神様との確認の会話
アリフレアとの食事を終えて、お風呂にも入れさせた後、夜も深まってきたので、アリフレアをベッドで寝かし付けた。
アリフレアはそれまでどのように食事を明け渡されていたのか分からないが、とにかく食欲旺盛、元より空腹からくる本能のままにテーブルの料理を食べていた。 そんな様子にアリフレアは時々俺の方を見てくるが、恐らく俺より食べていることを怒られるかもと思っているようだったので、「気にせず食べな。」と一言添えてあげた。 食事の作法も最低限教えていくつもりだ。 いくらなんでも使い方がなっていなかったので、せっかくの洋服が汚れてしまっていたからだ。 食べ終わった時、アリフレアは自分の惨状を見て青ざめていたが、そんなことを怒るような俺ではないので、そのままお風呂に連れていった。
連れていったと言っても、部屋の個室にあったユニットバスまで行って体を洗ってあげた。
そりゃ別に俺が洗ってあげる必要は無いが、万が一の事を考えて、今回だけの特別措置だ。 疚しい気持ちがあってやった訳じゃない。 断じて誓う。
そしてタオルで体を拭いて、部屋着を着せた後、アリフレアは眠たそうにしていたのでベッドに入れた。
お風呂の時も寝かし付ける時もそうだったのだが、アリフレアは全部が終わってから食事や睡眠を取っていたようで、先に済ますことは許されていなかったと言っていた。 寝かし付ける時にその事については宥めてあげた。 もう我慢することは無いのだと何度も何度も言い聞かせ、アリフレアはようやく安心して、眠りに付いた。 そして今に至る訳だ。
俺もこのまま寝てしまいたい所だ。 実際に今日1日だけでかなりの事を行ったので、頭をスッキリさせるために、睡眠を取りたかったが、まだやり残していることがあるので、スノーゴーグルを着けることにした。 そしてこう念じた。
『神様、聞こえたり見えたりしているのならば、どうか俺と話をさせてください。』
そう願って30秒くらいに女神様が現れる。 今度は俺をこの世界に送ってくれた老神様も一緒だ。
「清司様。 どのようなご用件でしょうか?」
「とりあえず色々と話したいんだけど、俺が思ったことを答えてほしい。」
「ホッホッホッ。 神様と話をしたいとは、余程思うところがありそうじゃの。」
神様にはお見通しなのは重々承知をしていることだが、それでも聞きたいことは山ほどあるのだ。 夜が明けようが関係ない。 今は聞くことを聞かなければいけないのだ。
「女神様がくれた「死水霊」。 あんな効果だったのなら不鮮明にしないで頂けますか? 引いた時、手元に残しておくか迷いましたよ。 後発動条件が今の俺では厳しすぎます。 スキルがあったから今回は出来ましたが、次同じことが出来るとは思えません。」
「それに関しては、あなたなら使いこなせると思っていたので、そのカードをお渡し致しました。 もちろん根拠ならありますよ。 あなたは今隣で寝ている少女を助けることは「視」えていましたから。」
見えていたってどうやって・・・ってそうか。 神様なら未来視位は出来るのかな。
「まあそうですね。 確かに今のデッキの内容では「死水霊」の本領は発揮できませんが、ちゃんと普通のパックからも復活用のカードも存在しますよ。 レアリティはその分上がりますが。」
むしろ無かったら死水霊を普通に除外してるところだよ。 カードに関してはとりあえずはいい。 問題なのは・・・
「ねぇ、この世界には奴隷制度とかってあるの?」
問題としてはそっちの方が重要だった。 地球では当然のごとく奴隷なんてものは禁止になっている。 ここは異世界なのでそれは通用しないのかもと思ったので聞いてみることにした。 もしあったとしても実際にアリフレアの状況は見たくはなかったので、どっちみち助けることには代わり無かったが。
「・・・人間に対しては、例外を除いて禁止されています。 その例外と言うのは犯罪者、何らかの重い罪を課せられた者にのみ、罪人奴隷として適応されます。」
「・・・なにか引っ掛かる言い方ですね。」
「お主は旅に出るつもりはあるかの?」
露骨に話を別方向に持っていったなこの神様。 神が隠し事ってどうなんだろとは思ったけれど、アリフレアの事はまた考えよう。
「今のところは考えてはいません。 少しの間は今の領地で過ごすつもりです。」
「そうですか。 それならば・・・」
「いや、説明はしておくべきだぞ。 心変わりがあるかもしれないからの。」
俺と神様達の間で会話が噛み合っていない。 領地に残ることと、なにかを説明するのに、因果関係があるのだろうか?
「清司様。 この世界はまだ不安定な作りになっていますが、その中でも貧富の差は生まれ、カードバトルにおいても、制約に勝った者のみに全ての権限が渡される。 この世界はそんな世界なのです。」
「よくそんな世界で成立してますね。 1つの国の中での話ならともかく、絶対に行政バランスとか考えてないでしょ?」
「ええ、それだけこの世界で生き残る事は簡単ではないのです。 なので、不自由なく生きるのであれば、当然領地に残ることをオススメしたいところです。 領地同士が繋がっているわけではないので、森に行けば野性動物や盗賊もいます。 非力な清司様では、負けてしまいます。」
色々と突っ込みたいことはあったけれど、気にし始めたらそれこそ負けだ。 話を続けることにする。
「じゃあ整うまでは外に出るのはオススメしないってことか?」
「そうじゃな。 しかしお主にはその領地は窮屈になるやもしれんな。」
「留まらせたいのか旅をさせたいのかどっちなんですか。」
「お主の行き先が気紛れなように、神の思いも気紛れなのじゃよ。 せっかくじゃ、寝てる間は稽古がつけれるようにしておこうかの。 実際に肉体には影響は及ばんから、心得程度になるがの。」
「今はそれだけでも十分ですよ。 正直最初の拳一発でも結構痛かったですし。」
あの時は頭に血が上っていたのと、すぐにカードバトルのAI領域に入ったので感覚が無かったのだが、改めて考えると、相当無茶をしでかした気がしなくもなかった。
「明日は領主のもとに行かれるのですね。」
「そこまで分かっちゃいますか。 アリフレアの事で少し相談をと思いましてね。 アポイントを取ってないので通されるかは定かでは無いですが。」
「何事もやることが大事じゃぞ。 お主なら大丈夫じゃと思ってはおるからの。」
神様直々に太鼓判を推されるとは思わなかったが、期待は裏切らないようにしないとな。
「そろそろ俺も睡眠を取りますよ。 長いことスノーゴーグルをかけているのも目に悪いですし。」
「では終わりかけに1つ伝えておきましょう。」
なんだろう? まだなにかあったっけ?
「この世界で次の日、正確には午前の5時になると、必ずパックがAI領域内で貰え、それを開封することが出来ます。 もちろん開封しないで貯めることも出来ますよ。」
へぇ、つまり1日の運試しのようなものが出来るのか。 それにカードも増える可能性があるから、これはいい要素だな。 そういえばパックを初めて引く時に、そんなことを言っていた気がする。
「しかし清司様はまだこの世界に来て2日目なため、同い年の人とはカード枚数がまだ乏しいです。 そこで明日から2ヶ月間は、私達からの奉仕として、更に5パックをプレゼント致します。 この世界での1ヶ月は30日ですので、これで1年分のパックを引いた計算になります。 明日は10パックですが、明後日以降はそのように考えてください。」
「それは確かに嬉しいんですけど、ダブってしまったカードってどうなるんです? 所持最大枚数は4枚の筈でしたよね?」
そう、カードゲームをやるにおいて、一番負担になるのが、余剰カードの行き先だ。 現実世界ならば、どこかの段ボールなどにまとめて置くか、そのまま捨ててしまうのだが、この世界でのカード管理はAI内で行われる。 外に出すことが出来ない以上、どう処理するのだろうか?
「余剰となったカードはレアリティにより仮想通貨へと変わります。 そしてその仮想通貨はAI領域のパックと交換することでしか使えません。 現実のお金ではないので、そこはご了承下さい。」
なるほど。 一応その辺りは考えられているのね。 所持最大枚数が4枚なのも、基本的には交渉の為だ。 そんなに複数枚あげることも無いという事だろう。
「はぁ、初日から大変な事に巻き込まれちゃったなぁ。」
「それも人生の1つじゃ。 自分に悔いが無いようにの。 それじゃあ、またの。」
そう言って神様達は去っていき、AI領域の中に戻ってくる。 そしてスキーゴーグルを外し、俺も別のベッドで寝る事にした。 色々やるにしても明日にならなければ出来ない。 この睡眠は明日のための活力にするための睡眠。 しっかり眠っておかないと。




