橋の上で
翌日ハーレーストラの中心部に向かうための橋の元に辿り着いた。
「意外と立派な橋なんだな。」
「それくらいでなければ中央地区に行くことは出来ないであろう。 妥当ではあるで御座る。」
みんなで橋を見て、そこに踏み入れる事にした。 ドーホース達が乗っても、荷車が乗ってもびくともしない。 まあ、これくらいで壊れるような橋ならそもそも建てれる分けないもんな。
こうしてみてみると昔やった某育成ゲームの3Dモデル化したあの橋に似てるなと思ってしまった。 いや、客観的な話は今はどうでもいいのだ。 俺はこの橋について色々と疑問がある。
「これだけの大きな橋、どうやったらオストレリアにバレずに建てられるんだ?」
そう、これだけの橋ならば相手にとってもすぐにバレそうなもの。 だがオストレリアの王子もその全国王も知らなかった。 その方法が分からない。 しかもこれだけ大きい橋ともなれば、年月も計り知れない。 そんなに前の状態から建築されていた筈の橋がなぜ今になって認知されたのか。 そもそも領地的には確かにハーレーストラだから干渉していないとしても、それでも近隣の人間、ましてやあの国境の検査員には見聞きされている可能性がかなり高い筈だ。 では一体どうやって・・・
「師匠。 物凄く険しい顔をしていたッスよ。」
「ん。 すまん。 考え事をしててな。 この橋を渡りきれるかもちょっと怪しくなってきてな。」
「なぜで御座る?」
「あまりにも静か過ぎるんだよ。 ハーレーストラとオストレリアを行き来する橋なんだぜ? すれ違う様子が全くといっていいほどない。 たまたま通りませんでした、にしては静かなんだよ。」
別に橋だから栄えていなくてもおかしくはないのだがせっかくの湖を一望できるこの橋で、果たしてこれほどまでに静かな場所があるだろうか? 1人や2人くらい、橋からの景観を眺めていてもおかしくないと感じるのだが・・・
「言われてみれば、これ程大きな橋を通っている最中に、船の汽笛すらなっていない。 これはもしかすると本当に・・・?」
「なんだかボクも怖くなってきましたよ。 ボク達の知らないところで、なにかが始まってるんじゃないかって思えるほどに。」
「ご主人、様・・・」
みなその不気味さを感じ取ったようで、一気に空気が重たくなる。 ドーホース達が走る音と荷車のタイヤの音のみが反響する。
そんな静寂に、「ガタン」という荷物の音に俺達は我に返った。
「・・・ま、そんなことは、今は気にしなくても良いのではないか? 我々の旅はあくまでも同盟の話をしに行くこと。 国家の戦争事情にまでは付き合えまいてまいて。」
「そうだね。 争いには巻き込まれたくないよね。」
それは俺も思っていた事だ。 一応俺達は一般人ではあるのだから、戦う力は持ってないのだ。 そうなる前に逃げるしか無いわけだがな。
「どこまで続いてるんスかね? この橋。」
ドーホース達が走るのを緩めたので、休憩時間だと示唆されたので、俺達は誰もいない橋のど真ん中で昼を満喫していた。 そんな時にファルケンが疑問を口にしたのだった。
「少なくともハーレーストラの近くには行くだろう。 だが中心部に行くのか、それともこの湖の端のところに行くのか。 それによっては我々は色々と手続きが必要になるだろう。」
手続きか。 海外旅行みたいなものだから、それの手続きと似たようなものかな? まあ前世でも日本以外の国に行ったことはないけれど。
「ご主人様。 お食事が、出来ました。」
「いやぁ、最高のロケーションだよね。 ボク、一度はこうして湖を見ながら食事を取るのが夢だったんだぁ。」
「船旅で海を見てきたから、俺は感動が薄れているがな。 でも船一つないから確かに綺麗ではあるよなぁ。」
自分でも夢もロマンもないことを言っているのは自覚しているが、これから色んな景色を見るので、そう言わざるを得ないのかもしれない。
そんなことを思っていたら向こう側からなにかが来るのが見えた。 こちらと同じようなドーホースかと思ったが、どうやら普通の馬らしい。 後ろには荷車があるので、多分商人か王族の馬車だろうと思いながら、俺達は邪魔にならないように端によって、やり過ごすことにした。
そして向こう側から来る馬車を横目に食事をしていて、そのまま馬車は通りすぎる・・・かと思いきや、その馬車が止まった音がした。 何事かと思ったのだが、そこで馬車から一人の男性が降りてきて、こちらに歩み寄ってきた。
「なんでしょうか? ここで食事をしてはいけないなら、すぐに退きますが?」
「いや、それは気にしてはいない。 いないのだが・・・」
そう俺達よりも、アリフレアが作った料理を見ていた。
「失礼を承知でお願いがある。 我々に、食糧を分けてくれないか?」
そう言ってきた。 後ろの馬車はなにを積んでいるのか分からないが、いきなり話しかけられて、「はいどうぞ」と言えるわけではない。
「・・・あの馬車には食糧を積んでいないのですか?」
「・・・いや、ちゃんと向こうに行くまでの荷物は全部積んでいたんだ。 ちゃんとね。」
「なら我々に頼る必要はないのでは? 無くしたり落としてしまったというのならばそちらの責任です。 我々には関係の無いことです。」
ちょっと強く突っぱねてはみているものの、正直罪悪感は凄い。 どう思われようと関係ないだとかそう言ったちゃちなものじゃない。 これならやらない方がまだましだ。 しかしここから先は切り離していかなければならない部分も出てくることだろう。 今はそれの予行演習だ。 そう思う他ない。
「取られてしまったんだよ。 この橋の検査員に。」
「・・・この橋の? こちら側から来た時は誰もいませんでしたよ?」
まさか嘘でも言っているのか? それなら尚更渡すわけにも
「私はハーレーストラを横断するためにこの橋を利用することにしたのだが、そこで検査員と制約上のカードバトルを行ってね。 それで、食糧を没収されてしまったんだ。 商人だというのに、情けない話さ。」
「・・・ちょっと待ってください。 横断のために橋を使うだけでそこまでの事をしますか?」
「通行料を払って行くつもりだったのに、戯れのつもりか知らないけれど、制約上で戦わされてね。 制約の内容を「通行税の追加」としか言われなかったので、てっきり負けても過重料金になるだけだろうと思っていたから、まさか食糧を取られるとは思ってもみなかったんだ。」
「・・・少し馬車の中の確認をしても良いで御座るか?」
話を聞いていた零斗さんが席を立ってそう言った。
「構いませんよ。」
目の前の商人を名乗る男も特に嫌がることもなく零斗さんを通した。 その時に零斗さんが俺とすれ違った時に
『セイジ殿。 どうやらこの者は嘘をついてはいないで御座る。 これは拙者の観察によるもので御座るが、少なくとも後ろめたいものがある人間はここまであっさりと自分の個人情報である荷馬車の中身を見せないで御座る。 今言ったことは、真実の可能性が高いで御座る。』
そう日本語でいいながら向こうの荷馬車を確認した。 そして数分後に戻ってくる。
「確かに食糧以外のものは取られていないようで御座ったな。 それとこれも見つけたで御座るが・・・」
零斗さんが持ってきた紙には、なにやらスタンプのようなものが押されているものだった。
「それは通行手形です。 ここと向こうを結ぶための。」
「え? そんなの貰ってない、というか誰もいなかったぜ?」
「・・・それも彼らの狙いでしょう。 おそらく通行手形が無いことをいいことにあれやこれやと追加で付け加えるつもりです。 ハーレーストラの人間は何故かそうして生きていますから。 カードゲームは流行っているんですがね。」
「・・・分かった。 あんたの言う言葉を信じよう。 アリフレア、少しだけ分けてやってくれないか? なるべく日持ちするやつを持ってきてくれ。」
「はい。」
そう言ってアリフレアを荷馬車に送った。
「ありがとうございます。 私は狩りの素質がないので、食糧を取るのは大変になりそうでした。」
「ところで一つ聞きたいのですが。」
「なんでしょうか?」
「さっき、ハーレーストラではカードゲームが流行っているって言いましたよね? それって普通の遊びとしてですか?」
そう聞くと商人は項垂れてしまった。 なるほど、遊びでやってないって事ね。
「それではお気をつけて。」
「そちらも、お気をつけて。」
そうして商人と別れた俺達は冷めた食事を温め直しながら、先ほどの会話について模索した。
「どうやら、最初の修羅場に来たみたいだな。」
「ボク達は下手に顔や身体を見せられないね。」
「最悪俺っち達は空を飛んで行くッスよ。」
「最悪の手立てではあるな。 それよりもこの橋を渡った後の検査員だが・・・」
「その話、拙者が行っても良いで御座るか?」
「零斗さんが?」
「確かに拙者はハーレーストラを通ったで御座るが、この橋を渡ってはいないし、ましてや事情に関しては中心部には行っていないので分からぬ。 この目でなにが起きているのか、確かめたいので御座る。」
零斗さんは俺達のパーティーに加わって日が浅い。 カードゲームで戦ったのも俺一人だから、全貌が分からない。 けれど
「分かりました。 次はお願いしますね。」
俺は託すことにした。 他のみんなの意見も聞こうと思ったが、なにも言わずに頷いていたので、了承は得られた。 食事を終えたら改めて出発し、そしてハーレーストラがどんな場所なのか見極めてやる。




