイジの事を馬鹿にされることがなにより今は腹が立っていた。 なので拙者が先陣を切ることにしたのだ。 このような事は日常茶飯事。 拙者の背中をみてそれを学んで欲しいで御座る。
「拙者の開戦、そして山札から引く。 準備期間に入る。 拙者は代償を5つ支払い、「異次元からの渡来者」を召喚する。 手札のカード2枚と、場の「異次元からの渡来者」を糧とし、このカードを代償を支払わずに召喚する。 来るがよい、「孤高の新衛兵」!」
これが拙者のやり方ならば、拙者は甘んじて受け入れよう。 この世界に来た理由は分からないぬならば、手を差し伸べてくれたセイジ殿に感謝するで御座る。 この世で唯一拙者の事を分かってくれる人物。 それがいるだけでも十分な励みとなる。 そしてこれが拙者なりの見せ方で御座る。 見ていて欲しいで御座る。 セイジ殿。
零斗の真の実力 発揮できれば良いのですが




